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長野県弁護士会
〒380-0872
長野県長野市妻科432番地
TEL.026-232-2104
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088647
 

決議・意見書

 

地方消費者行政の一層の強化を求める意見書

地方消費者行政の一層の強化を求める意見書
 
地方消費者行政の一層の強化を求める意見書 ( 2017-09-05 ・ 160KB )
地方消費者行政の一層の強化を求める意見書
 
第1 意見の趣旨
1 国は、地方公共団体の消費者行政の体制・機能強化を推進するための特定財源である「地方消費者行政推進交付金」の実施要領について、2017年度(平成29年度)までの新規事業に適用対象を限定している点を、2018年度(平成30年度)以降の新規事業に適用対象を含めるよう改正するとともに、消費者行政の相談体制、啓発教育体制、執行体制等の基盤拡充に関する事業を適用対象に含めるよう改正し、同交付金を少なくとも今後10年程度は継続すべきである。

2 国は、地方公共団体が実施する消費者行政機能のうち、消費生活相談情報の登録事務、重大事故情報の通知事務、違反業者への行政処分事務、適格消費者団体の活動支援事務など、国と地方公共団体相互の利害に関係する事務に関する予算の相当部分について、地方財政法第10条を改正して国が恒久的に財政負担する事務として位置付けるべきである。

3 国は、地方消費者行政における法執行、啓発・地域連携等の企画立案、他部署・他機関との連絡調整、商品テスト等の事務を担当する職員の配置人数の増加及び専門的資質の向上に向け、実効性ある施策を講ずべきである。
 
第2 意見の理由
1 地方消費者行政推進のための交付金の継続について
平成21年の消費者庁の創設及び「地方消費者行政活性化交付金」等の交付措置により、消費生活センターの設置数は501箇所(平成21年度)から799箇所に増加し(平成29年版消費者白書252頁)、平成27年末までにすべての地方自治体が何らかの消費生活相談窓口を設置するに至るなど、地方自治体の消費生活相談体制が整備されてきた。この間、地方消費者行政活性化交付金は、地方消費者行政推進交付金に変更して継続され、消費生活相談体制の整備・拡充に寄与してきている。
現在の地方消費者行政推進交付金の実施要領は、2017年度までの新規事業を適用対象事業として限定的に定め、かつ、対象となる推進事業ごとに活動期限を設定しており、地方において事業を継続するためには、期限が切れる事業から順次、自主財源化していく必要がある。ところが、ほとんどの地方公共団体の政策判断は消費者行政重視に向けて転換しておらず、また、地方財政の実情の厳しさから、財源を捻出することは容易ではない。地方自治体にとって、地方消費者行政推進交付金に代わって、地方消費者行政の体制整備・拡充を支えるだけの自主財源を確保することは困難である。このような状況下では、年々、新たな消費者問題、とりわけ高齢者の消費者被害が深刻さを増す現状に対応することはできなくなる。
以上を踏まえると、地方消費行政推進交付金の実施要領を改正し、2018年以降の新規事業も適用対象に加えるべきである。
さらに、消費生活相談体制の充実・強化とともに被害防止のための出前啓発講座等の啓発活動や悪質業者排除の法執行が一層重要となっていることに鑑み、消費生活相談員の増員及び専門性向上等の人的基盤強化についても、適用対象に位置付けるべきである。そして、これまで、8年間の地方消費者行政に対する交付金の給付によっても最低限の体制整備が未達成であることに鑑み、少なくとも同交付金を今後10年間は継続する必要がある。

2 国の事務の性質を有する消費者行政費用に対する恒久的財政負担について
消費生活情報のPIO-NET登録、重大事故情報の通知、法令違反業者への行政処分、適格消費者団体の差止関係業務などは、国と地方公共団体相互に利害関係がある事務であり、消費者被害防止のために全国的な水準を向上させる必要がある。そこで、これら国と地方公共団体相互に利害関係がある事務については、地方財政法弟10条を改正し、国が恒久的に財政負担する事務とすべきである。
なお、適格消費者団体の活動への国の財政支援は、地域の民間団体の実情に応じて支援する必要があるため、基本的に、都道府県を通じた支援として実施することが相当である。

3 地方消費者行政職員の増員と資質向上について
今後の地方消費者行政の役割は、地方公共団体内の他部署との連携による高齢者見守りネットワークの構築や官民連携によるきめ細やかな消費者啓発・見守りの実施が重要課題とされている。また、違法な事業活動に対する法執行件数が減少している現状や、商品事故に関する原因究明や商品テスト担当職員が減少している現状に鑑みれば、消費者行政担当職員の配置と専門性向上の施策も重要な課題である。
国は、地方消費者行政の担当職員の職務が、法執行部門、啓発・教育分野、地域連携の企画推進分野、他部署・他機関との連携調整など、多様な課題を担う必要があることを踏まえ、職員の増員及び資質向上に向け、具体的な政策を検討すべきである。
 
2017年(平成29)年9月2日

長野県弁護士会
会長   三  浦  守  孝
 

平成29年司法試験における厳正な合格判定を求める会長声明

平成29年司法試験における厳正な合格判定を求める会長声明
 
会長声明 ( 2017-07-13 ・ 108KB )
平成29年司法試験における厳正な合格判定を求める会長声明
 
1 司法試験をめぐる志願者減少が著しい。
平成29年度の法科大学院志願者数(延べ人数)は8,159名(前年度比119名減),入学者数は1,704名(同153名減)に,同年の司法試験出願者数は6,716名(同1,014名減),受験者数は5,967名(同932名減)にまで落ち込んだ。
ピーク時には,法科大学院志願者数が72,800名(平成16年度。延べ人数),司法試験出願者数が11,892名(平成23年)であったことを考えると,上記のとおりの法曹志願者の減少は激減というべき状況にあり看過できない。
このような法曹志願者激減の原因については,法科大学院修了を受験資格要件としたことで多額の学費や時間的コストを要することになった反面,司法試験合格者の多くが進路として選択する弁護士について,現実の法的需要を無視した弁護士数の過剰増員による就職難や,弁護士の職業的魅力の低下等が生じていることが背景に存在するものと考えられる。多くの時間的,経済的コストを課しておきながら将来に不安がつきまとうといった現在の制度設計では,有為な人材が法曹という職業を敬遠することは必然的な現象である。
 
2 司法は国民の権利義務や社会正義に深く関わるものであり,その司法を担う法曹の質の維持・向上は国民にとって重大な課題・要請である。現状のように法曹志願者の母数が激減すれば,その中の有為な人材の絶対数が減少することは道理であり,法曹の質の確保にも懸念が生じる。
法曹養成制度改革推進会議は,平成27年6月,司法試験の合格者数を年間1500人程度以上とする検討結果を取りまとめた。しかし,司法試験出願者が激減している現状の下で,単に上記方針通りの合格者数を確保するために合格ラインが下げられてしまうなら,司法試験に本来要請される選抜機能は大きく損なわれ,合格者の質を制度的に担保できない事態も想定される。このような事態は,上記取りまとめにおいて示されている「輩出される法曹の質の確保を考慮す」べき,との方針にも反することとなる。
したがって,今後の司法試験の合格判定は,目標とされた数ありきでなされてはならず,従前にも増して,司法を担う法曹の質の維持・向上という本質的要請をふまえ,厳正に行われなければならない。

3 以上から,当会は平成29年司法試験の合格判定にあたって,1500人程度以上とされる合格者数の確保が優先されるべきではなく,司法を担う法曹の質の維持・向上の要請をふまえた厳正な合格判定が行われることを求める。
 
 
                                平成29年7月8日
 
長野県弁護士会     
会長 三 浦 守 孝
 

適正な弁護士数に関する決議

適正な弁護士数に関する決議
 
適正な弁護士数に関する決議 ( 2017-06-29 ・ 271KB )
適正な弁護士数に関する決議

第1 決議の趣旨
当会は、政府に対し、平成29年度以降、司法試験合格者数を年間1000人以下とするよう求める。

第2 決議の理由
1 弁護士数が過剰となったこと
(1)弁護士数の増加状況
政府は、平成14年3月、今後法的需要が増大し続けるとの予測のもと、「平成22年ころには司法試験の合格者数を年間3000人程度とすることを目指す。」とする司法制度改革推進計画を閣議決定した。
この結果、司法試験合格者数は年々増加し、平成19年から平成25年には2000人を超えた。平成26年、平成27年には1800人台となったものの、平成14年当時1万8838人であった弁護士数は、平成29年5月1日現在で3万9011人と倍増した。
この間、裁判官の数は平成14年時点で2288人、平成28年時点で2755人と約20%の増加、検察官の数は平成14年時点で1484人、平成28年時点で1930人と約30%の増加であるのに対し、弁護士の数は約106%増加した。
(2)法的需要予測の見込み違い
ところが、法的需要が増大するという政府の予測は大きく外れ、平成18年度以降、裁判所の全新受事件数は、過払訴訟の影響を考慮しても明らかに減少傾向にある(平成18年-約500万件、平成22年-約430万件、平成26年-約350万件)。法律相談件数も、平成18年から平成25年まで年間約60万件と横ばいで推移し、増加傾向は全く見られない(弁護士会法律相談センター、法テラス、自治体の弁護士相談の総計)。
たしかに、弁護士の増加に伴いゼロワン地域が解消されたこと、刑事国選事件や民事扶助事件への対応の充実が見られることについては、一定の評価がなされるべきである。
しかし、現在では、仮に弁護士過疎地が一部残っているとしても、過疎地開業支援等の施策により対処すべきであって、弁護士数の単純増により対処すべき性質のものではないし、新たな分野で弁護士が必要とされていく可能性が皆無でないとしても、不確かな憶測を含むものであって、現在のような急激な増員を要するほどの実例が存在しているとはいえないから、これらを理由に更に弁護士を増加させる必要性は見いだせない。
(3)弁護士数の過剰
かかる状況に鑑み、富山県議会、佐賀県議会をはじめ各地の地方議会が、弁護士数はすでに過剰であるとの認識を明示したうえ、法曹人口政策の早期見直しを求める内容の決議等をなしており、長野県議会においても、昨年、弁護士人口は飽和状態にあるとして同様の決議を行っているところである。
弁護士が倍増しても訴訟や法律相談の件数が増えず、新たな分野で必要とされる実例も特段確認されていないということは、もともと社会は、これほどに多くの弁護士を必要としていなかったことに他ならない。
平成14年の閣議決定以降の推移と現状を踏まえる限り、各地の地方議会が指摘するとおり、現在、弁護士は、利用者たる市民が必要とする数を明らかに超えて増え続けており、それによる弊害を直視した対応が検討されなければならないのである。
 
2 弁護士数の過剰により弊害が生じていること
(1)弁護士の使命の達成が危うくなること
  弁護士は、基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする(弁護士法1条1項)。しかしながら、弁護士数の過剰は、弁護士間の過当競争を招き、事務所経営や生活防衛のために目先の利潤を追求する傾向を強め、事件漁りや無用な訴訟への誘導、過度に高額な費用請求などが生じて市民が害される事態が危惧される。
また、弁護士には、その使命の達成のために職務の自由と独立が要請され、依頼者の「正当な利益」を実現すべきであるとされ、ときに依頼者に対しても公共的・公益的見地からの説得を試みる役割が期待される(弁護士職務基本規程第2条、第21条)。しかしながら、顧客獲得競争が激化して目先の利潤を追求する傾向が強まれば、昨今、恫喝や報復を目的として法外な請求を行なう「スラップ訴訟」の実例が報告されるように、依頼者の要求に無批判に迎合し、人権擁護や社会正義を無視した業務遂行を生みかねない。
そして、弁護士の使命を達成しようとすれば、国家権力から独立し、ときには対峙してでも市民の側に立つことを要することから、我が国では、弁護士の資格審査や懲戒を行政官庁等の監督に服させず弁護士の自律に委ねる弁護士自治が採用されている。しかしながら、弁護士業務が過度に商業化し、公共的・公益的性格が失われれば、「国家権力からの独立」は実際上の意義を失い、弁護士自治の存立基盤を危うくすること必至である。
かように、弁護士数過剰の状況は、基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命の達成を危うくし、我が国の弁護士制度を根底から揺るがしているのである。
(2)若手弁護士の研鑽の機会が失われていること
弁護士数の過剰を背景として、弁護士登録後に勤務弁護士として研鑽を積むことを望みながら即独やノキ弁に甘んじ、十分なOJT(on the job training)の機会を得られない新人弁護士は後を絶たない。(新人弁護士の就職難の状況は、司法修習修了後の一括登録時点の未登録者割合に顕れると言われている。平成19年度には3.3%であったものが、平成22年度に11%、平成23年度に20.1%、平成24年度に26.3%、平成25年度に28%、平成26年度に27.9%となっている(いずれも現行司法試験合格者の数値)。)
法律専門家としての技能や倫理を会得する機会を十分に持たない弁護士が実務に当たれば、市民に深刻な影響を与えることが危惧されると言わざるを得ない。
(3)法曹志願者が激減していること
弁護士数の過剰を背景として、近年、法曹志願者は目に見えて激減している。法科大学院志願者は、以下のとおり、減少傾向が顕著である。大学受験生の法学部離れも顕著であり、法曹界が有為な人材を確保することは困難となっている。
さらに、現在では大半の法科大学院が深刻な定員割れを起こし、現行の法曹養成制度が掲げる育成機能の充実は期待しがたいうえに、法科大学院入学者数が司法試験合格者数に接近しつつあり、このような状況下で、後述の法曹養成制度改革推進会議の取りまとめが示唆するように1500人以上の合格者数を墨守した場合、試験制度としての正常な選抜機能が働かない事態が危惧される。
 
年度 法科大学院全志願者数(延べ人数) 入学者数
平成16年度 72,800 5,767
平成19年度 45,207 5,713
平成22年度 24,014 4,122
平成25年度 13,924 2,698
平成27年度 10,370 2,201
平成28年度 8,278 1,857
平成29年度 8,159 1,704
 
今後もかかる事態が続けば、裁判官、検察官、弁護士の平均的な質が、長期的かつ慢性的に低下していくことが憂慮されざるを得ないのである。法曹三者が、憲法をはじめとする法の運用、解釈を通じて、市民の人権を直接的に取り扱う職責を担っていることに鑑みれば、このような法曹三者の平均的な質の低下は、回避しなければならない。
(4)国家資格制度としての安定性・確実性を損なうこと
そもそも我が国が弁護士について国家資格制度を採用するのは、市民の人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の重大な使命に鑑みて、高度な専門性や技術、見識を担保する必要があることによるものであり、利用者たる市民においては、必ずしも弁護士の技能や適性を十分に判断しえないことから、国家の責務としてその資格付与の条件を適切に整備し、誰もが安心して弁護士に相談・依頼できる状況を維持するためである。
特段専門的な情報や判断力を持たない一般市民においても、安心して弁護士に相談、依頼できる資格制度を構築し維持することが重要であり、一般市民の権利利益の保護に資するものである。
ところが、弁護士急増政策は上記の各弊害を生み出し、市民が本来的に国家資格制度に求める安定性と確実性を損ねる事態を招いているのである。
公認会計士についても、過剰な増員による弊害が生じ、国家資格の安定性・確実性が維持できない事態を招いたため、公認会計士試験の合格者数が政策的に減員されたとおり、国家資格の安定性等を合格者数の調整によって回復することは法曹界に特有の事態でもない。
3 当会が改めて総会決議を行なう理由
(1)平成22年度総会決議後の経緯
当会は、平成22年11月20日の臨時総会において、「政府に対し、司法試験合格者数を年間3000人程度とする政策について直ちに見直し、司法試験合格者数を段階的に削減し、弁護士人口が4万人に達した以降、これを維持するため、司法試験合格者数年間1000人程度とする法律制度の運用を求める」との総会決議をなした。
この決議は、当時すでに現われていた若手弁護士のOJT不足その他の弁護士急増の弊害を挙げたうえ、弁護士総数を約4万人で均衡させるべく、増員ペースの緩和を求めるものであった。
しかるに、政府は、平成25年7月、司法試験合格者数3000人を目指す方針は撤回したものの、平成27年6月30日の法曹養成制度改革推進会議の取りまとめにおいて、「法曹人口は、全体として今後も増加させていくことが相当である」とし、司法試験合格者数について、今後も「1500人程度は輩出されるよう、必要な取組を進め」るべきであるとした。
政府はこのように、当会の平成22年総会決議後も弁護士の急増ペースを抜本的に見直すことをせず、その結果、弁護士数は3万9011人に増加している(本年5月1日現在)。
(2)弁護士数の将来予測
平成28年度の司法試験合格者は1583人であったが、今後も同様に約1500人の合格者数を維持すれば、弁護士数は1、2年のうちに4万人を超え、平成55年には推計6万人を超える(弁護士白書2016年版)。そうなれば、我が国の人口減少傾向とあいまって、弁護士数の過剰による上記各弊害が一層拡大することは目に見えており、基本的人権の擁護や社会正義の実現という弁護士の使命は見失われ、弁護士業務への信頼は失墜し、弁護士自治を崩壊させていくおそれすらある。
司法試験合格者が本年度以降毎年1000人で推移するとしても、弁護士数は今後も増加し、平成53年におよそ4万9500人になると推計され、我が国の人口減少傾向を考慮すると、弁護士一人当たりの国民数は、現在より約1000人少ない約2100人となると推計されるものであるから(弁護士白書2016等に基づくシミュレーション)、本決議の趣旨が実現された場合、弁護士急増による弊害が緩和されこそすれ、市民にとって弁護士が不足するとの懸念は皆無である。

4 むすび
以上のとおり、我々弁護士が、基本的人権の擁護と社会正義の実現という本来の使命を果たし、弁護士資格制度の安定性と確実性を維持し、そして弁護士自治を維持して市民の権利利益を護り続けるためには、弁護士数が適正に維持されることが絶対不可欠である。我々弁護士が、国家権力から独立し、ときには対峙してでも、市民の側に立つべきその足場の崩壊を招くおそれある弁護士の過剰増員は、このような観点から改められなければならない。
したがって、平成29年度以降、司法試験の年間合格者を1000人以下とすべきである。

平成29年6月24日                                    
長野県弁護士会総会
 
 

いわゆる共謀罪法案の成立に強く抗議し,その廃止を求める会長声明

いわゆる共謀罪法案の成立に強く抗議し,その廃止を求める会長声明
 
( 2017-06-27 ・ 201KB )
いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に強く抗議し,その廃止を求める会長声明

いわゆる共謀罪法案(共謀罪の創設を含む組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)が,2017年6月15日,参議院本会議で可決され,成立した。当会は,これに強く抗議するとともに,成立した共謀罪を速やかに廃止することを求める。
我が国は,個人の尊厳を究極の価値として,基本的人権の尊重,国民主権(民主主義),恒久平和主義を基本的な原理とする日本国憲法を制定した。
民主主義の健全な発展にとって,国家権力を監視し,その在り方を自由に批判することは必要不可欠な要素である。市民が自由に国家権力を批判するには,立憲主義や三権分立などの制度と並び,市民に対して思想・良心の自由や表現の自由,集会・結社の自由などの精神的自由権及びプライバシーの権利が保障されることが最低限の条件となる。
今回成立した共謀罪は,日本国憲法が保障するこれらの重要な自由権を市民から奪うおそれがあり,市民活動に著しい萎縮効果を与え,民主主義の重大な脅威となる。当会は,そのことを危惧し,既に本年5月24日に会長談話を発表するなどし,強く訴えてきた。また,全国の弁護士会,数多くの学者や市民団体等が訴えてきたように,共謀罪は既遂の処罰を原則とする近代刑法の前提を大きく逸脱し,一般市民の内心の意思を処罰する監視社会を招来し,市民の日常生活を萎縮させる危険がある。すなわち,共謀罪が成立したことにより,捜査機関は共謀罪の捜査を名目に,実際に犯罪に着手して法益が侵害される遥か以前から捜査を行う根拠を獲得し,昨年12月1日から施行されている通信傍受の対象犯罪の拡大と相まって,電話,メール,SNSなど市民の日常生活をターゲットにした早い段階からの捜査を行うことが可能となった。さらに,司法取引制度が施行されれば,自己の処罰減免を得る目的で,他人との共謀を認める虚偽自白を誘発する危険性も高まるおそれがある。このような捜査権限の拡大により,市民の正当な政治活動や労働組合活動,その他の活動が萎縮し,ひいては捜査機関による監視対象となってプライバシーの権利が侵害されるという懸念から市民の日常生活までもが萎縮する,深刻な監視社会が到来する。
また,繰り返し指摘されてきたように,共謀罪の「組織的犯罪集団」「計画」「準備行為」などの規定は,文言上極めて曖昧であるがゆえ,権力により拡大解釈される危険性があり,市民の自由を保障するために処罰の範囲をあらかじめ明示する罪刑法定主義にも反するおそれの高いものである。
そして,政府が共謀罪を導入する目的として,国際組織犯罪防止条約の締結とテロ対策を掲げてきた。しかし,前者については,同条約の立法ガイドが,各締結国の国内法の基本原則に基づいて必要な措置を取ることを許容しており,立法裁量が広いことは明らかであり,同条約を締結するにあたって我が国が共謀罪を制定する必要はない。後者についても,国際組織犯罪防止条約の目的にテロ対策が含まれないことは,同条約に関する国連の立法ガイド26パラグラフが明確に規定し,同ガイドを作成した国際刑法の専門家であるニコス・パッサス教授もこのことを明言している。また,我が国では公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律によってテロ行為の計画段階は既に犯罪化されており,銃器や刃物の所持を規制する銃砲刀剣類等処罰法等の実体法が存在するだけでなく,13ものテロ防止に関連する条約を締結しており,テロ対策についてはすでに立法的な手当がなされていることから,テロ対策のために新たに共謀罪を制定する必要はない。
このように数多くの問題を抱えた共謀罪は,その問題点に関する疑問や市民が抱く不安を解消するために慎重に審議されなければならなかった。特に衆議院法務委員会で審議時間の形式的な経過後に強行採決されたことを踏まえ,良識の府たる参議院ではより一層慎重に審議しなければならなかった。しかし,参議院では,法務委員会における審議を合計18時間弱で打ち切り,6月15日未明の本会議において「中間報告」を行った上で,法務委員会の採決を行わず,本会議で強行採決に踏み切った。参議院でも市民から出された数多くの疑問が何一つ明らかにならないまま採決されたということに加え,かかる手続は,国会法56条の3において定められた中間報告を求める要件である「特に必要があるとき」(第1項),及び中間報告を受けての本会議での審議の要件である「特に緊急を要すると認めたとき」(第2項)のいずれの要件も満たさず,明らかに手続上の瑕疵がある。これは,二院制の存在意義を参議院が自ら踏みにじる行為である。
さらに,立法の必要性そのものに重大な疑いがあり,かつ立法過程において既に憲法上の問題点が指摘されている共謀罪について,市民に対する充分な説明がなされないまま,また付託した法務委員会の採決を経ることなく参議院本会議で強行採決するという強硬な手段により可決されたことは暴挙と言わざるを得ず,我が国の民主主義を制度面から支える議会制民主主義の否定である。
以上のとおり,当会は,共謀罪法案が参議院本会議で可決され成立したことに強く抗議するとともに,今後も国会において共謀罪を速やかに廃止させるよう全力を挙げて取り組んでいく。
 
2017年(平成29)年6月26日

長野県弁護士会         
会長   三    浦  守  孝
 
 

いわゆる共謀罪法案が衆議院本会議で可決されたことに抗議する会長談話

いわゆる共謀罪法案が衆議院本会議で可決されたことに抗議する会長談話
 
( 2017-05-25 ・ 134KB )
いわゆる共謀罪法案が衆議院本会議で可決されたことに抗議する会長談話
 
いわゆる共謀罪法案が,2017年5月23日,衆議院本会議で可決された。当会は,これに強く抗議する。
民主主義の健全な発展にとって,市民が国家権力を監視し自由に批判することは必要不可欠である。このように市民が自由に国家権力を批判することができるためには,立憲主義や三権分立などの制度と並び,国家からの自由たる思想・良心の自由や表現の自由などの精神的自由権が市民に対して保障されることが最低限の条件である。共謀罪は,日本国憲法が保障するこれらの重要な自由権を市民から奪うおそれがあり,市民に著しい萎縮効果を与えることになる。共謀罪は,民主主義に対する重大な脅威である。
当会も繰り返し指摘してきたとおり,共謀罪法案は,既遂の処罰を原則とする近代刑法の前提を大きく逸脱するうえ,「組織的犯罪集団」「計画」「準備行為」などの規定の曖昧さは,市民の自由を保障するために処罰の範囲をあらかじめ明示する罪刑法定主義に反する。
政府は,共謀罪を導入する目的として,2020年の東京オリンピックにおけるテロ対策と国連越境組織犯罪防止条約を批准するための国内法の整備の必要性を掲げている。
しかし,そもそも国連越境組織犯罪防止条約の目的は,マフィアや暴力団等が金銭的・物質的利益を得るために行うマネーロンダリング等の越境的組織犯罪の防止にある。同条約に関する国連の立法ガイド26パラグラフは,経済的な利益の獲得を目的としないテロリスト集団が,同条約の規制の対象となる組織的犯罪集団に該当しないことを明確に規定している。同条約がテロ対策を目的としていないことは,同ガイドを作成した国際刑法の専門家であるニコス・パッカス教授もこのことを明言している。
今国会における審議過程も,憲政史上大きな禍根を残した。共謀罪法案は,前述のとおり,市民の精神的自由権を奪うおそれが強い以上,これらの疑問や市民が抱く不安を解消するために慎重に審議されなければならなかった。しかし,衆議院法務委員会における審議では,共謀罪法案を所管する法務大臣の答弁が二転三転し,これら数多くの疑問は何一つ明らかにされず,なお一層深まるばかりであった。それにもかかわらず,政府・与党は,自ら設定した審議時間である30時間を形式的に消化したとして採決に踏み切った。これでは,共謀罪法案の成否を決するに足る程度に審議が成熟したとは到底評価できない。
以上のとおり,当会は,共謀罪法案が衆議院本会議で可決されたことに強く抗議するとともに,共謀罪法案を廃案とすることを求める。
 
2017年(平成29)年5月24日
                         長野県弁護士会
会長   三    浦  守  孝
 

司法修習生に対して修習給付金を支給する制度創設にあたっての会長声明

司法修習生に対して修習給付金を支給する制度創設にあたっての会長声明
 
修習給付金に関する会長声明 ( 2017-05-24 ・ 106KB )
司法修習生に対して修習給付金を支給する制度創設にあたっての会長声明

2017年(平成29年)4月19日,司法修習生に対して修習給付金を支給する改正裁判所法(以下,本法という。)が成立した。これにより,2017年(平成29年)の司法修習生から基本給付金として月額13万5000円,さらに必要に応じて住居給付金(上限3万5000円)及び移転給付金が支給される見込みとなっている。

本来,司法制度は,社会に法の支配を行き渡らせ市民の権利を実現する社会的インフラであり,これを担う法曹となる司法修習生は,公費をもって養成されるべきである。このような理念のもとに,我が国では,終戦直後から司法修習生に対し,給与が支払われてきた(給費制)。
しかし,この給費制は,2011年(平成23年)に廃止され,司法修習のために必要な資金を貸与する制度に変更された。これ以後の司法修習生は,大学・法科大学院での奨学金債務に加えて,貸与金として数百万円の負債を負担せざるを得ない状況になるなど,重い経済的負担を強いられていた。近年,法曹を目指す者は激減しているが,こうした重い経済的負担がその一因となっていることが指摘されている。

当会は,司法修習生の重い経済的負担を解消し,本来どおり法曹養成が公費により行われるよう,そして有為の人材が経済的な理由によって法曹となることを断念することがないよう,司法修習生への給費制復活のための活動を行ってきた。本法は,この活動の確かな前進として評価できるもので,当会は,本法の成立を歓迎する。なにより,この間,当会の活動に賛同しご尽力いただいた多くの国会議員や県議会議員,市民,諸団体の方々に対し,あらためて深く感謝申し上げる。

もっとも,本法によりすべての問題が解消されたわけではない。
本法による給付金額は,司法修習のための資金として必ずしも十分ではなく,司法修習の意義・実態を踏まえて,その適正額についてさらなる検討が必要である。
さらに,より重要な問題は,本法は,2011年(平成23年)から2016年(平成28年)の間に司法修習生となった人らに対し何らの措置もなされていないということである。これらの司法修習生と,2010年(平成22年)以前に司法修習生となった人及び本法による給付を受ける司法修習生との間で,司法修習の意義・実態は何も異ならないにもかかわらず,受ける経済的支援だけが大きく異なり著しい不公平が生じることになる。
そして,2011年(平成23年)に司法修習生となり貸与金の支給を受けた人らは、早くも2018年(平成30年)7月から貸与金の返還を迫られ、経済的負担が顕在化することになるため,同世代への給費制に代わる是正措置の整備は早急に取り組むべき切迫した問題である。

よって,当会は,本法の成立をこれまでの活動の確かな前進として評価するとともに,今後も上記問題解消のため,引き続き活動に取り組む所存である。
以上
 

2017年(平成29年)5月22日
長野県弁護士会  会長  三 浦 守 孝
 

70回目の憲法記念日に寄せる会長談話

70回目の憲法記念日に寄せる会長談話
 
70回目の憲法記念日に寄せる会長談話 ( 2017-05-08 ・ 148KB )
70回目の憲法記念日に寄せる会長談話   

1947年(昭和22年)5月3日に施行された日本国憲法は、今日、70回目の憲法記念日を迎えた。

日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と国民主権を高らかに謳っている(前文第1項)。
そして、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と平和的生存権を謳い、恒久平和主義を宣言し(前文第2項)、戦争の放棄と戦力の不保持、交戦権の否認を規定している(第9条)。
さらに、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」(第11条)と基本的人権の尊重を保障する。

この70年間、私たちの社会や、わが国をとりまく国際情勢は大きく変わったが、国民は、一貫して日本国憲法を支持してきた。日本国憲法は、厳しい政治の現実にさらされながらも、国の最高法規として、強い規範力を発揮してきた。日本国憲法は、徹底した恒久平和主義に基づきわが国が一度も他国と戦火を交えることなく平和と繁栄を築き、国際社会で高い信頼を得るために、大きな役割を果たしてきた。

しかし、近年、日本国憲法をとりまく状況は大きく変わろうとしている。
2013年(平成25年)12月、取材・報道の自由に委縮的効果をもたらし、国民の知る権利を侵害するおそれのある「特定秘密の保護に関する法律」が成立した。
2015年(平成27年)9月には、日本国憲法の立憲主義や徹底した恒久平和主義に違反する集団的自衛権の行使を容認し、外国軍隊に対する後方支援を拡大し、自衛隊の海外における武器使用権限を拡大する、いわゆる安全保障関連法が制定された。
そして今、思想・良心の自由を侵害し、市民生活に深刻な影響を及ぼすおそれのある、「テロ等準備罪」いわゆる「共謀罪」を新設する法案が国会に提出された。
さらに今後、憲法改正が政治課題にのぼる可能性があり、「災害対策等を理由とする緊急事態条項」の創設や9条の改正も取りざたされている。
日本国憲法は、「すべて国民は、個人として尊重される」こと(第13条)を究極の価値としている。そのために、国家権力の行使は、憲法による統制の下におかれる(立憲主義)。私たちは、憲法の意義をあらためて認識するとともに、これらの動きがどのような国づくりを指向しているのか、その結果何がもたらされるのか、今一度考えなければならない。

日本国憲法の掲げる国民主権、恒久平和主義、基本的人権の尊重という基本理念は、時代を超えた普遍的な価値である。日本国憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」と規定している。
70回目の憲法記念日にあたり、日本国憲法に込められた崇高な理念とそれを守ってきた先人の努力に思いを致すとともに、これから私たちが未来にどのような社会を引き継ぐのか、深く考える機会としたい。

そして、私たち弁護士は、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とする者として(弁護士法第1条第1項)、基本的人権が尊重され、法の支配が貫徹される社会を実現するため、法律制度の改善に一層の努力を続けていきたいと思う(弁護士法第1条第2項)。
 

2017(平成29)年5月3日

長野県弁護士会       
 会 長  三 浦 守 孝
 

信州大学大学院法曹法務研究科の閉校にあたっての会長談話

信州大学大学院法曹法務研究科の閉校にあたっての会長談話
 
会長談話 ( 2017-03-27 ・ 117KB )
        信州大学大学院法曹法務研究科の閉校にあたっての会長談話

本日、信州大学大学院法曹法務研究科(以下、「信大ロースクール」という。)の閉校式が行われる。信大ロースクールは、平成17年4月に開校したが、当会は、「自らの後継者を自らの手によって育成し、地域の司法水準を向上させる」という地域司法充実の理念のもと、関係機関に対する働きかけや市民に対する大規模な署名活動を行うなど、その構想段階から主体的に設立運動を担った。また、当会は、信州大学との間で、平成16年6月30日に「信州大学大学院法曹法務研究科に関する協定」、平成19年3月7日に「ロークリニックに関する協定」を締結するとともに、当会内に法科大学院バックアップ委員会を設置し、多数の実務家教員の派遣や、模擬裁判への講師派遣、ロークリニック・事務所訪問の受け入れ、講演活動、課外指導等を継続的かつ積極的に行ってきた。
派遣した実務家教員や、法科大学院バックアップ委員会に所属する若手会員らによる献身的な指導の甲斐もあって、信大ロースクールの修了生から、これまでに合計36名が司法試験に合格し、現在、その内の22名が当会に弁護士登録し(当会の会員の1割程度が信大ロースクールの出身者となる。)、地域に貢献する弁護士として活動している。
自らの後継者を自らの手によって育成するという理念は、相当程度は達成することができたといえる。もっとも、地域の司法水準を向上させる活動に終わりはなく、法曹養成の地域の拠点である信大ロースクールがこの3月末日をもって閉校となることは、誠に残念というほかない。
一方で、平成28年4月、信州大学には新たに経法学部が誕生し、同学部内に総合法律学科(学士課程)が新設された。長野県内において、法学分野の学士課程が設置されたのは、初めてのことである。当会の理念は、今後も息づいていく。
当会と信州大学とは、平成28年2月24日付で「信州大学と長野県弁護士会との包括連携に関する協定」を締結している。当会は、今後も、法律系人材の育成や法的実務に関する研究へ寄与する等、地域司法の充実に資する活動に邁進する所存である。

                                                          平成29年3月27日 
                         長野県弁護士会会長   
柳  澤  修  嗣
 

いわゆる共謀罪法案を国会に提出することに反対する会長声明

いわゆる共謀罪法案を国会に提出することに反対する会長声明
 
会長声明 ( 2017-03-14 ・ 212KB )
いわゆる共謀罪法案を国会に提出することに反対する会長声明

1 2017年2月28日,政府が「テロ等準備罪」と名称を変更して第193国会(通常国会)に提出することを明言していた共謀罪法案(以下「新法案」という。)の内容が公表された。
過去3回廃案となった共謀罪法案(以下「旧法案」という。)と新法案の主な違いは,適用の対象を「組織的犯罪集団」としたこと,処罰の対象を「共謀」から「二人以上で計画した者」に変更し,処罰条件としてその計画をした者により「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の当該犯罪の実行の準備行為が行われたとき」(以下「準備行為」という。)に処罰できるとしたこと,対象となる犯罪を676から277に減らしたことである。政府は,新法案の制定目的として,国連越境組織犯罪防止条約の締結と,旧法案を提案した際には挙げていなかったテロ対策を挙げている。
さらに,新法案の内容が公表された後,新法案に「テロ」の文言がないことを強く批判されたことを受け,同年3月7日,政府は「組織的犯罪集団」を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」とする修正を行った。
当会は,それでもなお,新法案を本国会に提出することに強く反対する。
 
2 新法案は,旧法案と同じく,既遂の処罰が原則であり未遂と予備の処罰を例外とする近代刑法の前提を大きく逸脱し,一般市民の内心の意思を処罰する監視社会を招来し,市民の日常生活を萎縮させる危険がある。

(1)政府は,新法案の対象団体を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と限定したことにより,テロ対策という目的が明らかとなり一般市民は対象にならないと説明している。
しかし「組織的犯罪集団」という概念自体が極めて曖昧な概念であるうえ,その認定は捜査機関が行う以上,恣意的な運用の危険性を払拭できない。
また,「一定の犯罪目的を有する団体が組織的犯罪集団である」という構造上,犯罪目的の認定を先行しなければ団体性は認定できず,捜査機関によって犯罪目的を有する団体であると事後的に認定された人の集まりは全て「組織的犯罪集団」とされる余地がある。現に政府は,適法な目的で設立されていた団体が犯罪目的を有するに至った際は「組織的犯罪集団」となり得る,と明言してきた。「テロリズム集団」と明示した点も,「その他」という文言によって例示に過ぎないことになり,「その他」に該当するとして処罰範囲が拡大する余地は消えない。
このように「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」という文言は何ら処罰範囲の限定に役立たない。
 
(2)また,「計画」とは「犯罪の合意」に他ならないところ,合意は内心と区別がし難いので思想や良心の自由を侵害する危険性が高い。「計画」は共謀共同正犯理論における共謀と同じとされるので,概括的,黙示的,順次的な「計画」が認定されうる。合意の手段も限定しないとされることから,例えば市民に広く利用されているLINEなどのメッセージアプリによる「計画」の認定もあり得る。
 
(3)さらに、準備行為は予備罪等の準備行為とは異なるから,事実上無限定である。また処罰条件に過ぎない以上,準備行為が行われない時点で既に捜査の対象となる。これは,市民社会に対して著しい萎縮効果をもたらす。
 
(4)新法案において対象となる犯罪数は,昨年8月に報じられた「テロ等組織犯罪準備罪」の676から277にまで限定された。
しかし,政府の説明は破綻している。国連越境組織犯罪防止条約を締結するためには対象犯罪を限定することは不可能であるとこれまで政府が主張してきたことと矛盾するうえ,テロ対策と関係がある犯罪は277のうち110と4割にも満たず,児童福祉法における児童淫行罪,保険業法における株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為罪など,経済的利益を得るために行う組織犯罪の防止を目的とする同条約やテロ対策とは何ら関係が見出せない犯罪も数多く含まれるからである。
そもそも,対象犯罪を限定したとしても,新法案が市民社会に与える影響が甚大であることに変わりはない。新法案の存在自体が,捜査機関により市民の内心に手を入れ,捜査・処罰する余地を生むことになるからである。
 
(5)以上のような問題点を抱える新法案が成立した場合,捜査機関は共謀罪の捜査を名目に犯罪が実際に着手され法益が侵害される遥か以前から捜査を行う根拠を獲得する。
2016年12月1日から施行されている通信傍受の対象犯罪の拡大と相まって,電話,メール,LINEなど市民の日常生活をターゲットにした早い段階からの捜査が行われることになる。さらに施行を控えている司法取引制度が施行されれば,共謀罪への引き込みの危険性も急激に拡大する。これらの結果もたらされるのは,国民の正当な政治活動や労働組合活動,その他の活動の萎縮であり,ひいては,捜査機関による監視対象となるかもしれないとの懸念による国民の日常生活の萎縮をもたらす深刻な監視社会の到来である。
我々は,日本の社会がそのような危険な社会に変貌してしまう危険を看過できない。
 
3 当会も,マフィアや暴力団等による越境的組織犯罪を防止するために同条約を締結する必要性は認める。もっとも,同条約は経済的利益を得るために行う組織犯罪の防止が目的であって,テロとは何ら関係がない。
政府は,同条約は参加罪か共謀罪のいずれかの制定を義務付けているとしている。しかし,同条約を締結するにあたり,共謀罪を制定する必要はない。同条約に関する国連の立法ガイド51パラグラフは,共謀罪や参加罪などの法的概念を持たない国においては,これらの概念を強制することなく,組織犯罪集団に対する実行的な措置をとることも条約上認められる,としているからである。
 
4 我が国は,航空機内の犯罪防止条約(東京条約),航空機不法奪取防止条約(ヘーグ条約),民間航空不法行為防止条約(モントリオール条約),国家代表等犯罪防止処罰条約,人質行為防止条約,核物質及び原子力施設の防護に関する条約,空港不法行為防止議定書,海洋航行不法行為防止条約,大陸棚プラットフォーム不法行為防止議定書,プラスチック爆弾探知条約,爆弾テロリズム防止条約,テロ資金供与防止条約,及び核テロリズム防止条約の合計13のテロ対策を目的とした条約を締結している。さらに,テロを防止するための法律も多数整備されているほか,テロリストの大多数が使用する銃や刃物は銃砲刀剣類所持等取締法や軽犯罪法により所持が禁じられている。これらの現行法によって,テロは未然に防止できる。条約を批准するための環境とテロを防止するための環境は既に整っており,テロ等準備罪を新設する必要はない。
なお,昨今世界各地で拡大しているテロの多くは国内出身者が国内で引き起こすという点でホームグロウンテロと呼ばれるが,その大多数は単独で行われる。共謀罪は単独犯に適用できない以上,このテロに対する抑止力になり得ない。
 
5 以上のとおり,当会は,新法案を本国会に提出することに強く反対する。
 
2017(平成29)年3月13日
長野県弁護士会                       
会長  柳   澤  修  嗣
 

司法試験合格者数のさらなる減員を求める17弁護士会会長共同声明

司法試験合格者数のさらなる減員を求める17弁護士会会長共同声明
 
会長共同声明 ( 2016-12-28 ・ 166KB )
司法試験合格者数のさらなる減員を求める17弁護士会会長共同声明

1.日本弁護士連合会は,本年3月の臨時総会決議(以下,「日弁連臨時総会決議」という。)において,現行の法曹養成制度の下で,法曹志望者が毎年大幅な減少を続けており,こうした状況が続くなら我が国の司法と民主主義を担う人的基盤を脅かす危険があるとし,平成27年度司法試験合格者数が1850人であった状況の中で,「まず,司法試験合格者数を早期に年間1500人とすること」を,可及的速やかに実現すべき緊急の課題として,全国の会員・弁護士会と力を合わせて取り組むことを表明した。
 
2.制度発足後,現実の法的需要を大幅に超える2000人前後の合格者(法曹有資格者)が毎年供給される反面,裁判所の新受件数に現れているとおり,法曹に対する従来型の需要は増加するどころか近年減少を続け,新しい活動領域の拡充も,供給の増加を吸収する規模には至らなかったため,有資格者の過剰供給の弊害は年々顕在化してきた。
司法試験を合格し,司法修習を終了しても,法曹として就職・就業できない者が12月の一括登録時で400人を超え,その1ヶ月後でも200人を超えているという異常事態が,平成23年12月(一括登録時464人,1ヶ月後326人)から昨年(一括登録時468人,1ヶ月後225人)まで続いてきた。また,新人法曹が抱える貸与型奨学金や修習中の貸与資金は,利用者平均で350万円にのぼることも判明している。
こうした中で,法曹の魅力,司法試験の魅力は,年々確実かつ急速に失われてきた。その結果として,法科大学院適性試験の受験者数は,試験が開始された平成15年には5万4千人であったものが,昨年3621人,本年3286人にまで激減し,司法試験受験者も,平成16年には4万3千人であったものが,昨年は8016人となり,さらに本年は6899人にまで激減するに至っている。現状は,法曹志望者の減少傾向に歯止めが利かなくなっている状態にあり,政府の法曹養成制度検討会議が平成25年6月26日取りまとめで指摘した,「多様で有為な人材を法曹に確保することが困難となる危機」は,現実化するに至っている。
多様で有為な人材が法曹を志望せず,試験の選抜機能が働かず,就職環境や法曹に就いた後のOJTの環境も厳しいとなれば,新規法曹の質が低下することも必定である。
日弁連臨時総会決議が,昨年の1850人の現状に対し,まず1500人へと合格者数を減員することを緊急課題としたのも,現行の法曹養成制度がこのような深刻な危機の状態にあるとの認識を反映したものである。
 
3.法務省は,本年9月に,本年度の司法試験合格者数は1583人であると発表した。数字だけを見ると,日弁連総会決議が緊急課題とした1500人への減員に結果として近づいたともいえる。しかし,昨年度も本年度も受験者数に対する合格者数の割合(合格率)は同一の23%であるから,本年度の合格者の減少は,昨年度と比べ法曹志望者が大幅に減少した結果もたらされたという見方をする意見もあり,政策的な減員がなされたか否か明らかでない状況にある。
日弁連臨時総会決議は,「更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要,問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきもの」としているところ,現行の法曹養成制度は,法曹志望者の激減に合わせて,法科大学院適性試験や司法試験の受験者が上記の通り著しく激減した結果,制度の成熟の前提となる多様で有為な人材の確保そのものが危機に瀕する実態にある。また,現実の法的需要が,平成15年以降,倍近くに増えた法曹有資格者の過剰供給を吸収できる状態から程遠い実態にあり,そのことの弊害がますます顕在化していることも,すでに明瞭である。
この間に,法曹有資格者が,既に何年にもわたり,登録年度ごとに供給過多が発生し,そのもとで法曹界に様々な困難が積み重なっていることを考慮すれば,政府が,次年度以降に向け,さらに大幅な減員を行う方針を速やかに採用しなければ,供給過剰による弊害の進行を食い止めることはできず,社会に法曹界の魅力ある将来像を提示することは困難となり,結果として人材の法曹離れの傾向を止めることもおぼつかず,さらに法曹養成制度の危機を深めるという悪循環が繰り返されることになる。
 
4.法曹は司法を担う人的基盤であって,司法制度は法の支配と人権擁護の基盤となる国家制度である。いま,供給過剰による弊害の進行を食い止め,法曹を目指すことの魅力を保持することは,司法制度存立の基礎を維持するために不可欠な事柄である。
そこで,われわれは,共同で,政府に対し,次年度以降の司法試験合格者数を,さらに大幅に減員する方針を,速やかに採用することを強く求めるものである。
 
以 上

                                   2016年(平成28年)12月27日

埼玉弁護士会  会長  福  地  輝  久
千葉県弁護士会 会長  山  村  清  治
栃木県弁護士会 会長  室  井  淳  男
群馬弁護士会  会長  小 此 木     清
山梨県弁護士会 会長  松  本  成  輔
長野県弁護士会 会長  柳  澤  修  嗣
兵庫県弁護士会 会長  米  田  耕  士
三重弁護士会  会長  内  田  典  夫
富山県弁護士会 会長  山  本  一  三
山口県弁護士会 会長  中  村  友 次 郎
大分県弁護士会 会長  須  賀  陽  二
仙台弁護士会  会長  小 野 寺  友  宏
福島県弁護士会 会長  新  開  文  雄
山形県弁護士会 会長  山  川     孝
秋田弁護士会  会長  外  山  奈 央 子
青森県弁護士会 会長  竹  本  真  紀
札幌弁護士会  会長  愛  須  一  史
 

「カジノ解禁推進法案」に反対する会長談話

「カジノ解禁推進法案」に反対する会長談話
 
「カジノ解禁推進法案」に反対する会長談話 ( 2016-12-08 ・ 99KB )
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)
に反対する会長談話
平成28年12月8日

長野県弁護士会    
会長 柳 澤 修 嗣


当会は,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」,以下「本法案」という。)に対して,反対の立場を表明し,同法案の廃案を求める。

本法案は,カジノ施設を含む特定複合観光施設が,「観光及び地域経済の発展に寄与するとともに,財政の改善に資するものである」として,かかる施設の推進を「総合的かつ集中的に行うことを目的」とし(第1条),一定の条件のもと民間業者がその設置運営をすることを認めるというものである。

本法案については,平成26年11月の衆議院解散で一旦廃案となったが,平成27年4月に再提出され,本年12月2日に衆議院内閣委員会において採決され,同月6日の衆議院本会議で可決され,自民党は今国会での成立を目指しているとのことである。

当会は,既に平成26年11月8日付で会長声明を出し,カジノ解禁によるギャンブル依存症及び多重債務問題の悪化,暴力団の資金源となるおそれ,青少年への悪影響等が懸念されることから,本法案に強く反対し,廃案を求めていたところである。しかしながら,今回,前記各弊害に関する十分な議論がなされないまま,拙速に本法案を通過させようとしている。

よって,当会は,本法案の成立に改めて強く反対し,廃案にすることを求める。 
 

長野県子ども条例の処罰規定について慎重な運用を求める会長声明

長野県子ども条例の処罰規定について慎重な運用を求める会長声明
 
会長声明 ( 2016-11-01 ・ 151KB )
長野県子どもを性被害から守るための条例の処罰規定について
慎重な運用を求める会長声明
 

1 本年7月1日,県議会において,長野県子どもを性被害から守るための条例(以下,「条例」という。)が可決成立し,同日,規制項目(第17条から20条まで)以外の規定が施行された。そして,本日,処罰規定を含む規制項目が施行された。

2 子どもを性被害から守ることは重要かつ喫緊の課題であり,条例が,県全体で総合的・恒久的に取り組んでいくことを宣言し,具体的な施策を根拠付け,推進していることは評価できる。
特に,性教育の重要性は各方面から指摘されてきたところ,条例にこれが明示された意義は大きいと考える。学習指導要領の制約を超えて,子どもにとって真に必要な性教育,人権教育,情報モラル教育を徹底すべきである。
また,被害者支援の取り組みについても,県が本年7月27日開設した「性暴力被害者支援センター(りんどうハートながの)」を,子どもの救済という観点から実効的なものにしなくてはならない。同センターは,大人と子どもの区別なく性被害者を対象にしているが,子どもの特性への配慮は不可欠であり,この点についての更なる検討を求める。
その他,相談窓口の充実,県民運動・啓蒙活動の推進についても,これまでの活動を踏まえつつ,新たな施策を策定し,早急に取り組みを開始すべきである。
 
3 他方,処罰規定については,これまで当会がその問題性を繰り返し指摘してきたところであるが(平成25年7月16日付「淫行処罰条例の制定に反対する会長声明」,同年12月14日付「淫行処罰条例の制定に反対する意見書」,平成28年2月6日付「子どもを性被害から守るための条例のモデル報告書に関する会長声明」,同年6月28日付「子どもを性被害から守るための条例案に関する会長談話」),問題性が解消されたとはいえず,また,それを正面から捉えた議論が十分に尽くされたとも言い難い状況のまま,条例に規定され,本日施行日を迎えた。
 
4 最も懸念される問題は,子どもの真摯な恋愛を除外できるのかという点である。これができなければ,処罰範囲は不当に拡大し,また,子どもの恋愛は過度に制約され,萎縮してしまう。
「何人も,子どもに対し,威迫し,欺き若しくは困惑させ,又はその困惑に乗じて,性行為又はわいせつな行為を行ってはならない。」(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の規定は,真摯な恋愛か否か(可罰的か否か)の線引きの難しさゆえ,本来罰すべきでない行為に捜査が及んだり,当事者の一方的な被害申告で処罰されるといった事態が懸念される。
 
5 深夜外出の規制についても,「何人も,保護者の委託を受け,又は同意を得た場合その他の正当な理由がある場合を除き,深夜に子どもを連れ出し,同伴し,又は子どもの意に反しとどめてはならない」(30万円以下の罰金)の規定は,子ども本人の真摯な同意があったとしても,保護者が同意していなければ,罪に問われることになる。これも,子どもの真摯な恋愛を除外せず,子どもの自由を過度に制約するものであり,問題である。
 
6 捜査機関は,処罰規定のこうした問題性を十分に認識し,運用に際しては,子どもの真摯な恋愛関係に介入したり,子どもの自由を過度に制約することのないよう,特に慎重を期すべきである。
 
7 また,処罰規定の運用を検証する仕組みが不可欠である。個人の名誉やプライバシーに関わる情報を扱うことから,非公開の第三者機関を設置し,起訴不起訴に関わらず,本処罰規定違反の容疑で捜査権を行使した全ての事案について,その内容に踏み込んで,処罰規定の濫用がないかをチェックすべきである。
 
8 条例により,長野県は,子どもの性被害の根絶へ向けて新たな一歩を踏み出した。これをスタートラインとして,種々の実効的な施策が速やかに策定され,各所で具体的な取り組みが始まることを切に期待する。
それとともに,処罰規定が子どもの真摯な恋愛への介入に繋がらないよう,捜査機関に対し,その慎重な運用を強く求める。また,県に対し,処罰規定の運用を十分に検証するための仕組みを整備するよう求める。

平成28年11月1日             
長野県弁護士会               
会長  柳 澤 修 嗣
 

いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明

いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
 
共謀罪法案の提出に反対する会長声明 ( 2016-10-03 ・ 140KB )
いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
~内心を広範に処罰し,監視社会を招く共謀罪に断固反対する~
 
1 政府は,過去に3回廃案になった共謀罪法案(以下「旧法案」という。)に関し,テロ対策の必要性
を新たな提出理由に加え,「共謀罪」という名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に変更した組織犯罪処罰法改正案を今後の国会に提出する方針であると報じられている(以下「提出予定新法案」という。)。
 
2 提出予定新法案における旧法案からの主な変更点は,以下のとおりである。
(1)適用の対象について,旧法案が「団体」としていたものを,「組織的犯罪集団」とした。
(2)処罰の対象については,旧法案が単に「共謀」としていたものを「二人以上で計画した者」に変更し,かつその計画をした者が「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の当該犯罪の実行の準備行為が行われたとき」という要件を追加した。

3 政府は,これらの変更点につき旧法案に対する批判に配慮したものであるとしている。
しかし,提出予定新法案は,行為を処罰し,思想や内心の意思を処罰しないという近代刑法の基本原則に反するとして廃案になった旧法案とその本質において全く異ならない。
(1)提出予定新法案の「計画」とは「犯罪の合意」であるから,従来の「共謀」と事実上同じである。
新たに追加された「犯罪の実行のための資金又は物品の取得その他の当該犯罪の実行の準備行為が行われたとき」によっても,何ら処罰の対象行為は限定されない。この「準備行為」は,現行法上の予備罪の予備のようにそれ自体が一定の危険性を備えている必要はなく,犯罪の成立要件の限定としてはほとんど無意味である。例えば,預貯金口座から生活資金を引き出す行為も,捜査機関によって犯罪実行に向けた資金の準備行為と認定されれば立件されうることになる。
このように,内心の意思が処罰されるという点で旧法案と全く違いはない。
(2)「組織的犯罪集団」も極めて曖昧な概念であるうえ,捜査機関が認定し立件することになるため,捜査の対象となる団体が際限なく拡大される危険性は払拭できず,単なる「団体」を処罰するとした旧法案と変わりがない。
(3)対象となる犯罪も,政府はテロ対策を理由とした上で,旧法案と同じく長期4年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪等としているため,600を超える。その結果,偽証罪(刑法第169条),虚偽通訳罪(同法第171条),虚偽告訴罪(同法第172条),賭博場開帳等図利罪(同法第186条第2項),背任罪(同法第247条),貸金業法における無登録営業の罪(貸金業法第47条)など,テロ対策とはおよそ無関係と考えられる罪の共謀までも処罰の対象となる。
4 通信傍受制度の対象犯罪の拡大が2016年12月までに施行されることにより,捜査機関が「計画」つまり「共謀」を捜査対象とする環境は既に整っている。
多くの問題点を含む共謀罪が新設されれば,捜査機関によってテロ対策の名の下に電話やメールなど市民の会話が監視され,思想信条の自由,表現の自由,集会・結社の自由など憲法上の基本的人権が脅かされることになる。自由主義社会の基盤となる自由な表現活動が委縮し,市民社会の在り方が大幅に変容する可能性が高い。

5 政府が挙げていた旧法案の主な提出理由は,マフィア等の越境的組織犯罪の抑止を目的とする国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「条約」という。)批准のために必要というものであり,テロ対策は挙げられていなかった。条約は経済的な組織犯罪を対象とするものであり,テロ対策や東京オリンピック開催とは本来無関係である。
我が国には,重大な犯罪については既に60を超える陰謀罪及び共謀罪並びに予備罪・準備罪などが規定されているほか,共謀共同正犯理論もある。テロ組織等の組織犯罪集団が行う犯罪行為の大多数は銃器や刀剣など武器の事前準備を伴うことが想定されるが,それらの犯罪行為は,銃砲刀剣類所持等取締法によって未遂以前に取り締まることが可能である。条約を批准するための環境とテロを防止するための環境は既に整っており,共謀罪を新設する必要はない。

6 よって,当会は,共謀罪を内容とする提出予定新法案の提出に強く反対する。
 
  2016(平成28)年10月3日
長野県弁護士会                       
会長  柳   澤  修  嗣
 

子どもを性被害から守るための条例案に関する会長談話

子どもを性被害から守るための条例案に関する会長談話
 
子ども条例案に関する会長談話 ( 2016-07-01 ・ 122KB )

1 現在,長野県議会6月定例会において,子どもを性被害から守るための条例案(以下,「条例案」という。)が審議されている。
条例案は,平成27年9月の「子どもを性被害から守るための条例のモデル報告書」(以下,「条例モデル報告書)という。)の内容に沿ったものである。県は,同報告書を受けて,本年2月1日に条例制定の基本方針を明らかにし,同月12日に骨子案を,本月10日に条例案の骨子と概要をそれぞれ公表し,16日開会の6月定例会に条例案を提出した。
 
2 当会は,本年2月6日に「子どもを性被害から守るための条例のモデル報告書に関する会長声明」を発し,県に対し,規制項目については慎重な検討を求めつつ,子どもを性被害から守るための教育,被害者支援その他の施策については条例を制定して積極的に推進することを求めたところである。
同声明で指摘したところは,条例案にもそのまま当てはまる。特に規制項目の問題性については,その後十分な議論が尽くされたかは疑問であり,県議会に対しては,慎重な検討を強く要望する。
 
3 条例案の骨子「7 子どもの性被害に関する行為の規制」(規制項目)についての問題は,子どもの真摯な恋愛を除外できているのか,という点にある。これができていなければ,子どもの恋愛は過度に制約され,また萎縮してしまう。
「何人も,子どもに対し,威迫し,欺き若しくは困惑させ,又はその困惑に乗じて,性行為又はわいせつな行為を行ってはならない。」(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の規定について,県は,あくまでも「威迫」「欺罔」「困惑」という要件の有無が判断されるのであって,真摯な恋愛の有無を問うものではないと説明する。
しかし,真摯な恋愛においても,見方によっては「威迫」「欺罔」「困惑」と捉えられるような行為が伴いうる。すなわち,そのような行為が真摯な恋愛か否か(可罰的か否か)という評価がどうしても求められるところであって,その線引きの難しさゆえ,本来罰すべきでない行為に捜査が及んだり,当事者の一方的な被害申告で処罰されるおそれが類型的に高いのである。
 
4 深夜外出の規制についても,例えば,「何人も,保護者の委託を受け,又は同意を得た場合その他の正当な理由がある場合を除き,深夜に子どもを連れ出し,同伴し,又は子どもの意に反しとどめてはならない」(30万円以下の罰金)の規定は,子ども本人の真摯な同意があったとしても,保護者が同意していなければ,罪に問われることになる。すなわち,17歳と18歳が真摯な交際をしているが,親が交際に反対している場合,この2人が深夜に外出するだけで,18歳が処罰される。これも,子どもの真摯な恋愛を除外できておらず,子どもの自由が過度に制約されているとみるべき問題である。
 
5 規制項目のうち,特に上記の罰則を伴う規制については,これらの懸念を正面から取り上げ,それをどのようにクリアするのか,できるのかといった議論が不可欠である。その際には,当事者である子どもの意見も十分に聴取して行われるべきである。
 
6 条例案は,長野県として,子どもを性被害から守るための総合的で恒常的な取り組みを宣言するものであり,上記規制項目を除いては,積極的に評価しうるものである。
そのような取り組みを一刻も早く開始すべく,上記規制項目については適宜の修正削除のうえ,条例としては早期に成立させて,前進すべきである。
 

平成28年6月28日
長野県弁護士会 
会長  柳 澤 修 嗣
 

ヘイトスピーチ対策法律案に関する会長声明

ヘイトスピーチ対策法律案に関する会長声明
 
「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」に関する会長声明

平成28年5月23日
長野県弁護士会
会 長  柳 澤 修 嗣
 

1 我が国では,近年,日本国内に居住する外国籍の人々や外国にルーツを持つ日本人等に対するヘイトスピーチ等の深刻な人種差別が横行しており,これらの行為に対する抜本的な対策が求められている。
このような観点から,平成28年5月13日に参議院で可決され衆議院に送付された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」(以下,「本法案」という。)は,人種差別全般を対象としておらず,「不当な差別的言動」(第1条),いわゆるヘイトスピーチに対象を限定している点で充分とはいえないものの,国会がそれらの「不当な差別的言動の解消が喫緊の課題である」(第1条)との問題意識を有し,その対策に乗り出したこと自体は大いに評価する。
 
2 一方で,本法案には,規制の対象となる「不当な差別的言動」を,専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身者である者又はその子孫であって,かつ「適法に居住するもの」(第2条,以下「適法居住要件」という。)に対する言動に限定しているという問題がある。

3 すなわち,すべての人間は生まれながらにして自由であり,かつ,尊厳と権利において平等であり,いかなる事由による差別をも受けることなく,所定の権利及び自由を受ける権利を有する(世界人権宣言第1条,第2条)。ヘイトスピーチ等の人種差別は誰に対しても許されず,在留資格の有無でその結論が異なるわけではない。
 
4 「適法居住要件」を定めることになれば,ヘイトスピーチを行おうと意図する者に対し「在留資格を有しない外国籍の人々や難民申請者に対するヘイトスピーチは許される」といった誤ったメッセージを送ることになりかねない。そうなれば,これらの人々に対するヘイトスピーチが増加することはおろか,かえって「不当な差別的言動」そのものの増加を招くおそれすらある。
我が国も加入している「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(以下,「人種差別撤廃条約」という。)の解釈基準である「市民でない者に対する差別に関する一般的勧告30」が,「人種差別に対する立法上の保障が,出入国管理法令上の地位にかかわりなく市民でない者に適用されること,及び立法の実施が市民でない者に対する差別的な効果を持つことがないよう確保すること。」と規定していることを踏まえれば,在留資格のない者に対する人種差別も対象とするべきである。
 
5 野党側は,不法滞在者に対する差別を助長するおそれがあるとして適法居住要件の削除を求めてきたが,与野党は,同年4月27日,「第2条が規定する『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』以外のものであれば,いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであり,本法の趣旨,日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の精神に鑑み,適切に対処する」との文言等を附帯決議に盛り込むことで合意し,同年5月13日,参議院本会議で可決され衆議院に送付された。
しかし,附帯決議には法的拘束力がない以上,不十分であり,目的達成のためには端的に「適法居住要件」を削除した上で本法案を成立させるべきである。
 
6 よって,当会は,本法案から「適法居住要件」を削除した上での今国会での成立を求める。

以 上
 

69回目の憲法記念日に寄せる会長談話

69回目の憲法記念日に寄せる会長談話
 
69回目の憲法記念日に寄せる会長談話

2016年(平成28年)5月3日
長野県弁護士会
 会 長 柳 澤 修 嗣

昭和22年5月3日に施行された日本国憲法は、今年、69回目の憲法記念日を迎えた。日本国憲法は、わが国が平和的に繁栄し、国際社会から高い信頼を得るのに重要な役割を果たしてきた。しかし、今、日本国憲法は、大きな試練にさらされている。

昨年9月19日、平和安全法制整備法及び国際平和支援法(いわゆる「安全保障関連法」)が成立し、本年3月29日から施行された。安全保障関連法は、歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し、外国軍隊に対する後方支援を拡大し、自衛隊の海外における武器使用権限を拡大するものである。安全保障関連法は、憲法の定める恒久平和主義に反し、違憲無効である。さらに、安全保障関連法の審議に先立ち、閣議決定により憲法9条の解釈を変更し、国会においても、十分な審議を尽くすことのないまま、多くの国民が反対する中で、拙速にこの法律を成立させたことは、立憲主義に反するものであって、政府の姿勢は、まさに憲法を蹂躙するものである。当会は、安全保障関連法の運用・適用に反対し、その廃止を強く求めるものである。

さらに最近、政府関係者からは、緊急事態条項や憲法9条の改正に向けた発言もなされ、今や、憲法改正が、政治課題にのぼろうとしている。
先の大戦により、わが国は、国民が存亡の危機に陥った。国土は焦土と化し、310万人を超える国民が犠牲になった。戦争の生々しい傷跡が残る中で制定された日本国憲法は、「日本国民は、・・われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と宣言した(憲法前文)。戦後、70余年を経て、戦争を経験した世代は少なくなり、またわが国をとりまく国際情勢も変化しているが、私たちは、憲法に込められたこの崇高な理想を心に刻む必要がある。

さらに、憲法は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定している(憲法13条)。私たちが、自分の信ずるところにしたがい、豊かで幸福な人生を全うするためには、私たち一人ひとりが個人として、最大限尊重されなければならない。

立憲主義は、人類が多くの過ちを繰り返し、苦難の歴史を経た結果、確立した近代憲法の基本理念である。憲法は、国家権力のあり方を規定するものであり、そのあり方を決めるのは、主権者である私たち国民である。私たちは、歴史を知り、わが国を取り巻く情勢を正確な情報に基づき冷静に分析し、そして、どのような国を目指すのか深く考えなければならない。憲法に何を託すのか、問われているのは、私たち自身である。
本日の憲法記念日を、憲法の意義について改めて認識するとともに、これからの国のあり方を考える機会としたい。

また、憲法が施行された翌々年(昭和24年)に制定された弁護士法は、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定し(第1条第1項)、「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」と規定している(同条第2項)。私たち弁護士は、憲法から負託されたこの使命を改めて自覚し、その職責を果たすため、誠実に努力しなければならない。
言うまでもなく戦争は、国民の尊い命を危険にさらし、その生存を脅かすものであり、最大の人権侵害である。当会は、弁護士の使命を果たすため、これからも日本国憲法の基本理念を堅持し、戦争のない平和な社会を守るための取組に全力を尽くす所存である。

以 上
 

熊本地震に関する会長談話

熊本地震に関する会長談話
 
熊本地震に関する会長談話
 去る4月14日及び同日以降に発生した熊本地震におきまして、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様方、そのご家族の方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 この度の地震は、前震が最大震度7・マグニチュード6.5、本震が最大震度7・マグニチュード7.3という規模を記録し、その後も大規模な余震が多発しており、家屋の倒壊等により多数の死傷者が発生し、今なお大勢の方々が避難生活を余儀なくされている状況にあります。
 日本弁護士連合会は、地震発生日である4月14日に緊急対策本部を立ち上げ、過去の震災における支援活動で培ってきた経験を活かし、熊本県弁護士会、九州弁護士会連合会及び各地の弁護士会、さらには自治体や日本司法支援センターなど関係諸機関と連携し、被災された方々の支援に全力で取り組んでいく旨の方針を表明しました。
 長野県弁護士会としては、既に、会員に対して「熊本地震に係る義援金」を募集する等の活動を開始しておりますが、今後も、日本弁護士連合会や各地の弁護士会と連携して、被災地への法的支援と被災された皆様方の権利回復のために、できる限りの支援をしていく所存です。
 被災者の皆様の生活再建をはじめとする被災地の復旧が、一日も早く叶いますよう、心よりお祈り申し上げます。
 
2016年(平成28年)4月28日   
長野県弁護士会             
会長  柳  澤  修  嗣   
 
 

労働審判の実施支部拡大に関する会長声明

労働審判の実施支部拡大に関する会長声明
 
労働審判の実施支部拡大に関する会長声明
                                         
                                        2016年(平成28年)2月6日          
                                          長野県弁護士会            
                                              会長 髙 橋 聖 明  

1 最高裁判所は、平成28年1月15日に行われた日本弁護士連合会との間の民事司法改革に関する協議会において、平成29年4月から長野地方裁判所松本支部、静岡地方裁判所浜松支部及び広島地方裁判所福山支部の3支部において労働審判の取扱いを開始すべく準備を開始すること等を明らかにした。

2 労働審判は、個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争を、原則3回の手続において、迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的として、平成18年から導入された制度であったが、これまでは各地方裁判所の本庁のほか、支部では東京地方裁判所立川支部及び福岡地方裁判所小倉支部において実施されるのみであった。

3 この間、当会は、平成24年6月23日の総会において「地域司法の充実を求める総会決議」を行い、長野地方裁判所各支部において労働審判手続の取扱いを可能とすること、とりわけ長野地方裁判所松本支部においては、早急に労働審判手続の取扱いを開始することを求めてきた。また、長野県議会においても平成24年11月30日「長野地方裁判所各支部における労働審判事件の取扱いの開始を求める意見書」が採択されたほか、平成26年7月までに、松本市議会を含む47の中南信地域の全ての市町村議会(一部広域連合議会を含む)において、同趣旨の意見書・請願が採択されている。国民に対する司法サービスの提供は、地域間で格差があってはならないのであり、身近で利用しやすい司法の基盤整備の観点からは、支部において労働審判を実施する必要性は明らかであった。

4 この度、最高裁判所が、長野地方裁判所松本支部を含む3支部で新たに労働審判の取扱いを開始する準備を開始したことは、身近で利用しやすい司法の実現に沿うものであり、歓迎するものである。当会としても、長野地方裁判所松本支部において、平成29年4月から労働審判が円滑に実施することが可能となるように協力する所存である。

5 しかしながら、本来、個々の労働者と事業主との間に生じる民事に関する紛争は、全ての支部管内において生じるものであり、その解決に当たっては、身近な裁判所支部において解決すべきものである。今回、労働審判の実施予定支部として長野地方裁判所松本支部を含む3支部が追加されたが、全国的にも労働審判を扱える支部は、従前から労働審判を扱っている2支部と合わせてもわずか5支部にすぎない。長野地方裁判所には、松本支部のほかに、上田支部、佐久支部、諏訪支部、伊那支部及び飯田支部があるが、これらの支部において、労働審判が実施される目処は立っていない。

6 よって、当会は、地域における司法制度が「真の意味で住民にとってより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのある司法」となるように、労働審判の実施支部のさらなる拡大を求めるものである。
                                                                    以 上
 

子どもを性被害から守るための条例のモデル報告書に関する会長声明

子どもを性被害から守るための条例のモデル報告書に関する会長声明
 
子どもを性被害から守るための条例のモデル報告書に関する会長声明

1 県は、平成25年5月に「子どもを性被害等から守る専門委員会」を設置して、子どもを性被害から守る施策の検討を始め、平成26年3月同専門委員会による報告書の提出、同年8月長野県青少年育成県民会議による報告書の提出を経て、同年11月「子どもを性被害から守るための県の取り組み」をとりまとめた。そして、条例制定の是非について建設的な議論をする材料としての条例のモデルを作成するとして、平成27年2月「子どもを性被害から守るための条例のモデル検討会」を設置し、以後6回の会議を経て、同年9月同検討会より「子どもを性被害から守るための条例のモデル報告書」(以下、「条例モデル報告書」という。)が提出された。これをもとに、県は、各地で県民や関係団体との意見交換を実施し、本月1日条例モデル報告書に基づく条例の制定が必要との基本的方針を示した。

2 子どもを性被害から守ることの必要性、重要性については論を俟たない。性被害は子どもの尊厳を傷つけ、その健全な成長発達を著しく阻害するものであり、子どもが誰一人として性被害に苦しむことのないよう全ての大人が全力で取り組むべきことに異論はないと思われる。
昨今のインターネットの進展により、子どもは親を始めとした周囲の大人の目の届かないところで外の世界と繋がることが容易になった。様々な情報に触れ、世界が格段に広がることが子どもの成長発達に資する側面がある一方、悪意を持った大人と直接繋がってしまう危険を孕んでいる。
性被害という結果の深刻さと現代の子どもを巡る社会環境を考えると、子どもを性被害から守る取り組みは急務であり、県下一丸となって必要十分な施策を実施していくことが求められる。

3 その意味で、県が子どもを性被害から守るために種々の施策を検討し、その条例化を模索していること自体は評価に値するものである。
予防の観点で最も重要なのは、子どもに対する性教育、情報リテラシー教育である。ここでいう性教育とは、子どもの性的な自己決定の力を育むための教育と捉えるべきである。その内容は、人間の体や性のしくみを科学的に理解することにとどまらず、性が人間の営みの根源であり人間の存立にとっていかに重要であるかを知り、自己や他者の性、生命を大切にする気持ちを育むこと、性犯罪や性産業、インターネットの世界の実態など性をめぐる社会的事象について考え学ぶことをも含むものである。また、性は相手の存在を前提とするものであるから、相手との関係を形成する力も必要である。相手に対して自分の思いを伝え、相手の思いを受け止めて自分の考えや行動を変えること、相手と対等の立場で、受け入れるか断るかを主体的に判断できることも必要である。その前提には、子ども自身に十分な自尊感情や自己肯定感が備わっていなくてはならない。
平成27年3月26日付で長野県警察本部が発表した「平成25年・26年中における17事例説明資料」(現行法で対処できなかったとされる性被害の事例。以下、「17事例」という。)には、このような教育が明らかに不足している子どもの現状が浮き彫りにされている。SNS越しの相談相手が、もしかしたら自分が想定している人格とはまったく異なる人格であるかもしれないという可能性に思い至らない。そのような相手と2人だけで会い、密室という状況下に身を置くことについて事前にその危険性を感じとることもない。性的な誘いに対して、家に帰れないとか相談相手を失うといった理由で、安易に応じてしまう。あまりに無防備で、流されやすく、性の大切さに無頓着な子どもの姿がそこにある。このような子どもが現実社会で生きていくための成長発達を遂げるためには、前述の性教育や情報教育が不可欠である。
もちろん、能力等で教育の効果が発揮されない子どもや、家庭環境等教育とは別の問題を抱える子どもがいる。教育により全てが解決するというわけではない。
しかし、前者については、子どもの特性に応じたきめ細やかな教育を施すことは可能である。また、後者についても、教育の必要性自体を否定するものではない。この点、17事例の多くについて、その背景には、子どもを取り巻く環境にも問題があるように見受けられる。適切な居場所や相談相手がおらず、周囲の大人によるサポートが欠如している。突き詰めれば、周囲の大人が、子どもの主体性を認めその成長発達を支援し見守っていくという子ども観に立っていないことが原因と考えられるところであり、そのような大人の意識改革が本来的には必要というべきである。子どもに対しては、このような子ども観に立ち、子どもが主体的に性的自己決定をできるようその力を育む教育を十分に施すべきであり、それこそが大人の責務である。
このような教育は、子ども自身が性被害に遭わないためだけでなく、将来、加害者にならないためにも重要である。加害者に対する罰則を設けるということは、表面的な効果はあるのかもしれないが、加害者自身の性に対する考え方が変わらない限り、被害はなかなか減らないと考える。子どもは将来の大人である。現在問題とされている性被害の予防には、このような教育こそが最も効果的な方策であると考える。 
現状行われている性教育は、上記の意味で内容的に不十分であり、また、発達段階のより早い時期からなされる必要がある。例えば、CAP教育は、自己肯定感を高める効果があり、かつ生きた人権教育でもあり、性的自己決定力を育む上でも極めて有効である。
県は、このような教育を小学生以上の全ての子どもに向けて実施するよう働きかけるなど、より踏み込んだ施策を講じるべきである。県は、条例の規定として、以上述べてきた性教育・情報教育の必要性を明示し、具体的な内容を掲げ、その実施を宣言するべきである。

4 被害者支援(ケア)も極めて重要である。
子どもを性被害等から守る専門委員会の第5回会議において、過去に性被害に遭った女性は、周囲の大人の無理解もあり、長年苦しんできた心情を吐露した。周囲の大人が当時この女性に対して適切な支援をしていれば、現在の心境も違ったのではないかと考えられるところである。
性被害に遭った子どもに対しては、あらゆる側面から支援が必要である。県が現在検討している性被害者のためのワンストップ支援センターを実効性あるものにしなくてはならない。また、司法面接の手法を導入するなど、二次被害の防止に努めることも重要である。

5 他方、規制項目のうち、威迫等による性行為等の禁止として罰則を制定することについては、相当慎重な検討を要する問題であり、安易に賛成できない。
当会は、平成25年7月16日に「淫行処罰条例の制定に反対する会長声明」を、同年12月14日に「淫行処罰条例の制定に反対する意見書」をそれぞれ発出し、安易な刑罰法規の制定に警鐘を鳴らしてきた。
条例モデル報告書に明記されている処罰規定「何人も、子どもに対し、威迫し、欺き若しくは困惑させ、又はその困惑に乗じて、性行為又はわいせつな行為を行ってはならない」(罰則2年以上の懲役又は100万円以下の罰金)は、従来の淫行概念を排除した限定的な規定であり、その問題性は相当程度払拭されている。
しかしながら、捜査機関が真摯な恋愛感情による行為か否かの判断を行うことには変わりなく、捜査機関がそれを適切に行うことができるのかは疑問であり、過度に広汎な規制につながるおそれを否定できない。特に「困惑に乗じて」という類型については、行為者に積極的な働きかけの言動がなくても、被害者の「困っていた」という申告だけで処罰の対象とされる可能性がある。
性や恋愛は人間の根源的な営みであり、その有り様は人それぞれであって、個人の高度なプライバシーに属し、その選択と自己決定に任されるべきものである。そこに踏み込むおそれのある刑事罰であることに鑑み、謙抑性を重視し、必要性及び相当性の判断は厳格になされなければならない。
また、現在、法制審議会の刑事法(性犯罪関係)部会において性犯罪に係る刑法改正の議論がなされており、その中で、地位・関係性を利用した性的行為に対する罪の新設等が検討されている。これにより、例えば知的障害を有する子どもの監護者による性被害に対する処罰はカバーされる可能性がある。本処罰規定の必要性に関わる議論であり、この議論の経過も踏まえる必要がある。
子どもを性被害から守るための条例に淫行処罰規定を盛り込むべきかどうかについては、賛否両論がある。県は、拙速にならず、相当に慎重な検討のうえ、県民全体の十分な議論を経て、その是非を判断するべきである。

6 深夜外出の制限については、保護者の委託等正当な理由なく深夜に子どもを連れ出す等の行為を禁止することの必要性は理解しうる。
しかし、それ以外の規定は、子どもが深夜に外出することそれ自体を原則として認めないという前提に立つものであり、子どもの行動の自由に対する制約の度合いが大きい。当該子どもの帰宅できない事情を一切考慮することなく、一律に帰宅を促すというのも問題である。これらについても、慎重な検討が必要である。

7 その他、条例モデルに示された相談体制の充実、保護者を含む大人に対する啓発活動、人材育成の取組に対する支援は、いずれも重要な取り組みであり、着実に実施される必要がある。また、県民運動の活性化の方策も欠かすことはできない。
これらの諸施策及び子どもに対する教育、被害者支援については、施策の継続性を確保するという観点から、全てを条例化すべきである。間違っても、規制項目のみを条例化して終わりということはあってはならない。

8 以上のとおり、当会は、県に対し、規制項目については慎重な検討を求めつつ、子どもを性被害から守るための教育、被害者支援その他の施策については条例を制定して積極的に推進することを求める。

 
平成28年2月6日
 
長野県弁護士会              
会長  髙 橋 聖 明
 

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受け,民法の差別的規定の早期改正等を求める会長声明

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受け,民法の差別的規定の早期改正等を求める会長声明
 
夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受け,民法の差別的規定の早期改正等を求める会長声明
 
2016年(平成28年)2月6日     
長野県弁護士会                
 会 長  髙 橋 聖 明

1 最高裁判所大法廷は,平成27年12月16日,女性のみに6ヶ月間の再婚禁止期間を定める民法第733条について,「100日超過部分」は「過剰な制約」として憲法に違反している旨判示する一方,夫婦同氏を強制する民法第750条については同制度が合理性を欠くとは認められないとして憲法に違反しないとの判断を下した。

2 当会は,これまで平成22年4月30日付「民法(家族法)の早期改正を求める会長声明」において表明し,上記両規定の改正を求めてきた。この度の民法第733条違憲判決は,当会の主張に沿うものであり,その限りで妥当なものと評価することができる。しかしながら,下記の通り,100日以内を合憲とした点は,依然合理的な制約とは言えず反対である。また,夫婦同氏制を規定する民法第750条につき合理性を欠くとは言えず合憲とした点も,合理的な理由によるものとは評価できず,反対である。


(1)民法第733条につき,多数意見は,婚姻をすることについての自由は憲法第24条1項の趣旨に照らし,十分に保障されるべきものなので,本件規定が再婚をする要件に関し男女の区別をしていることに対しては,立法目的に合理的な根拠があり,かつ,その区別の具体的内容が立法目的との関連において合理性を有するものであるか否かという観点から憲法適合性の審査を行うのが相当であるとした上で,本件規定の立法目的は,嫡出子について出産の時期を起点とする明確で画一的な基準から父親を推定し,父子関係を早期に定めて子の身分関係の法的安定を図ることにあって合理性が認められるが,かかる立法目的を実現し父子関係の重複を回避するためには,計算上100日の再婚禁止期間を設ければ足り,それを超える部分については上記立法目的との関連において合理性を欠くものである,と判断している。
しかしながら,婚姻の自由は,家族の形成・維持に係わる事柄として自己決定権の中核をなすものであるから,かかる自由に対する制限や区別に対する合憲性については,立法目的の合理性や手段の合理的関連性に関しより厳格な審査を行う必要がある。本件規定に関しては,仮に,上記多数意見が指摘するような立法目的の合理性が認められるとしても,父性推定の重複回避のために再婚禁止期間を設けなければならない場合は極めて例外的である上,父子関係については,立法当時とは異なりDNA検査により極めて正確に確定することができるようになっているのであるから,そのような科学技術の発達の状況を踏まえれば,上記目的を達成するために再婚禁止期間を設ける必要性・合理性は既に失われているものと言わざるを得ない。
 (2)民法第750条につき,多数意見は,氏名は,人が個人として尊重される基礎であり,個人の人格の象徴であって人格権の一内容を構成するものであるが,氏に関しては,夫婦やその子が同一の氏を称することにより,社会の構成要素である家族の呼称として一体性を確保する意義があり,氏が婚姻を含めた身分関係の変動に伴って改められることはその性質上当然に予定されているのであるから,婚姻の際に氏の変更を強制されない自由は人格権の一内容とまでは言えないとし,夫婦が同一の氏を称することは,家族という一つの集団を構成する一員であることを対外的に公示し識別する機能を有しており,子においても夫婦の共同親権に服する嫡出子であることを示すことができ,いずれの親とも氏を同じくすることによる利益も享受しやすくなること,他方,夫婦同氏制といっても婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではないから,個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度とは言えない,と判断している。
しかしながら,氏は、家族(夫婦と子という身分関係)の一体性を確保するためにあるだけでなく,個人が自己実現を図るためのアイデンティティとして,社会において個人の尊厳の基礎である個人識別機能を実現するものであって,このような氏を尊重しその変更を強制されない権利は,重要な人格権を構成するものと言わなければならない。殊に,女性の社会進出が進んでいる現代社会においては,この意義はより一層尊重されなければならないと確信する。氏が家族という社会の基本的な集団単位の呼称であり,家族を構成する一員であることを公示し識別する機能があるとしても,夫婦のあり方や家族の形態の多様化の下に,一片の例外も許さずに一律に同氏を強制しようとすることには合理性が存するとは到底言えない。又,通称使用についても,あくまで便宜的かつ例外的な対処であり,公的文書には用いることができない等極めて不安定・不確実なものであるから,夫婦同氏を認める合理的な根拠には到底なり得ない。

4 日本弁護士連合会及び他の連合会並びに当会をはじめとする多くの弁護士会においてこれまで再三再四主張してきたとおり,民法第750条は,憲法第13条,14条及び24条に反するのみならず,女性差別撤廃条約第16条第1項(b)が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」にも反するものである。また,我が国の法制審議会からの法改正の答申及び国連の女性差別撤廃委員会から再三の法改正勧告があったにもかかわらず,「家族の一体感が損なわれる」などの抽象的な理由で,国会は現在まで頑なに法改正を拒否してきた状況がある。

5 以上の状況を踏まえ,当会は,国に対し,改めて民法第733条の廃止及び同第750条の改正を速やかに実施するよう強く求めるものである。
以 上
 

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
 
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
2016年(平成28年)1月20日
 長野県弁護士会        
 会長 髙 橋 聖 明   

司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については,この間,日本弁護士連合会をはじめ,当会を含む全国の各弁護士会に対して,多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられているが,今般,賛同メッセージの総数が,衆参両院の合計議員数の過半数を超えた。メッセージを寄せていただいた国会議員の皆様に心より感謝申し上げる。

司法制度は,社会に法の支配を行き渡らせ,市民の権利を実現するための社会的インフラであり,これを担う法曹になる司法修習生は,公費をもって養成するべきである。このような理念のもとに,我が国では,終戦直後から司法修習生に対し給与が支払われてきた。しかし,この給費制が、2011年(平成23年)11月から貸与制(修習期間中に費用が必要な修習生に対して修習資金を貸与する制度)に変更された。この修習資金の債務に加え,大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている修習生も多く,その合計額が多額となる者も少なくない。法曹を目指す者は,年々減少の一途をたどっているが,こうした重い経済的負担が法曹志望者の激減の一因となっていることが指摘されている。

こうした事態の中で,昨年6月30日に政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において,「法務省は,最高裁判所等との連携・協力の下,司法修習の実態,司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況,司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」とされた。これは,それまでの貸与制を前提とする支援から,給費型の経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。これは,賛同いただいた国会議員,市民,諸団体の皆様との運動の成果である。

法務省,最高裁判所等の関係機関は,有為の人材が経済的な理由によって法曹となることを断念することがないよう,司法修習生に対する経済的支援策について直ちに検討を開始し,司法修習生が安心して修習に専念できるような給付型の経済的支援(修習手当の創設)を実現すべきである。

当会は,国に対し,国会議員の賛同メッセージが過半数を超えたことを踏まえ,早期に給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
以 上
 

消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明

消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
 
消費者庁・国民生活センター・消費者委員会の地方移転に反対する会長声明
 
2016年(平成28年)1月9日
長野県弁護士会 会長 髙 橋 聖 明

政府は,「まち・ひと・しごと創生本部」に「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)を設置して,政府関係機関の地方移転を検討しているところ,現在,徳島県からの提案を受け,消費者庁,国民生活センター(相模原事務所を含む全体),消費者委員会を同県に移転することが具体的に審議されている。
しかしながら,消費者庁,国民生活センター,消費者委員会の地方移転は,これら機関の機能を低下させ,我が国の消費者行政の推進を阻害することになるから,当会は,これらの地方移転に強く反対する。
有識者会議は,道府県等からの提案のうち「中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関」や「官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関」に係る提案,「現在地から移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案」については受け付けないものとしているが,消費者庁,国民生活センター,消費者委員会の地方移転は,受け付けられない提案の典型である。
すなわち,消費者庁は,食品偽装問題や中国産冷凍餃子への毒物混入事件などの重大な消費者問題の発生を受け,従来の消費者行政が各省庁による縦割りであったことによる弊害が問題視された結果,消費者行政を一元化し,安全安心な市場の確保を図るため,政府全体の消費者行政を推進する司令塔の役割を担うべき機関として創設され,重大事故の発生時には,官邸と一体となった緊急対応を行うこととされたのである。現に,一連の偽装表示事案においては官房長官の下で,冷凍食品からの農薬検出事案においては担当大臣の下で,関係省庁と連携しその司令塔となって速やかに対応しているところである。
消費者問題は国民生活のあらゆる場面に関わることから,消費者庁は,政府全体の消費者行政にかかる消費者基本計画の策定,消費者被害防止のための消費者安全法に基づく他省庁が所管する法律の権限発動の働きかけ,所管法・所管大臣がない隙間事案への対応,新規立法や法改正の作業など,日常的にほぼ全ての政府関係機関と連携し一体となった業務を行っている。今後,消費者庁が地方移転することになれば,その業務の実効的な遂行は阻害されかねない。
また,国民生活センターは,全国の消費生活相談情報を集約・分析し,消費者庁と連携して,諸問題を検討して関連省庁に意見を述べ,地方消費者行政を支援し,消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行っている。これを切り離して地方移転することは,消費者行政全体の機能の低下をもたらすことになる。
さらに,消費者委員会は消費者庁等からの諮問事項を審議するほか,任意のテーマを調査して他省庁への建議等を行うという監視機能を有している。他省庁からの諮問を受ける場合も建議等の監視機能を行使する場合も,他省庁や関連事業者,事業者団体からの事情聴取や協議が頻繁に行われており,地方移転となれば他省庁との関係は希薄化し大幅な機能低下が懸念される。
以上,消費者庁,国民生活センター,消費者委員会は,いずれも,有識者会議の示す地方移転の提案を受け付けない機関の典型であり,これらの機関が地方に移転すれば我が国の消費者行政の推進を大きく阻害することは明らかであるから,当会は,これらの地方移転に強く反対するものである。
以上
 

面会室内での写真撮影等に関する会長声明

面会室内での写真撮影等に関する会長声明
 
面会室内での写真撮影等に関する会長声明
平成27年11月10日
長野県弁護士会
会長  髙 橋 聖 明

第1 意見の趣旨
刑事収容施設において,弁護人による写真撮影等について不当な制約がなされることのないよう強く要請する。

第2 意見の理由
1 接見交通権は,憲法第34条が保障する被疑者・被告人が弁護人から援助を受ける権利の中核であり,刑事手続上最も重要な権利である。このような権利が保障されてこそ,弁護人は,被告人等の刑事手続上の諸権利を実現すべく,被告人にとって,誠実にして最善の弁護活動をすることができ,ひいては,適正な刑事裁判が実現することができる。

2 弁護人が,東京拘置所で勾留中の被告人と面会室で接見していた際に,被告人の様子を写真撮影したところ,拘置所職員がこれを制止し,接見を中断させた事件があった。
この事件に関して,拘置所職員の行為が接見交通権や弁護活動の自由を侵害するとして国家賠償を求めたところ,平成26年11月7日,第一審の東京地方裁判所は,接見交通権の重要性から,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)第117条,第113条第1項1号ロ及び第2項に基づき弁護人の接見を中止することができるのは,具体的事情の下,未決拘禁者の逃亡・罪証隠滅のおそれ,その他の刑事施設の設置目的に反するおそれが生ずる相当の蓋然性があると認められる場合に限られるとして,拘置所職員による撮影制止・接見中止行為は違法であり,国家賠償を認める判決を言い渡した。

3 ところが,平成27年7月9日,その控訴審である東京高等裁判所第2民事部は,原判決を破棄し,請求を棄却するとの判決を言い渡した。
同判決は,まず,写真撮影等の禁止について,刑事訴訟法39条1項にいう「接見」は,「面会」と同義に解されること,刑事訴訟法が制定された昭和23年7月10日当時,カメラやビデオ等の撮影機器は普及しておらず,弁護人等が被告人を写真撮影したり動画撮影したりすることは想定されていなかったことなどを理由に,接見時の様子や結果を弁護人が音声や画像等に記録化することは「接見」には本来的に含まれないと判断した。
その上で,情報の記録化のための行為のうち,メモ以外の行為が許されるか否かは,記録化の目的及び必要性,その態様の相当性,立会人なくして行えることからくる危険性等の諸事情を考慮して検討されるべきであり,広範囲な制約が及ぶとしながら,メモ以外の情報の記録化をするためには,刑事訴訟法第179条の証拠保全を行えば足りるから,弁護活動を不当に制約することにならないとした。
そして,接見を中止させたことについては,「刑事施設の規律及び秩序を害する行為」(刑事収容施設法第117条,第113条第1項1号ロ及び第2項)があれば,弁護人の接見に対して,その行為の制止,面会の一時停止及び終了などの措置をとることができ,違法となるものではないとした。

4 周知のとおり,科学技術は飛躍的な発展を遂げており,市民の生活環境は大きく変化しているのであって,それに即した刑事訴訟法の解釈・適用がなされるべきであることはいうまでもない。しかるに,前記東京高裁判決は,あくまで刑事訴訟法制定当時の事情にこだわり接見交通権の内容を限定的に解釈するものであって,接見交通権が憲法に由来する権利であることを否定するに等しい。
接見時の写真撮影や録音録画は,弁護人のメモやスケッチに準じるものであることはもちろん,主観を差し挟む余地のない客観的な証拠の保全方法であることに鑑みれば,メモやスケッチ以上に重要な手段と位置づけることができる。
したがって,弁護人が弁護活動の一環として接見室内で写真撮影等を行うことは,具体的な事情の下において逃亡のおそれ等が生ずる相当の蓋然性がない限り,弁護人の弁護活動の一環として当然に認められるべきものである。

5 前記東京高裁判決を契機に,今後,刑事収容施設において,写真撮影等をすることが不当に制約され,弁護人の弁護活動に支障が生じ,ひいては,被疑者・被告人の防御権の保障が損なわれる結果となることが憂慮される。
そこで,当会は,刑事収容施設において,弁護人による写真撮影等について不当な制約がなされることのないよう強く要請するものである。
 
以 上
 

安全保障関連法案の採決強行に抗議する会長談話

安全保障関連法案の採決強行に抗議する会長談話
 
安全保障関連法案の採決強行に抗議する会長談話
平成27年9月25日
長野県弁護士会
                      会長  髙  橋  聖  明

9月19日、参議院本会議において、安全保障関連法案の採決が強行された。  
当会は、この間、再三、本法案の制定に強く反対することを表明してきた。同様に、国内全ての各地の弁護士会や日本弁護士連合会も反対の意見表明を行ってきた。
その主たる理由は、本法案が、第1に、「存立危機事態」の名のもとに集団的自衛権の行使を容認し、わが国が攻撃を受けていないにもかかわらず、自衛隊が海外で戦闘行為・武力行使を行いうるとしているからである。第2に、「重要影響事態」「国際平和支援」の名のもとに、自衛隊が世界中どこでも地理的制限なしに広範に米国軍その他の外国軍の「後方支援」を行うことができるようにするものであって、いかなる事態に対しても「切れ目のない」対応を可能にするとして、なし崩し的に自衛隊が戦闘行為に参加することを認めるものであり、自衛隊の武力行使や集団的自衛権行使への道を一層広げるものであるからである。これらは、いずれも憲法の定める恒久平和主義に反すると言わなければならない。
さらに、本法案の国会審議が始まってからは、衆議院憲法審査会における3名の参考人をはじめとする多くの憲法学者、歴代の内閣法制局長官、さらには元最高裁長官を含む最高裁判事経験者からも、本法案の違憲性が指摘されるに至った。
これに対し、国会において、政府による十分な説明がなされたとは到底言えない状況である。この間の世論調査によれば、国民の多数がこの法案に反対しており、また少なくともこの国会での成立には圧倒的多数が反対している。このことは、本法案に対する国民の理解が深まらなかったことを示している。
それにもかかわらず、国会での議席が多数であることに依拠し、本法律を成立させることは、国民の意思に反するものであって、「多数者の専制」とも言うべき暴挙と言わなければならない。
当会は、このように、十分な審議も尽くさないまま、参議院が採決を強行したことは、立憲民主主義国家として許されないことであるとの立場から、強く抗議するものである。
しかし、忘れてはならないことは、本法律は、可決成立したとしても、いずれも憲法違反であって、国の最高法規である憲法に反する法律、命令、条例、国務に関するその他の行為は、効力を有しない(日本国憲法98条)ということである。
今後、政府が本法律に基づく様々な措置を実行すれば、それらは全て憲法に反する無効な行為であり、国民に重大な人権侵害を生ぜしめるおそれがある。
日本国憲法の下で制定された弁護士法は、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」とし、その使命に基き、「誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」としている(弁護士法1条)。
当会は、この使命を果たすべく、本法律の条項の適用及び運用に反対し、さらに廃止に向けた取組を進めていくとともに、本法律の施行によって生ずるであろう人権侵害の救済の取組も行っていく決意を表明するものである。
                               以 上
 

特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書

特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書
 
特定商取引法に事前拒否者への勧誘禁止制度の導入を求める意見書
2015年(平成27年)8月8日
長野県弁護士会                  
会  長  髙  橋  聖  明

第1 意見の趣旨
特定商取引に関する法律を改正し、訪問販売及び電話勧誘販売について、事前拒否者への勧誘禁止制度(訪問販売について「Do−Not−Knock制度」、電話勧誘販売について「Do−not−Call制度」)を導入することを求める。

第2 意見の理由
1 現在、内閣府消費者委員会特定商取引法専門調査会では、特定商取引に関する法律(以下、「特定商取引法」という。)の改正へ向けた検討が行われており、訪問販売及び電話勧誘販売について、事前拒否者への勧誘を禁止する制度の是非が議論されている。

2 現行の特定商取引法では、訪問勧誘・電話勧誘を受けた消費者が、勧誘にかかる契約を締結しない意思表明をした場合に、継続した勧誘や再勧誘をする行為のみが禁止されている(特定商取引法第3条の2第2項、第17条。継続勧誘・再勧誘の禁止)。
他方、消費者が、例えば「訪問勧誘お断り」のステッカーを玄関ドア外側に貼るなどして、予め、包括的に勧誘を拒絶する意思を表示していても、このような行為は、前記勧誘にかかる契約を締結しない意思表明とは認められていない(消費者庁「特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針−再勧誘禁止規定に関する指針−」)。
すなわち、消費者は、現行法上、訪問勧誘・電話勧誘を事前に拒絶・回避する手段を有しておらず、事業者による突然の訪問や電話にその都度応答した上で、それぞれの事業者に対し、個別に拒否の意思を伝えなければならない現状にある。
しかし、これでは、望みもしない事業者からの勧誘に伴う迷惑自体を免れることができず、生活の平穏やプライバシーを十分に確保することができない。
また、いったん事業者による巧みな勧誘が開始されてしまうと、消費者の側でこれを拒絶することは容易でなく、消費者が不本意な契約や不当な契約を締結させられる事例も多発している。  

3 全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO−NET)のデータによれば、2008年の特定商取引法改正以降の相談件数は、訪問販売全体では近年やや減少傾向にあるが、家庭訪販については増加傾向にあり、電話勧誘販売についても増加傾向にある(内閣府消費者委員会特定商取引法専門調査会(第4回)における消費者庁からの配付資料「訪問販売・電話勧誘販売等の勧誘に関する問題についての検討」)。
さらに、60歳代以上の高齢者が契約当事者である相談の割合は、訪問販売で53.6%、電話勧誘販売で70.8%を占めており、店舗販売や通信販売と比較して、極めて高い割合を示している(国民生活センター「2013年度のPIO−NETにみる消費生活相談の概要」)。長野県内でも、同様の傾向である(長野県「平成26年度の消費生活相談の状況」)。
高齢者は、自宅にいる機会が多く、認知症等により判断力が低下している場合が少なくないところ、上記のデータは、そのような高齢者を狙って、不意打ち的な訪問勧誘・電話勧誘が広く行われている実態を表していると考えられる。
今後も、高齢者の独居あるいは夫婦のみの世帯が増加していくことが見込まれる中、現行の特定商取引法で定める継続勧誘・再勧誘の禁止の規制だけでは、訪問勧誘・電話勧誘による消費者被害の発生を十分に防止できないことは明らかである。

4 そもそも、事業者からの勧誘を受けるかどうかは、消費者の自己決定権の下に位置づけられるものである(「消費者基本計画」2015年3月24日閣議決定)。すなわち、事業者の営業活動において、「勧誘を望まない」という消費者の意思は当然尊重されなければならない。
とりわけ、近時の調査によれば、消費者の96%以上が訪問勧誘・電話勧誘を「全く受けたくない」と回答しているのである(消費者庁「消費者の訪問勧誘・電話勧誘・FAX勧誘に関する意識調査」2015年5月)。
このような現状をみれば、予め勧誘を拒否する意思を表明した消費者に対し、事業者があえて勧誘することを認める正当性・合理性はまったくないといわざるをえない。

5 以上より、現行の特定商取引法の規制だけでは、消費者被害の発生を十分に防止できず、また、消費者の生活の平穏等を確保することもできないことから、特定商取引法を改正し、事前拒否者への勧誘禁止制度を導入することが必要である。
具体的には、訪問販売については、訪問勧誘を望まない消費者が、勧誘を受ける意思がない旨を表示したステッカーを門戸に表示した場合には、事業者は勧誘を行ってはならないとする制度(Do−Not−Knock制度)を導入すべきである。
この点、事前拒否の方式については、ステッカー方式の他に、登録簿への登録による方式もあるが、既に多くの自治体においてステッカーを配布する取組が重ねられていること、登録簿の管理のためコストがかかることから、前者の方式によるべきである。
また、電話勧誘販売については、電話勧誘を受けたくない消費者が電話番号の登録を行い、登録者への電話勧誘を法的に禁止する制度(Do−not−Call制度)を導入すべきである。
この制度における事業者による登録者の確認方法については、事業者が保有していない情報を新たに取得することを防ぐため、いわゆるリスト洗浄方式(事業者が電話番号等のリストを登録機関に開示し、登録機関がそこに登録者の情報があるかを確認する方式)によるべきである。
これらの制度は、既に欧米各国、オーストラリア、韓国等の諸国で採用され、実績を上げているところであり、「Do−Not−Knock制度」に関しては、日本国内でも条例を設けている自治体があり、これに法律上の根拠を与え、全国に拡大する意味を有するものである。

6 これに対し、訪問販売及び電話勧誘販売を行う事業者から、「営業の自由」に対する過剰な制約であるとの反対意見が出されている。
しかし、営業の自由も、人が嫌がることを行うことを正当化するものではありえない。事前拒否者に対する勧誘は、住居等の管理権ないしは私生活の平穏を本人の意に反して侵害する行為に他ならず、「営業の自由」として保障される行為とはいえないものである。
また、事前拒否者への勧誘禁止制度は、営業活動についての時・場所・方法の規制にすぎない。すなわち、同制度の下であっても、事業者は、消費者から承諾を得た勧誘や、勧誘を拒絶してない者に対する勧誘を行うことはできるし、訪問・電話以外の方法による勧誘を行うこともできる。
さらに、電子メール広告については事前の同意がある場合のみ送信できるというオプト・イン方式を採用しているが(特定商取引法第12条の3、同第36条の3,同第54条の3、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第3条)、これと比較してもより緩やかであり、管理者の管理権や私生活の平穏を求める権利を保護するための最小限の規制といってよいものである。
したがって、事前拒否者への勧誘禁止制度は、営業の自由を過剰に制約するものではない。

7 以上のとおりであるから、当会は、特定商取引法を改正し、訪問販売及び電話勧誘販売について、事前拒否者への勧誘禁止制度を導入することを強く求める。

 
以 上
 

安全保障関連法案の衆議院採決に抗議し廃案を求める会長談話

安全保障関連法案の衆議院採決に抗議し廃案を求める会長談話
 
安全保障関連法案の衆議院採決に抗議し廃案を求める会長談話
平成27年8月8日
                     長野県弁護士会
                      会長  髙  橋  聖  明

1 衆議院安全保障特別委員会において、7月15日、安全保障関連法案が強行採決され、翌日、衆議院本会議においてもこれの採決がなされた。

2 当会は、この間、再三、安全保障関連法案の制定に強く反対することを表明してきた。
それは、この法案が、第1に、「存立危機事態」の名のもとに集団的自衛権の行使を容認し、わが国が攻撃を受けていないにもかかわらず、自衛隊が海外で戦闘行為・武力行使を行いうるとしているからである。第2に、「重要影響事態」「国際平和支援」の名のもとに、自衛隊が世界中どこでも地理的制限なしに広範に米国軍その他の外国軍の「後方支援」を行うことができるようにするものであって、いかなる事態に対しても「切れ目のない」対応を可能にするとの名のもとに、なし崩し的に自衛隊が戦闘行為に参加することを認めるものであり、自衛隊の武力行使や集団的自衛権行使への道を一層広げるものであると言わざるを得ないからである。
このような法案は、日本国憲法の定める恒久平和主義、立憲主義に反するものであるし、万一、これらの法案が可決成立したとしても、いずれも憲法違反であるとの評価は免れない。
憲法は、国の最高法規であり、その条規に反する法律、命令、条例、国務に関するその他の行為は、効力を有しない(日本国憲法98条)のであって、憲法に反する安全保障関連法案は、国会での多数決によっても正当化されるものではない。

3 さらに、この間の世論調査によれば、国民の多数がこの法案に反対しており、また少なくともこの国会での成立には圧倒的多数が反対している。それにもかかわらず、国会での議席が多数であることに依拠し、法案の成立を図ろうとすることは、国民の意思に反するものである。今回の強行採決や今後も議席の多数に依拠して法案の成立を図ろうとすることは、国民の意見を無視し、民主主義を根底から覆すものであり、「数の力」をふりかざした暴挙、民主主義に名を借りた専制と言わなければならない。

4 日本国憲法の下で制定された弁護士法は、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」とし、その使命に基き、「誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」としている(弁護士法1条)。
当会は、この使命を果たすべく、日本国憲法の掲げる、立憲主義、恒久平和主義、国民主権、そして基本的人権の尊重という基本理念を堅持し、戦争のない平和な社会を守るため全力で取り組むことを表明してきた。
この立場から、今回の、安全保障関連法案の衆議院採決に強く抗議するとともに、本法案の廃案を求めることを表明するものである。
                               以 上
 

「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」における罰則の強化等に反対する意見書

「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」における罰則の強化等に反対する意見書
 
「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」における罰則の強化等に反対する意見書
2015年8月8日
長野県弁護士会
会長  髙 橋 聖 明

第1 意見の趣旨

政府は,2015年3月6日,出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(以下「本改正案」という。)を国会に提出した。本改正案は,偽装滞在者対策の強化を目的として罰則の整備(第70条第1項第2号の2,第74条の6),在留資格取消事由の拡充(第22条の4第1項),退去強制事由に関する規定の整備等を内容とする。
1 偽装滞在者対策の強化を目的とする罰則の整備については,このような刑罰規定を導入しなければならない立法事実が存在しないこと,構成要件が曖昧であり濫用の危険及び萎縮効果があること,難民認定申請を萎縮させる危険があること,刑罰の謙抑主義に反すること,弁護士等の職務への不当な介入のおそれがあること等を理由に,当会はこれに反対する。
2 在留資格取消事由の拡充については,就労等の在留資格を有する外国人の地位を著しく不安定にするおそれがあることを理由に,当会はこれに反対する。

第2 意見の理由

1 偽装滞在者対策の強化を目的とする罰則の整備について
(1)改正案の内容
ア 本改正案第70条第1項第2号の2について
本改正案第70条第1項第2号の2は,「偽りその他不正の手段により,上陸の許可等を受けて本邦に上陸し,又は第4章第2節の規定による許可を受けた者 」について,「3年以下の懲役若しくは禁固若しくは300万円以下の罰金に処し,又はその懲役若しくは禁固及び罰金を併科する」としている。
イ 本改正案第74条の6について
本改正案第74条の6は,「営利の目的」で本改正案第70条第1項第2号の2に規定する行為の「実行を容易にした者」は,「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する」としている。
ウ 改正による影響
以上の法改正により,本改正案第70条第1項が規定する入管関係手続を行った者が同項によって処罰される場合,例えば資料を作成することに協力した親族や職場の上司等の関係者までも,その共同正犯や幇助犯等の共犯として訴追の対象となり得る。
職務として入管関係手続の申請代理を行っている弁護士や行政書士に対しては,さらに本改正案第74条の6により「営利目的」で「偽りその他不正の手段によ」る申請によって許可を受けることの「実行を容易にした」として,幇助犯よりも加重された刑罰規定の下での捜査及び訴追が及ぶことになりうる。
(2)刑罰規定を導入しなければならないだけの立法事実がない
政府は,本改正案を国会に提出する背景として,在留資格を不正に取得する者等(いわゆる偽装滞在者)が問題となり,偽装等の手口が悪質巧妙化していることが背景にあること,2014年12月10日に閣議決定した「『世界一安全な日本』創造戦略」が「不法滞在対策,偽装滞在者対策等の推進」を掲げ,不法滞在者及び偽装滞在者の積極的な摘発を図り,在留資格を取り消すなど厳格に対応していくと共に,これらを助長する集団密航,旅券等の偽変造,偽装結婚等に係る各種犯罪等について,取締りを強化するとしていることを挙げる。
しかし,不法残留者は,政府統計によると1993年の29万人強から2015年1月1日時点で約6万人にまで大幅に減少しており,新たに刑罰法規を導入して対処しなければならないような切迫した状況にあるとはいえない。
偽装滞在者についても,2013年末時点における中長期の外国人在留者は169万人であるのに対し,上陸と在留関係手続での不正行為を理由に在留資格を取り消された者の数は2013年中で200人弱にとどまり,新たに刑罰法規を導入して対処しなければならないような状況とはいえない。
密航については入管法第70条第1項第2号,偽造旅券の行使については偽造私文書等行使罪(刑法第161条),偽装結婚に対しては公正証書原本等不実記載罪(同法第157条)等現行法規で対処することが可能であり,申請事実の真実性の有無に関してまで刑罰の対象を拡大する必要性はない。
(3)構成要件が曖昧であり,濫用の危険及び萎縮効果が存在する
改正案の「偽りその他不正の手段により」という要件も曖昧である。
その結果,例えば申請書等の記載事項の真実性が証明できなかった場合や,申請書の所定欄への不記載の場合等も処罰の対象となり,入管当局において虚偽の申立であると判断した場合に申請者は在留資格の取消対象となるだけでなく,告発等によって捜査及び訴追の対象となることが想定される。
入管在留関係手続の記載事項や提出書類は多岐にわたり,申請者の出身国における職歴に関する証明書等海外で作成されたものも多い。出身国での過去の勤務内容の専門性,日本人などとの内縁関係の有無などの生活事実等評価を含む事実もある。このような実情をふまえれば,真実性の有無の判断が判断者により異なることも大いにあり得,濫用的な告発等によって,申請者だけでなく,その親族,雇用主,申請代理や取次を行う弁護士や行政書士,留学先の職員等多くの関係者も,共同正犯や幇助犯として捜査や訴追の対象となるおそれがある。
その結果,申請者本人やその関係者らに著しい不利益を及ぼし,また,多大な萎縮効果をもたらしかねず,出入国管理手続きの公正な運用が阻害される危険がある。
(4)難民認定申請を萎縮させる危険が存在する
ア 出身国で迫害を受け,あるいは迫害を受ける差し迫った危険から逃れるために日本を目指す難民認定申請者が,その出身国政府から正規の旅券を取得できないまま出国すること自体を非難することについては,人道上の見地からは困難である場合があり,難民申請という真の目的を出身国政府に告げて旅券を取得することを難民認定申請者に求めることは,非現実的な場合もありうる。
難民認定申請の実情を見ると,出身国での迫害から逃れてきた難民認定申請者は,生命や身体への差し迫った危険から逃れたいとの心情から,来日目的として観光や親族訪問などを入国審査官に告げて「短期滞在」等の在留資格で上陸許可を受け,その後支援者や弁護士などの援助を得て難民認定申請を行う場合が多い。かかる現状がある以上,難民認定申請者の行為を直ちに非難することはできない。
しかし,本改正案はこのような難民認定申請者についても,難民申請という真実の上陸目的を偽ったことを捉えて「偽りその他不正の手段により」上陸許可を得たとして刑罰が科され得ることになる。
イ 本改正案では,この刑罰の構成要件に該当する場合でも,難民であること等の証明があった場合は刑が免除されるとしているが,これは,前述の経緯で入国した難民認定申請者が難民と認定されなかった場合には直ちに処罰対象となりうることを意味する。
我が国の難民認定の実情が極めて抑制的である現状に鑑みれば(2014年の難民認定申請者数5000人に対し難民認定申請者数はわずか11名にとどまっている),刑の免除を受ける者は極めて限定されることになるし,難民該当性は否定されたものの,国際条約や人道的理由に基づいて在留が特別に許可される「補完的保護」を受けた者も処罰の対象とりうるという実質的に許容しがたい状況が発生することとなる。
このような罰則等の強化は,むしろ真に庇護を必要とする者に対して,難民認定申請を行うこと自体を躊躇させるという深刻な萎縮効果を生じさせかねない。
(5)刑罰の謙抑主義の原則に反する
政府は,罰則新設の目的を,偽りその他不正の手段によって在留資格を取得する者への対応であるとしている。
刑罰はその対象となる者に対する強い制裁であり大きな不利益を課すものであるから,その設定及び運用について謙抑的でなければならないのは,刑事法の要諦である。
前述のとおり,不法残留者の数が20年強の間に29万人強から約6万人にまで激減しているという現状からも,現行の行政処分や刑罰法規の外に新たな刑罰規定を導入してまで上陸関係や在留資格等の申請行為を規制すべき必要性はない。
真実に反する申請の排除は,そもそも入管当局が行う審査の正確性をより一層向上することによって解決すべき問題である。
以上のとおり,本改正案は刑罰の謙抑主義の原則にも反する。
(6)弁護士等の職務への不当な介入のおそれがある
本改正案では,申請者が罪に問われた場合,職務として申請行為を代理する弁護士や行政書士,親族,雇用主,留学先の職員等多数の関係者までも,その共同正犯や幇助犯等の共犯として訴追の対象となり得る。
さらに,職務として入管関係手続の申請代理を行っている弁護士や行政書士について,「営利目的」で偽りその他不正の手段による申請によって許可を受けることの「実行を容易にした」として,幇助犯よりも加重された刑罰規定の下での捜査及び訴追が及ぶことになる。
弁護士や行政書士が入管関係手続の申請代理を行う場合に故意に偽りの記載を行うことが許されないのは当然であり,正確な調査や立証に努めなければならない。
しかし,入管在留関係の申請書に記載すべき事項は多岐にわたり,申請者の出身国における職歴に関する証明書など海外で作成されたものも多い。行政機関による調査と異なり弁護士の調査には強制力がない以上限界があり,全ての事項についてその真実性を完全に調査しきれないまま申請を行うこともあり得る。このような場合にまで申請代理を行った弁護士や行政書士が「偽りその他不正の手段により」申請を行うことについて未必の故意があるとして訴追される危険がある。
本改正案には入管当局による弁護士や行政書士に対する告発濫用の防止規定がないから,弁護士や行政書士の職務行為に対する不当な介入がなされるおそれが大きい。

2 在留資格取消事由の拡充について
(1)本改正案第22条の4第1項は,入管法別表第一の就労等の在留資格を有する外国人の在留資格取消事由について,現行規定の「活動を継続して3か月以上行わないで在留している場合」に加え,所定の活動を行わず「他の活動を行い又は行おうとして在留している」場合も在留資格取消事由とする。
(2)このような在留資格取消範囲の拡大等は,就労等の在留資格を有する外国人の地位を著しく不安定にするおそれがある。この在留資格取消事由の拡充により,就労等の在留資格を有する者が,退職等によって所定の活動を行わなくなったとされた場合には,これまでのように一定の期間を経過することなく(例えば勤務先を退職し無職となった直後に,新たな勤務先を探す暇もなく),直ちに在留資格取消の対象となり得ることになる。さらに,実際に他の活動を行っている場合だけでなく「行おうとしている」と判断されたに過ぎない場合でも在留資格取消の対象となる。「行おうとしている」との要件は曖昧であるから,入管当局の主観による安易な判断によって在留資格取消の対象とされるおそれがある。
在留資格が予定する活動を行わない者については,在留期間更新許否の審査や,現行の規定に基づく在留資格取消制度を適切に運用することによって対応可能であり,上記のような弊害が生じるおそれがある取消範囲の拡大をあえて行うべきではない。

3 結論
以上のとおり,本改正案における上陸や在留資格関係の申請に関係する罰則等の強化は,日本に在留する外国人や外国人の入管関係手続に関わる多くの者に重大な影響を及ぼすのみならず,弁護士や行政書士の職務への不当な介入を招くおそれがある。
また在留資格の取消事由の拡張は,在留資格のある外国人の地位を著しく不安定にするおそれがある。
したがって,当会は,本改正案におけるこれらの規定に対して強く反対する。
以 上
 

安全保障関連法案に反対し,衆議院本会議における強行採決に抗議する声明

安全保障関連法案に反対し,衆議院本会議における強行採決に抗議する声明
 
安全保障関連法案に反対し,衆議院本会議における強行採決に抗議する声明

本日,衆議院本会議において,平和安全法制整備法案及び国際平和支援法案(以下併せて「安全保障関連法案」といいます。)の採決が与党単独で強行され,可決されました。
関東弁護士会連合会は,集団的自衛権の行使や海外での武力行使を容認する「安全保障関連法案」が,日本国憲法第9条等の定める恒久平和主義の内容を根本から改変してしまうものであり,立憲主義の基本理念,国民主権の基本原理に違反していることを繰り返し指摘し,反対してきました。
そして,関東弁護士会連合会と管内の13の弁護士会は,本年7月9日から8月8日までの1か月間,このような法案の廃案を求め,各地で一斉行動を実施しております。
本年6月4日の衆議院憲法審査会における与党推薦者を含む参考人3名の憲法学者が憲法違反と明言し,また,報道機関の世論調査においても,国会における政府の説明は不十分であり,今国会での成立に反対であるとの意見が多数を占めています。
にもかかわらず,本日,憲法に明白に違反する「安全保障関連法案」が,衆議院において採決が強行されたことは,世論調査にも示されている民意を踏みにじるものであり,到底容認できません。
よって,関東弁護士会連合会と管内の13の弁護士会の会長は,採決の強行に対し強く抗議するとともに,本法案が廃案となるよう,今後も引き続き,全力を挙げて一斉行動に取り組む所存です。

 
2015年(平成27年)7月16日
 
関東弁護士会連合会理事長 藤田 善六
伊藤 茂昭 (東京弁護士会会長)
三宅 弘(第二東京弁護士会会長)
石河 秀夫 (埼玉弁護士会会長)
木島千華夫(茨城県弁護士会会長)
橋爪  健 (群馬弁護士会会長)
關本 喜文(山梨県弁護士会会長)
平  哲也(新潟県弁護士会会長)
岡 正晶(第一東京弁護士会会長)
竹森 裕子 (横浜弁護士会会長)
山本 宏行(千葉県弁護士会会長)
若狭 昌稔(栃木県弁護士会会長)
大石 康智(静岡県弁護士会会長)
髙橋 聖明(長野県弁護士会会長)
 

少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明

少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明
 
少年法の適用年齢の引下げに反対する会長声明
 
2015年(平成27年)7月6日
長野県弁護士会会長  髙 橋 聖 明

自由民主党は,公職選挙法の選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正に伴い,「成年年齢に関する特命委員会」を設置し,少年法の適用対象年齢の引下げについて検討を始めた。

しかし,選挙権年齢と連動して少年法の適用年齢を引き下げる必然性はない。先般の公職選挙法の選挙権年齢の引き下げは,国民投票の投票権年齢に合わせたものであるが,国民投票の投票権年齢が18歳とされたのは,世界の多くの国が18歳以上の者に選挙権を与えていること,将来の日本を背負って立つ若い人々に参加してもらいたいという考え等からである。我が国の青少年の成熟度や自立状況等が増したという背景によるものではなく,選挙「権」を得たからといって,大人と同じように「責任」をとるべきと考えることは,短絡的である。少年法の適用対象年齢を引き下げて,刑事罰を受けるという義務を拡大するということであれば,きちんとした立法事実の検証をしなくてはならない。法律の適用年齢を考えるにあたっては,当該法律の立法趣旨と目的に照らし,個別具体的に検討すべきである。

少年刑法犯の検挙人員は,昭和58年と平成25年と比較すると3分の1以下に減少している。また,行為時18歳以上の少年の一般保護事件の件数は,平成15年と平成25年で比較すると,半分以上も減少している。殺人事件の検挙人員数をみても,昭和30年代には400人を超えていたが,平成25年には55人にまで減少している。これら減少率は,少年人口の減少率を遥かに上回っており,少年事件が増加している事実も,凶悪化している事実もない。
現行少年法の適用年齢は,20歳までの非行が,未だ心身の発達が十分でなく,少年のおかれた環境その他外部的条件の影響を受けやすいために起こるものであり,刑罰よりも,保護処分による方が適切である場合が極めて多いことを理由として設定された。そして,この考えは現在においても妥当するものであり,これを変更すべき合理的理由はない。
加えて,我が国では,精神的・社会的に未熟な若年者が増加しているという指摘すらなされている。
従って,少年法の適用年齢を引き下げるべき立法事実はない。

少年法の適用年齢の引下げの理由として,重大事件を犯した少年に対する処分が甘すぎるとの指摘がなされる。しかし,その指摘は誤解に基づくものであり,少年法の適用年齢の引下げの理由にはならない。すなわち,少年法は,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた重大事件に関し,原則として裁判員裁判を経て刑事罰を科すと規定している(少年法20条2項)。さらに,これらの少年に適用される刑についても,平成26年の少年法改正により重罰化されたばかりである。行為時18歳以上の少年に対しては,死刑判決すら選択しうるのである。
少年法のもとでは,全ての少年事件は家裁裁判所に送致され,必要に応じて,事件の背景や少年の育ってきた環境等について,家庭裁判所調査官及び少年鑑別所による科学的専門的調査が行われ,その調査結果を踏まえた適切な処遇が決定され,再犯防止を図っている。成人では比較的軽微とされ,実刑にならない事件であっても,少年であれば少年院送致となる場合があり,成人と比して厳しい場合も少なくない。

  少年法の適用年齢を引き下げた場合の弊害も無視できない。すなわち,現状で少年被疑者の40%以上を占める18歳から19歳の少年が少年法の対象から外れた場合,家庭裁判所調査官や少年鑑別所,付添人等の関与がなく,犯罪の背景・要因となった資質や環境上の問題点に関する調査・分析と,立ち直りのための環境調整や働きかけが行われないままに,多くの少年被疑者が,起訴猶予や罰金または執行猶予となって刑事手続を終了し,社会に戻ることになる。
刑事裁判で実刑判決となった場合でも,刑務所を出所した成人若年者が5年以内に再び刑務所に収容される割合が30%台半ばであるのに対し,少年法の適用を受けた少年院出院者が5年以内に再び少年院又は刑務所に収容される割合は20%台前半であるという近時の調査結果もあり,20歳未満という可塑性に満ちた少年に対する少年法に基づく教育的処遇は,再犯防止に高い効果を上げているといえる。
従って,少年法の適用年齢を引下げは,再犯のリスクを高め,社会の安全にとっても,深刻な悪影響をもたらすことが懸念される。
少年法の適用年齢を維持し,非行を犯した少年が健全な大人へと成長するようにすることが,少年にとっても,社会全体にとっても利益になる。

  以上のとおりであるから,当会は,少年法の適用年齢の引下げに強く反対するものである。
 
 

災害対策を理由とした「国家緊急権」の創設に反対する会長声明

災害対策を理由とした「国家緊急権」の創設に反対する会長声明
 
災害対策を理由とした「国家緊急権」の創設に反対する会長声明

災害対策を理由の一つとして,憲法改正による緊急事態条項すなわち「国家緊急権」の創設が超党派で議論されていると報道されている。
「国家緊急権」とは,戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など,平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において,国家の存立を維持するために,憲法秩序を一時停止して非常措置を取る権限とされている。自由民主党の憲法改正草案には,98条及び99条において緊急事態の宣言という名称で「国家緊急権」が明記されている。
しかしながら,国家緊急権は,行政府への権力集中と国民の人権の制限を図るものであるから,行政府による濫用の危険性が高く,国家権力を抑制して基本的人権を保障しようとする立憲主義を破壊する危険性を含んでいる。
災害対策についての現行法制は,内閣総理大臣は,国に重大な影響を及ぼすような異常かつ激甚な災害が発生した場合には,災害緊急事態を布告し(災害対策基本法105条),また,内閣は,国の経済の秩序を維持し,公共の福祉を確保するため緊急の必要がある場合において,国会が閉会中又は衆議院が解散中であり,かつ,臨時会の召集を決定し,又は参議院の緊急集会を求めてその措置をまついとまがないときは,生活必需物資等の授受の制限,価格統制,及び債務支払の延期等について必要な措置をとるため,政令を制定することができることとしている(同109条)。さらに,内閣総理大臣は,必要に応じて地方公共団体に指示をすることができるうえ(大規模地震対策特別措置法13条1項),警察庁長官を直接指揮監督して一時的に警察を統制することもできる(警察法72条)。また,防衛大臣が災害に際して部隊等を派遣することができる規定(自衛隊法83条)や,都道府県知事の強制権(災害救助法7条〜10条)及び市町村長の強制権(災害対策基本法59条,60条,63条〜65条)など,私人の権利を一定の範囲で制限する規定も設けられている。
このように,現行法制において緊急事態に対応するための制度は十分に整備されているのであり,立憲主義を脅かすような「国家緊急権」を新たに創設する必要性は認められない。
超党派で国家緊急権の議論を始めた理由として,東日本大震災における政府の初動の不備が挙げられているが,この原因は,国家緊急権の制度がなかったためではなく,既存の法制度に基づいて平時よりこれに対する準備を十分に行ってこなかったという防災・減災対策の不足である。東日本大震災の教訓は,自然災害に対する平時からの準備や対策を進めていくことに活かされるべきであって,「国家緊急権」を創設する理由とすべきではない。
以上,災害対策を理由として「国家緊急権」を創設することには理由がないことを確認するとともに,緊急事態の名の下に基本的人権を安易に制限する「国家緊急権」の創設に反対するものである。
2015(平成27)年7月4日
                                            長野県弁護士会 会長 髙 橋 聖 明

 
 

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の締結に反対する総会決議

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の締結に反対する総会決議
 
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の締結に反対する総会決議  

第1 決議の趣旨
当会は、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の締結に反対し、政府に対し、TPP交渉を直ちに打ち切ることを求める。

第2  決議の理由
1 TPPの締結は憲法上重大な疑義がある。
(1)TPPは、締結国間の貿易の拡大・多様化を進めるため、その障壁を除去し、サービス・貿易を円滑化すること、公平な投資機会を促進すること等を目的とする。ここを支配する理念は、自由競争至上主義である。
そのため、関税以外の方法により貿易等が阻害されるあらゆる法的規制、制度、慣行等を非関税障壁ととらえ、その除去を求められる。仮に、加盟国の事 情に応じ、一定の制約を認める場合であっても、予め、合意されることが求められ(ネガティブリスト条項)、その後、合意内容を後退させることは認められていない(ラチェット条項)。
この結果、TPPは経済的自由権に過大な保護を与えることとなり、日本国  憲法的価値観とは相いれない。日本国憲法は、経済的自由権について、健康や環境、弱者保護等の観点からの規制を認めているのであって、TPPはこの規  制権限を包括的に放棄するに等しくなり、憲法の定める国民の幸福追求権、生存権、その他の権利を阻害するおそれがある。

(2)現在政府によってすすめられているTPP交渉は、秘密保持契約を締結した上で行われており、TPP締結後も4年間は交渉原文、各国政府の提案、添付説明資料、交渉の内容に関するEメール等の情報を秘匿すべき秘密保持義務が課されている。そのため、国民及び国会がTPPに関し十分な情報を得ることができず、その内容の是非について議論することができなくなっている。この秘密保持条項の存在により十分な情報がないまま国会で審議することは国会の条約承認権を実質的に否定する結果となり、ひいては国民主権をも没却するものである。

2 ISDS条項は国家主権の放棄であること
ISDS(投資家対国家間の紛争解決)条項とは、投資家と投資先の国家間に紛争が発生し、6ヶ月以内に解決できない場合、投資の流れを強化することを目的として米国ニューヨークに設立された投資紛争解決国際センター(International Centre for Settlement of Investment Disputes)の仲裁人に解決を一任する制度であり、相手国又はその自治体は自国の裁判所に救済を求めることができず、上訴の手続きもない。
しかし、日本国憲法76条1項は「全て司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と定め、同条2項は「特別裁  判所はこれを設置することはできない。」と定めているのであって、司法権の包括的放棄を求めるISDS条項は憲法違反の誹りを免れないし、国家主権の放棄でもある。
ISDS条項は、非関税障壁とされるあらゆる法令制度、政策(補助金の交付等)、慣行を広く審理の対象とするものであり、その影響は国家ないし地方自治体の存立を脅かすものである。

3 TPPは、食の安全を脅かすことをはじめとし、次のような国民生活の様々な分野に悪影響を及ぼすおそれが高い。

(1)日本の制度・文化が変容をきたすおそれがある。
TPPは、健康や環境保護のための規制についても、規制側に、健康被害や環境破壊の危険について科学的な証明を要求する。すなわち、危険についての科学的な証明がなされなければ規制措置をとれないということである。しかし、安全と立証されたものでなければ口にしないのは、日本国民の大多数の心情であり、日本的文化である。EU諸国でも認められている予防原則、すなわち、健康や環境に重大で不可逆的な影響を与える場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする考え方が採られるべきである。
今回のTPPの最大の問題点は、関税の引き下げというよりも、非関税障壁撤廃による国の制度、文化の変容を来すおそれが高いという点にある。

(2)食品添加物と残留農薬問題が顕在化する。
食品添加物の内、指定添加物は、平成17年6月1日に361品目であったものが、平成27年2月20日現在446品目に増えている。既存添加物は、平成26年1月30日現在365品目であり、現在、日本で認められている食品添加物は666品目(香料を除く)であるところ、アメリカで使える食品添加物は1612品目(香料を除く)と倍近くあり、大手化学企業により化学合成の添加物が次々と開発されており、TPP加入により、この流れが加速され、無認可の添加物が日本に流入することとなる。
また、残留農薬基準は、各農作物を国民が平均的に食べる量(厚生労働省の国民栄養調査によるフードファクター)から農薬の推定摂取量を計算し、その農薬を一生涯に渡って仮に毎日摂取し続けたとしても、危害を及ぼさないと見なせる体重1kg当たりの許容1日摂取量を求めるとされているが、米を主食とする日本とアメリカでは食生活が大きく異なっており、同一の基準で規制することは馴染まないし、日本にとっては有害となる可能性がある。
さらに、現在日本では、収穫後(ポストハーベスト)に散布される農薬(防カビ剤、殺菌剤)は、食品の保存に使われることから食品添加物として表示義務を課しているところ、米国はこの規制の撤廃を求めており、TPP加入により現制度の撤廃を余儀なくされるおそれもある。

(3)遺伝子組換食品の表示撤廃に道を開くこと
 現在、遺伝子組換作物は、年々増加し、その耕作地に占める割合はISAAA報告書(2013)によれば、世界の耕地面積13億6255万ヘクタールの11%にあたる1億7530万ヘクタール、大豆の79%、トウモロコシの32%を占めるに至り、米国では、大豆ないしトウモロコシのそれぞれ耕地面積に占める遺伝子組換作物の作付割合が90%を超し、近時遺伝子組換作物の作付は中南米やインド等を含む27カ国に広がっている。
日本においては、食品安全基本法に基づき遺伝子組換食品の安全審査をしているが、平成27年3月26日までに安全審査の手続を経たとされる食品は300品種、添加物は18品目と近時急速に増加しており、日本に輸入される大豆ないしトウモロコシの半分以上は遺伝子組換作物であると推定される。
日本は、加工食品表示基準により、遺伝子組換食品についての表示義務が課されているが、米国は表示義務を課していないし、韓国と米国のFTAにおいて、韓国は表示義務を課さないことで合意しており、TPPにおいても、韓国同様、譲歩を迫られるおそれが高い。

(4)国民皆保険制度の崩壊のおそれ
日本では、医療は営利行為ではないとされ、薬価についても政府の認可制度を採用し、抑制的に運営されてきているが、TPPは、サービス面での制約を取り払うことを目的とし、医療をサービス分野にあたるとしていることから、医療の分野に営利性を持ち込む環境整備を求められると共に医療費を抑制する制度・運用は、非関税障壁とされて撤廃を求められることとなる。具体的には、ひとつの疾病の治療に保険診療と自由診療を混合する混合診療が解禁される可能性があり、そうなると、新しい治療薬又は治療法が開発された場合には、これを保険適用にする動きが鈍くなり、公的保険の質の低下を招き、日本が世界に誇るべき国民皆保険制度を崩壊させかねない。また、薬価の規制が緩和されれば、医療費は高騰し、国民の負担が増すことは容易に推測され、必要かつ適切な医療を公的保険でまかなえなくなり、その面でも国民皆保険制度を維持することができるか懸念される。米国では、高額な医療費が自殺原因の6割、自己破産原因の6割を占めているといわれる。

(5)雇用の流動化と共済制度への影響
日本の強固な解雇規制も非関税障壁と捉えられており、TPP加入により、商用ビジネスの名目での東南アジアから安い労働力の参入が始まるおそれがある。北米自由協定後、メキシコから米国に2000万人もの移民が流入し、米国では500万人の失業者が出たと伝えられている。
我が国の共済制度は、一般の市民、農業従事者や労働者らによる相互扶助の見地からの生命保険や損害賠償保険の制度であり、監督官庁による監督を受ける規制があるところ、TPPの見地からすれば、共済は保険業における非関税障壁であり、郵便局の簡易保険共々、ISDS条項による損害賠償請求の対象となりうるものである。

(6)地方公共団体の入札制度が変容を迫られる
長野県は、契約に関する条例(平成26年3月20日長野県条例第17号)を定め、同条例第3条(基本理念)第3項において、?地域における雇用の確保が図られること、?県産品の利用が図られること、?県内の中小企業者の受注機会の確保が図られること、?県民が安全で安心して暮らすことができるようにするための活動を行う事業者の育成に資すること、?事業者の有する専門的な技術の承継が図られること、?その他持続可能で活力ある地域社会の実現に資することになることに配慮しなければならないとし、この理念に沿う入札制度を構築し、運用している。しかし、この入札条件は、TPPの見地からすれば、自由競争を制限する非関税障壁であるから、入札条件の撤廃を求め、撤廃されない場合には、ISDS条項による損害賠償を請求されるおそれがあり、地方公共団体は入札制度の変容を余儀なくされることとなる。

(7)司法権のあり方や弁護士制度の改廃を迫られるおそれがある。
TPPは、24分野にわたる極めて広範囲な業務についての自由化協定であり、協定の方式がネガティブリスト方式のため、協定の中に規制を明定しない限り国や地方公共団体等の規制が働かないことになる。このため、前述の通り、日本国憲法76条1項、2項により、日本の司法権は最高裁判所及び裁判所法の定める下級裁判所に専属し、特別裁判所を設置することができないにもかかわらず、TPPに加入した場合には、ISDS条項により、外国企業が日本政府を相手取って、投資紛争解決国際センターに対し、損害賠償請求をすることを妨げることができないのみならず、弁護士法により単位弁護士会及び日本弁護士連合会への強制加入が義務付けられ、その反面として強固な自治権が認められている弁護士制度自体を非関税障壁とみなして、ISDS条項により外国弁護士法人などが多額の損害賠償を請求するおそれがあり、TPP加入により日本の司法権や弁護士制度の改廃を迫られることが危惧される。しかるに、司法権のあり方や弁護士制度について、どのような協議が行われているのかさえも国民及び我々弁護士に対し開示されていない。

4 結論
      TPPにまつわる問題は、何れも国家的課題であり、国民的議論の上、選択すべきであるのに、十分に情報が国民に開示されないまま、交渉が進められて行くのは国民主権の侵害である。近時、ようやくTPPの条文内容等が米国の国会議員に開示されたことから、日本にも漏れ伝わってきているが、本格的な検討が進んでいるとは言い難い。
こうした重大な問題について、マスコミを含め殆ど議論がなされていないというのは極めて深刻な事態であり、当会は、この点に警鐘を鳴らすべく、総会決議をするものである。

                       平成27年6月20日定期総会決議
                                            長野県弁護士会
 

労働時間規制を緩和する労働基準法等の改正に反対する会長声明

労働時間規制を緩和する労働基準法等の改正に反対する会長声明
 
労働時間規制を緩和する労働基準法等の改正に反対する会長声明

1(労働基準法等の一部を改正する法律案要綱の内容)
本年4月3日,政府は,特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設,現行企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大,現行フレックスタイム制の清算期間上限の見直しなどを内容とする労働基準法等の一部を改正する法律案要綱を閣議決定し,国会へ提出した。
この法律案要綱において示された内容は,我が国の労働現場において,長時間労働をより一層深刻化し,労働者の生活及び健康を害することが懸念されるものである。
以下,法律案要綱の問題点を指摘する。

2(特定高度専門業務・成果型労働制の問題点)
法律案要綱は,特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)を創設することとしている。 この制度は,一定の範囲に属する労働者(対象労働者)に対し,労働基準法第4章で定める労働時間,休憩,休日及び深夜の割増賃金などに関する規定を適用しないとするものである。
労働基準法(第4章)は,長時間労働を抑止し,労働者の生命・健康を保持する目的で,使用者に対し,法定労働時間を超えて労働させることを禁止し,休憩,休日を与えることを義務付け,例外的に法定労働時間を超えて労働させる場合には,割増賃金を支払うことを義務付けるなどしている。
特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の対象労働者は,労働基準法が定めた,長時間労働を抑止するための規定が適用されないのであるから,対象労働者の長時間労働が助長されることとなる。
政府は,この制度を時間でなく成果で評価される労働形態の創設としているが,この制度は対象労働者について成果型賃金を採用することを要件とはしていない。現行法においても成果型賃金制度を採用することは可能である。
この制度によって,残業代が支払われることなく長時間労働を強いられるとういう弊害だけが残る。
また,この制度の対象となる業務の範囲が曖昧であるため,対象業務の範囲が拡大解釈されるおそれは強い。収入要件を設けて,対象労働者を限定することとしているが,労働時間規制は,労働者の健康の確保をもその趣旨とする以上,高収入を得ているからといって,労働時間規制の適用を除外してよいということにはならないし,要件が「厚生労働省令で定める」とされているため,この制度導入後,法律の改正によらず,政令の改正という民主的統制の及びにくい手段により,適用対象となる労働者の範囲を拡大することも容易である。いったんこのような制度が導入されると,今後,経済界からの要請によって,際限なく適用範囲が拡大していくおそれが高い。

3(裁量労働制の対象業務追加の問題点)
法律案要綱は,企画業務型裁量労働制の対象業務として,新たに,企画型業務を管理するとともに実施状況を評価する業務と,法人顧客に対して企画型業務の成果を活用した商品の営業を行う業務を追加するとしている。
新たに追加される対象業務の範囲は曖昧であり,管理業務や営業業務が広範囲にわたって対象業務に含まれることになりかねない。
結局,法律案要綱における裁量労働制の対象業務の追加によって,特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の対象労働者とならない労働者が広く,割増賃金等の規制の対象外となり,長時間労働を促進し,労働者の生命・健康を害することになる。

4(フレックスタイム制の清算期間上限の緩和の問題点)
法律案要綱は,フレックスタイム制における,清算期間の上限を現行の1か月から3か月に緩和した上で,1か月ごとに区分した各期間ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間まで労働させることができることとされている。
しかし,これはまさに週40時間の法定労働時間規制を緩和するものであり,かつ,清算期間の上限緩和は,一般に長時間労働をもたらすものである。

5(まとめ)
当会は,これまで労働条件の低下を招く法律改正に反対してきた。
本年3月13日に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。この改正法律案は,平成26年に廃案となった改正法律案を一部修正したものであるが,当会は,平成26年4月5日付けの会長声明で,廃案となった改正法律案に反対している。
一般労働者の年間実労働時間が2000時間を超えるとされる我が国において,労働者の生命,健康,ワークライフバランスの保持の観点から,長時間労働の抑止は喫緊の課題である。仕事と生活を調和させ健康で充実して働き続けることのできる社会の実現を目指して,平成26年11月1日より,過労死等防止対策推進法が施行されているところである。
今回の法律案要綱に基づく労働基準法等の改正は,現在以上の長時間労働を招来することとなり制定されて間もない過労死等防止対策推進法の理念にも真っ向から反するものであるばかりでなく,本件3月13日に国会に提出された改正法律案に続き,さらなる労働条件の低下を招くものであり,到底容認できない。
よって,当会は,労働時間規制を緩和する労働基準法等の改正に強く反対するものである。

 
2015(平成27)年5月27日         
長野県弁護士会 会長 髙橋 聖明
 

憲法記念日に当たっての会長談話

憲法記念日に当たっての会長談話
 
憲法記念日に当たっての会長談話
                         平成27年5月3日
                     長野県弁護士会                           
                      会長  髙  橋  聖  明

1 本日,日本国憲法が施行されて68年目の憲法記念日を迎えた。
しかし,今年の憲法記念日は,日本国憲法の意義が否定されかねない危機的状況のなかで迎えることとなった。その最大の理由は,昨年7月1日に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定がなされ,これを受けて,現在開会中の通常国会に安全保障関連法案が上程される予定であることにある。

2 まず,昨年7月1日の閣議決定は,立憲主義,恒久平和主義,国民主権に反するものである。
日本国憲法は,先の大戦の甚大な犠牲の反省に立ち,「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」(日本国憲法前文),恒久平和主義を採用した。そして,恒久平和主義を掲げ,国の交戦権を否定する日本国憲法の下では,他国のために戦争に参加することを意味する集団的自衛権の行使が認められないことは,当然の帰結である。
日本国憲法の当然の帰結であり,政府自身も長年従ってきた解釈を,国民的議論もないまま突如として変更することが許容されるのであれば,政府自らの都合でいかようにも憲法解釈をし得ることになり,国家権力の縛りとしての憲法の意義はなくなってしまう。昨年の閣議決定は,立憲主義,そして国民主権を真っ向から否定するものである。
憲法は,国の最高法規であり,その条規に反する法律,命令,条例,国務に関するその他の行為は,効力を有しない(日本国憲法98条)。したがって,憲法に反する集団的自衛権の行使容認は,閣議決定はもとより,国会での多数決によっても正当化されるものではない。
以上の見地から,当会は,昨年度も,集団的自衛権を容認することへの反対の意思表明を再三行った上,この問題の重要性を訴えるため街頭活動を行い,憲法シンポジウムを開催した。これらは,いずれも法律家集団として,時の政府の判断により,国の最高法規である憲法がいかようにも解釈されることを看過することはできないという強い危機感に基づくものであった。

3 さらに,現在国会に上程が予定されている安全保障関連法案の内容は,この間の与党協議の結果などから見ると,集団的自衛権の行使を容認する内容に加え,そこに至らないとされる場合であっても,自衛隊が世界中どこでも地理的制限なしに,広範に他国軍の後方支援を行うことができるようにするものであり,その場合,戦闘地域であっても現に戦闘行為が行われていなければ一定の活動ができる内容とされている。そのほかにも,自衛隊の海外での活動の制約を緩和し,武器使用についても現在の制限を緩和する方向性も指摘されている。
このような法案の成立は,いかなる事態に対しても「切れ目のない」対応を可能にするとの名のもとに,なし崩し的に自衛隊が戦闘行為に参加することを認めるものであり,自衛隊の武力行使や集団的自衛権行使への道を一層広げるものである。
このような法案が,日本国憲法の定める恒久平和主義,立憲主義に反するものであることは,前述したとおりであり,万一,これらの法案が可決成立したとしても,いずれも憲法違反であるとの評価は免れない。
当会は,このような安全保障関連法案の制定に強く反対するものである。

4 今年は戦後70年の節目の年でもある。
戦後,日本国憲法の下で制定された弁護士法は,「弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。」とし,その使命に基き,「誠実にその職務を行い,社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」としている(弁護士法1条)。
その使命を果たそうとするとき,われわれ弁護士は,日本国憲法の掲げる,立憲主義,恒久平和主義,国民主権,そして基本的人権の尊重という基本理念の重要性,そして弁護士に負託された使命の重さを痛感するものである。
今,われわれは,平和の恩恵を受けて生活している。しかし,過去に悲惨な戦争の歴史があったこと,そして日本国憲法に込められた崇高な理想を決して忘れてはならない。
当会は,弁護士の使命を果たすため,これからも日本国憲法の基本理念を堅持し,戦争のない平和な社会を守るための取組に全力を尽くす所存である。
                               以 上
 

商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明
 
商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明
2015年(平成27年)3月14日
長野県弁護士会                      
会  長   田  下  佳  代

1 経済産業省及び農林水産省は,2015年(平成27年)1月23日,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下,本省令という。)を定めた。
本省令は当初の公表案を若干修正し,同規則第102条の2を改正して,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,顧客が65歳未満で一定の年収若しくは資産を有する者である場合に,顧客の理解度を確認するなどの要件を満たした場合を例外とする規定を,不招請勧誘(顧客の要請によらない訪問,電話勧誘)の禁止の例外として盛り込んだものである。

2 しかし,上記の要件を満たすかどうかの顧客の適合性の確認は勧誘行為の一環においてなされるものであるから,年齢や年収・資産の確認を口実に,不招請の顧客に対する電話・訪問が可能となり,事実上不招請勧誘を解禁するものである。本省令は,不招請勧誘禁止規制を,それよりも緩やかな別の勧誘規制(年齢・所得資産要件等の確認義務付け)で置き換えているにすぎず,法律の委任の範囲を超える違法なものであり,省令によって,法律の規定を骨抜きにするものと言わざるを得ない。本省令は,透明かつ公正な市場を育成し委託者保護を図るべき監督官庁の立場と相容れないものである。
さらに,委託者に年収や資産の確認の方法として申告書面を差し入れさせたり,書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法は,いずれも,現在も多くの商品先物取引業者が事実上同様の手法を採っており,その中で業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり,正答を教授するなどの潜脱行為により,被害が生じていることからすると,これらの手法が委託者保護のために機能するものとは評価できない。
そもそも,商品先物取引法における不招請勧誘を禁止する規定は,長年,同取引による深刻な被害が発生し,度重なる行為規制強化の下でもなおトラブルが解消しなかったため,与野党一致の下,2009年(平成21年)7月に法改正の上,導入された経緯がある(2011年1月施行)。しかし,その後においても,個人顧客に対し,金の現物取引やスマートCX取引(損失限定取引)を勧誘して接点を持つや,すぐさま通常の先物取引を勧誘し,多額の損失を与える被害が少なからず発生している実情がある。

3 商品先物取引法における不招請勧誘禁止規定の緩和には,日本弁護士連合会,その他多くの弁護士会等から強い反対意見が表明されてきた。当会においても,2014年(平成26年)4月5日付けで公表及び意見募集がなされた商品先物取引法施行規則案に対し,同年4月25日付け会長声明において,これに反対する意見を表明してきた。 
本省令は上記の立法経緯及び被害実態を軽視し,商品先物取引の不招請勧誘を事実  上解禁するものであり,消費者保護の観点から許容できない。
当会は,本省令の制定に強く抗議し,本省令の廃案を求める。
以上
 

本年の日本国憲法を巡る状況を振り返る会長談話

本年の日本国憲法を巡る状況を振り返る会長談話
 
              本年の日本国憲法を巡る状況を振り返る会長談話
                         平成26年12月25日
                     長野県弁護士会                  
                      会長  田  下  佳  代
1 本年は,日本国憲法を巡る状況が著しく変化した年であった。

2 7月1日に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定がなされた。
この閣議決定は,立憲主義,恒久平和主義,国民主権に反するものである。恒久平和主義を掲げ,国の交戦権を否定する日本国憲法の下では,他国のために戦争に参加することを意味する集団的自衛権の行使は認められない。日本国憲法の当然の帰結であり,政府自身も長年従ってきた解釈を,国民的議論もないまま突如として変更することが許容されるのであれば,政府は自らの都合でいかようにも憲法解釈をし得ることになり,国家権力の縛りとしての憲法の意義はなくなってしまう。今回の閣議決定は,立憲主義,そして国民主権を否定するものと言わざるを得ない。
憲法は,国の最高法規であり,その条規に反する法律,命令,条例,国務に関するその他の行為は,効力を有しない(日本国憲法98条)。したがって,憲法に反する集団的自衛権の行使容認は,閣議決定はもとより,国会での多数決によっても正当化されるものではない。
以上の見地から,当会は,集団的自衛権を容認することへの反対の意思表明を本年3回(5月3日,6月5日,7月7日)行った上,この問題の重要性を訴えるため街頭活動を2回(8月7日,11月4日)行った。さらに,この問題に関する国民的議論をすべく,憲法シンポジウムを本年2回(4月27日,12月14日)開催した。これは,集団的自衛権の行使容認が,単なる「政策判断」の問題ではなく,日本国憲法の基本原理に反し,その手法が近代立憲主義を否定するものであって,法律家集団として看過することはできないという強い危機感に基づくものである。

3 12月10日には特定秘密の保護に関する法律(特定秘密保護法)が施行された。
特定秘密保護法は,行政機関が,外交・防衛等に関する情報のうち特に秘匿することを必要とする情報について,「特定秘密」と指定し,故意の漏えい行為のみならず,過失による漏えい,漏えいの未遂,漏えい行為の遂行の教唆,共謀,扇動等の行為を禁止し,その違反に対しては最高で懲役10年の刑罰を科すというものである。
当会は,これまでも3回(平成25年10月22日,同年11月29日,同年12月16日)に亘り特定秘密保護法に反対する会長声明を発表し,その中で?国民の知る権利が侵害されること,?国民の知る権利を支える報道・取材の自由を侵害すること,?特定秘密の範囲が広範かつ不明確であり,政府の恣意的な運用が可能となっていること,?特定秘密を判断する実効性のある第三者機関が設けられていないこと,?処罰規定が広範,過剰,不明確であり,刑罰法規の明確性を求める罪刑法定主義にも反すること,?適性評価制度が対象者のプライバシーを過度に侵害したり,思想信条に踏み込んだ調査がなされる危険性のあること等の問題点を指摘してきた。しかし,特定秘密保護法の施行に先立って閣議決定された特定秘密保護法施行令及び運用基準によっても,これらの問題点は全く解消されていない。そして,このような問題点を抱える特定秘密保護法が施行されたことにより,国民は自らの政治決定に必要な情報へアクセスすることが困難となることは明らかである。特定秘密保護法は,速やかに廃止されるべきである。

4 日本国憲法は,「すべて国民が,個人として尊重される」こと(日本国憲法13条)を究極の価値としている。その価値はたとえ多数者であっても奪えないものであり,その価値の実現のために,憲法は,権力者を拘束し,国家権力の濫用を防止している。そして,国民が自ら正しい意思決定を行うために必要な情報へアクセスした上で,自由な言論活動によって政治的意思決定に参加することを予定している。
先の大戦で,我が国は焦土と化し,300万人を越える国民が犠牲になった。この反省に立ち,憲法は,「わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し,政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」(日本国憲法前文)恒久平和主義を採用した。戦後約70年を経て,戦争を経験した世代が少なくなり,我が国を取り巻く安全保障環境が変化し,世界各地でいまだに紛争の絶えない今こそ,国民一人ひとりが,憲法の持つ意味を問い直さなくてはならない。
しかし,集団的自衛権の行使を容認する閣議決定と特定秘密保護法の施行は,日本国憲法が予定している国家の在り方を否定するものである。主権者である国民に必要な情報が全く知らされないまま,戦争に進むのではないかという危惧さえ禁じ得ない。このように日本国憲法を巡る状況が著しく変化していることを当会は強く懸念している。
  弁護士は,「基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とし,その使命に基き,誠実にその職務を行い,社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力すること」とされている(弁護士法1条)。いうまでもなく,戦争は最大の人権侵害である。当会は,弁護士の使命を果たすため,これからも戦争のない平和な社会を守るための取り組みに全力を尽くす所存である。
                                                                  以 上
 

東京入国管理局における被収容者死亡事件に関する会長声明

東京入国管理局における被収容者死亡事件に関する会長声明
 
東京入国管理局における被収容者死亡事件に関する会長声明
2014年12月17日
長野県弁護士会
会 長 田 下 佳 代

1 声明の趣旨
法務省入国管理局及び東京入国管理局に対し,2014年11月22日に東京入国管理局収容所において発生した被収容者1名の死亡事件に関する第三者機関による原因究明のための速やかな調査の実施と調査内容の公表,調査結果を踏まえた再発防止策の速やかな導入を求める。

2 声明の理由
2014年11月22日,東京都港区所在の東京入国管理局収容所において,収容されていたスリランカ国籍の57歳の男性が死亡した。
報道によると,この男性は11月12日に観光目的で来日したものの所持金が少ないとの理由で入国許可が下りずに収容されていた男性で,死亡した同月22日の朝に激しい胸の痛みを訴えたにもかかわらず,東京入国管理局は土曜日で医師が不在であるとの理由で医師の診察を受けさせず,重篤な状態ではないと判断して緊急搬送せずに一般の部屋から単独の部屋に移し職員が様子を確認するという対応をしただけであり,その後この男性は同日午後1時頃に単独の部屋において意識不明の状態で発見され,緊急搬送された病院で死亡が確認された。
入国管理局の収容施設では,同年3月,茨城県牛久市所在の入国者収容所東日本入国管理センターにおいて外国籍の被収容者2名が相次いで死亡する事件が起きた。当会は,同年6月7日付で,法務省入国管理局及び入国者収容所東日本入国管理センターに対し,原因究明のための調査の実施と調査内容の公表,調査結果を踏まえた再発防止策の導入を求める会長声明を発表した。
法務省は,2件の死亡事件が発生してから8か月経過した同年11月20日,常勤の医師の不在などが原因であったことを認め,常勤の医師を確保すること,それが不可能な場合は非常勤の医師や民間の医師の速やかな判断を仰ぐことなどの処遇改善の方針を示した。
今回の死亡事件は,この法務省の新たな方針が示された直後に発生したものであるが,同方針の発表の有無に関わらず,緊急搬送して民間の医師の診察を受けさせるなどの適切な措置を速やかに執ることが可能であった事案である。先進国を標榜する我が国においてこのような死亡事件が今年に入ってから相次いで3件も発生したことは極めて遺憾であり,法務省入国管理局が被収容者の生命を軽視しているという批判を免れることはできない。
当会が同年6月7日付の会長声明で示したように,医師の診察の機会と適切な医療措置を被収容者に与え,被収容者の健康を保つのは入国者収容所長及び地方入国管理局長の責務である(被収容者処遇規則第30条第1項)。法務省入国管理局の収容施設における医療体制は明らかに恒常的な問題を抱えており,また,今回の事件において東京入国管理局長がその責務を果たさなかったことは明らかである。
今後も同様な事件が発生することを防ぐためにも,入国者収容所等視察委員会あるいはこれと別の独立した第三者機関による徹底的な調査及び検証を行い,再発防止のための措置を緊急に講じる必要がある。法務省入国管理局及び東京入国管理局は,第三者機関による調査及び検証作業に対して積極的に協力しなければならない。
当会は,法務省入国管理局及び東京入国管理局に対し,原因究明のための第三者機関による徹底的な調査及び検証の実施とその結果の公表,調査・検証結果を踏まえた再発防止策の速やかな導入を求める。
以 上
 

「カジノ解禁推進法案」に反対する会長声明

「カジノ解禁推進法案」に反対する会長声明
 
「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に反対する会長声明
平成26年11月8日                                           
長野県弁護士会    
会長 田 下 佳 代

当会は,「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に対して,反対の立場を表明し,同法案の廃案を求める。

1 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁推進法案」、以下「本法案」という。)は,カジノ施設を含む特定複合観光施設が,「観光及び地域経済の発展に寄与するとともに,財政の改善に資するものである」として,かかる施設の推進を「総合的かつ集中的に行うことを目的」とし(第1条),一定の条件のもと民間業者がその設置運営をすることを認めるというものである。
そもそもカジノは,刑法第185条及び第186条が犯罪として禁じている賭博に該当する。同条が賭博を禁じている趣旨は,健全な勤労意欲の喪失,犯罪の誘発,国民経済に対する重大な支障が生じるなどの弊害を防止することにある。
しかし,本法案は,かかる弊害について十分な検討がなされておらず,同条の趣旨を没却するものであり,到底容認できない。
以下,本法案の問題点を具体的に述べる。

2(1)ギャンブル依存症及び多重債務問題の悪化
破産法第252条1項4号は,「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ,又は過大な債務を負担したこと」を免責不許可事由としている。これはまさに賭博行為をした者が著しくその財産を減少させ,又は多額の債務を負担する可能性が高いことを表しているものである。治療が難しいとされるギャンブル依存症はようやく国民一般の間にその症名の認知が進んできたが,それでもなお賭博で負けた者が射幸心に煽られ借入をしてまで資金をつぎこみ,多重債務等の金銭トラブルを抱え,健康で文化的な社会生活を破壊する可能性があることは我々の日常業務においてもしばしば見かけるものである。
カジノという賭博の選択肢が増えることは,このような多重債務者ないしギャンブル依存症の者にとってはより依存を深め,そうではなかった者には依存症になる機会を与えるものであって,いずれにしてもこれまでの多重債務問題に対する対策に逆行するものである。
(2)暴力団の資金源の提供
現在においてもいわゆる闇カジノが摘発されることはしばしば耳にするところであるが,カジノに慣れ親しむ国民が増えれば,一定割合でギャンブル依存症ないしその素因を持つ者がうまれるため,特定複合観光施設の外においても闇カジノの需要が高まることは想像に難くない。
平成25年版犯罪白書によると,「暴力団構成員等の検挙人員総数に占める比率は,全体では6.8%であり,罪名別に見ると,一般刑法犯では,賭博,逮捕監禁,恐喝で高く,特別法犯では,競馬法違反,自転車競技法違反,覚せい剤取締法違反で高い。」とされる。すなわち,現在においてさえ暴力団の資金源として利用される賭博行為を排除できていないのである。本法案による運営主体となる民間業者から暴力団を排除したとしても,特定複合観光施設の外における無許可違法営業カジノの需要と市場を完全に抑え込むことができないことは明らかであり,カジノに慣れ親しむ国民を増やすことは,暴力団に対しみすみす新たな資金源獲得のための機会と市場を与えるに等しい愚策である。
(3)青少年への悪影響
本法案が念頭に置いている複合観光施設は,レクリエーション施設等と一体になったいわゆる統合リゾート方式であるため,青少年が家族でのレクリエーションの中でカジノに触れる機会がある。そうなると,青少年は賭博に対する抵抗感なく成長することになり,健全育成という観点から大いに問題がある。
(4)民間企業の設置・運営によることの問題
仮にカジノを解禁するのであれば,上記の意味で,既に存在する公営ギャンブル以上に十分な対策が必要である。しかし,民間企業がカジノの設置・運営主体となれば,目先の利益追求に走りかねず,賭博の弊害対策を自主的積極的に行うことを期待することは困難である。

3 カジノ解禁の目的は「観光及び地域経済の振興に寄与」するとか「財政の改善に資する」という,いわば経済効果を狙ったものとされる。
しかし,既に述べてきた賭博の弊害ないし悪影響は,いずれも国民生活上軽視できない重大なものであり,かえって国民経済に重大な障害を与える恐れすらあるのである。多重債務問題や暴力団排除については,歴史的にもこれまで官民一体となってその予防や規制に取り組み,徐々に成果を上げてきたにもかかわらず,本法案は,これまでの成果を無にする危険性を大いに孕んでいる。上記弊害ないし悪影響によって国民生活や国民経済を破壊してまで得られる経済効果に価値はないと言わざるをえない。
なお,超党派の国会議員でつくる「国際観光産業振興議員連盟」は,国籍を問わない形で一定の入場制限規定を設けるよう政府に求めることで一致したとの報道がなされている。これは,ギャンブル依存症や多重債務者が増加するとの懸念を払拭することを狙いとするものと考えられるが,かかる一定の入場制限規定を設けたとしても,上述した暴力団の資金源の提供に繋がるとの問題,民間企業の設置・運営によることの問題については,何ら解消されるものではなく,到底,本法案を正当化する理由にはならないことは明らかである。

4 長野県は,公営ギャンブル施設のない数少ない県のひとつである。その決断と不断の努力は,いまなお県民を種々の弊害から守る盾となっている。本法案は,かかる長野県が行ってきた努力を無にするものである。

よって,当会は,本法案に反対し,廃案を強く求めるものである。
 

司法試験予備試験の受験資格制限に反対する会長声明

司法試験予備試験の受験資格制限に反対する会長声明
 
            司法試験予備試験の受験資格制限に反対する会長声明   
                           平成26年9月13日
                                          長野県弁護士会           
                        会長 田  下  佳  代
 
1 近年、司法試験予備試験(以下、「予備試験」という。)の志願者が増加の一途を辿り、平成26年の志願者は1万2622人となり、前年より1割以上増えて過去最多となった。その反面、法科大学院の志願者及び入学者は激減しており、平成26年の志願者は過去最低の1万1450人にとどまり、ピーク時の6分の1にまで減少し、平成26年度の入学者は2272人で平成16年度の4割以下にまで減少しており、法曹志願者の法科大学院離れが顕著になっている。
そのため、現在、法曹養成制度改革顧問会議において、予備試験の受験資格として、資力が乏しいことや社会人経験を要件とする案、一定年齢以上であることを要件とする案、法科大学院在学者を外す案が対応方策として検討されている。

2 しかし、そもそも法科大学院志願者の激減は、法科大学院を中核とした法曹養成制度が、法科大学院課程を修了するために相当な費用と時間の負担を強いられる上,司法試験合格者の急激な増加に伴う弁護士の激増こそが原因であり、予備試験の存在自体が問題なのではない。すなわち、司法試験合格者の急増は、弁護士の激増と弁護士間の過当競争を生じさせ、弁護士の経済的基盤を脆弱化させている。その結果、法曹志願者が司法修習を修了しても既存の法律事務所に就職することが困難となり、いきなり独立開業をするかどうかといった選択を迫られるなど、司法試験合格後に苦難に遭遇する事態を招いており、そのことがまさに法曹離れに拍車を掛けているのである。

3 長野県弁護士会は、平成22年11月20日の臨時総会において、「当会は、政府に対し、司法試験合格者を年間3000人程度とする政策について直ちに見直し、司法試験合格者数を段階的に削減し、弁護士人口が4万人に達した以降、これを維持するため、司法試験合格者数年間1000人程度とする法律制度の運用を求める」との決議を行った。また、翌23年8月6日には、「現行の法曹養成制度は、新司法試験合格率の低迷、これに伴う法科大学院志願者数の激減、司法修習修了者の厳しい就職難、等々の問題に直面し、制度設計における欠陥を露呈させている」ため、「現行法曹養成制度の早期かつ抜本的な改革が必要である」との問題認識を踏まえ、「大学の学部の中にロースクールを組み込むこと」(履修期間は2年を想定)を骨子とする新たな法曹養成制度を提言する意見書を公表した。これら決議ないし提言は,上記2で指摘したとおりの問題意識を背景とするものであるところ,その後現在に至るまでに何ら状況改善の兆しは見られない。当会は,上記提言内容が実現されることによって,点による選抜という旧司法試験制度の難点を克服し、費用と時間の負担という現行制度の難点も軽減しようと考えたものであるが,当会の提言内容をおくとしても、現行の法科大学院を中核とする法曹養成制度には、既に指摘した大きな欠陥が存在するほか、地方の法科大学院の学生募集停止という事態が相次いでおり、未来の法曹界を支えるべき法曹志願者の激減という極めて深刻な事態を生み出し、法曹界そのものが危機に瀕しているといっても過言ではない。

4 こうした現状認識を踏まえるならば、予備試験志願者は、未来の法曹界を支える法曹志願者の一角を占める貴重な一群である。予備試験志願者には,経済的事情、育児や介護を担わなければならないといった家庭の状況、自宅からの通学圏内に法科大学院がないという居住環境等から法科大学院への進学が事実上閉ざされている者も相当数存在するものと考えられ,これを排斥する発想は、資力の多寡、家庭状況、居住地域等に偏ることなく多様な人材を吸収すべき法曹界の未来像を破壊するに等しい。また、現実にも平成25年度の予備試験合格者の本試験合格率は71.9%で、法科大学院修了者の本試験合格率の25.8%を遙かに上回っており、前記のとおり本年は予備試験志願者数が法科大学院志願者数を上回っているのであるから、優秀な志願者や人権擁護を使命とする法曹を目指す意欲ある志願者を確保する意味でもその受験資格を制限すべきではない。予備試験の制限はさらなる法曹志願者の減少を招来することが確実であり、多様な人材を吸収すべき法曹界にとっての自殺行為であるというべきである。しかも、平成23年の法科大学院の標準年限修了者割合は68.7%であり、いまや法科大学院のみでは、法曹制度維持の責務を担えなくなっているという実情を直視するべきである。
現在の法科大学院を中核とする法曹養成制度は,特に費用負担の点で,先に指摘した弁護士の過剰供給による法曹資格取得後の法律事務所への就職難,経済的不安とあいまって,法曹への道を希望する有為な人材に法科大学院への入学を躊躇させ,法曹を目指す者への門戸を閉ざしかねないという重大な弊害を有している。これは,当該人材のみならず国家的な損失である。
以上の点に鑑みれば,予備試験が有している,多様で優秀な人材のすくい上げという社会的機能を直視すべきであり、当会は、司法試験予備試験の受験資格制限に強く反対する。
                                  以 上
 

司法予算の大幅増額を求める会長声明

司法予算の大幅増額を求める会長声明
 
司法予算の大幅増額を求める会長声明
平成26年9月13日
 
長野県弁護士会   
会長 田 下 佳 代

1 平成13年に出された司法制度改革審議会意見書は、この司法制度改革を実現するために、裁判所等の人的物的体制を充実させ、司法に対する財政面の十分な手当が不可欠であるとし、政府に対して、必要な財政上の措置について、特段の配慮を求めた。ところが、その後の司法予算(裁判所予算)は、裁判員裁判対策の点を除けば減少を続け、国家予算に占める割合は概ね0.3%台で推移している。平成26年度予算は約122億円の増額となっているが、給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円を含んだものであるから、実質的には約49億円の減額である。
     このような政府の措置は、意見書が求めた財政上の特段の配慮を、政府が怠ってきたことであり、国民の裁判を受ける権利(憲法32条)を実質化する責務を果たしてこなかったと評されるものである。政府が、「安全安心な社会」を目指すのであれば、国民の身近にあって、利用しやすく、頼もしい司法を全国各地で実現すべく司法予算の増大を図らなければならない。
2 近年、家事事件は一貫して増加し、調停事件は多様化、複雑化が進み、面会交流事件でも難しい事件が増加している。成年後見事件の激増は誰の目にも明らかである。裁判官や書記官は本来自ら行うべき申立内容の確認や後見業務の打合せなどを参与員に依頼するなど、多忙を極めている。裁判官及び書記官、職員などの人的側面、調停室等の増設や支部、出張所の新設など物的側面について抜本的強化が必要である。家庭裁判所関連の予算については、飛躍的な拡充が必要不可欠である。
3 一方で、家庭裁判所以外の裁判所等の予算が減少に転じていることも問題である。なるほど、消費者金融事件・破産事件の減少等によって、地方裁判所などの取扱事件数は減少している。しかしながら、元々裁判官の勤務の過酷さは異常な状態であり、事件数の減少があったとしても、その異常さが解消されるほどまでには至っていない。その為に、過払い金返還請求事件など定型の訴訟を除き、審理時間は逆に長期化しているものもある。また、書記官や職員への権限の大幅委譲がなされているため、書記官・職員の繁忙さは増加の一途となっている。地方裁判所等の予算について現在も大幅な増加が必要な状態は変わっていないのである。各地で強い要望が上がっている労働審判を実施できる支部の拡大など、国民の強い要望のある基盤の整備を必要とする点も少なくない。
4 国家財政が悪化している現状においては、司法予算を大幅に増加することは難しいとの意見がある。しかし、もともと、司法予算があまりにも小さかったため、司法の使い勝手が悪く、その改善を図るべく、小さな司法から大きな司法を目指し、司法制度改革審議会意見書の提言がなされたのである。国家財政の増減にかかわらず司法予算の増加を図らなければならないはずである。最高裁判所においても、限られた予算の範囲でやりくりするのではなく、今よりはるかに多い司法予算が必要であることを社会に向かって大きく訴えるべきである。
5 とりわけ長野県においては、県土が南北に広く、県民の居住する地域によって当該地域住民が利用すべき司法基盤に格差があってはならないにもかかわらず、それに見合うような裁判所の人的物的施設の整備は図られてこなかった。むしろそれに逆行するかのように、平成2年に長野地家裁飯山支部、木曾福島支部、大町支部が統廃合され、家裁出張所を残すのみとなった。それだけではなく、労働事件を簡易迅速に解決することが可能な労働審判手続が長野市の長野地方裁判所本庁でしか実施されておらず、簡易裁判所で扱われた民事事件の控訴審や行政事件も長野地方裁判所本庁でしか実施されていない。また、家事事件が増加している現況にもかかわらず佐久支部には調査官が常駐しておらず、少年事件を取り扱うことができない。さらに、合議事件を扱うことができる支部が上田支部、松本支部、飯田支部に限られているばかりか、その上田支部には常駐の裁判官が2名、飯田支部には常駐の裁判官が1名しかおらず、合議事件を取り扱うためには、他の支部から裁判官が出張してこなければならないなど県内における司法基盤の格差は現在もなんら解消されることはない。
かかる現状に鑑み、当会は平成24年6月の定期総会において「地域司法の充実を求める総会決議」を採択し、当会の働きかけによって長野県議会及び中南信の全市町村議会において「長野地方裁判所各支部における労働審判事件の取り扱いの開始を求める意見書」が採択された。しかし、裁判所は「予算が不足している」等の理由から地域司法の充実を望む市民の声を十分に反映できていないのが現状であり、地域司法の充実には、司法予算の大幅増額が必要不可欠である。
6 既に平成27年度予算の概算要求がなされたが、最高裁判所の概算要求額は約3177億にすぎず、大幅な増額がなされていないばかりか、民事事件関係経費及び刑事事件関係経費は、前年を下回っている状況である。最高裁判所においては、大幅な司法予算の増額を要求すべきであり、財務省あるいは政府においては、それを受けて大幅な司法予算の増加を認めるべきである。
 

集団的自衛権を容認する閣議決定がなされたことに抗議する会長声明

集団的自衛権を容認する閣議決定がなされたことに抗議する会長声明
 
集団的自衛権を容認する閣議決定がなされたことに抗議する会長声明
                         平成26年7月7日
長野県弁護士会                       
会長 田  下  佳  代

7月1日、政府は、ついに集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行うという暴挙に出た。
集団的自衛権の行使容認は、日本が武力攻撃をされていないにもかかわらず、他国のために戦争をすることを意味し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものであり、憲法9条を空洞化するものである。
これまで、政府は、憲法9条により集団的自衛権の行使は認められないことを長年にわたって繰り返し確認してきた。これは、憲法9条の解釈として、当然の論理的帰結である。集団的自衛権の行使を容認することは、憲法9条2項が禁止する「交戦権の行使」に当たることは明白であり、憲法解釈として許されない。
今回の閣議決定は、「集団的自衛権の行使は認められない」という憲法9条の当然の帰結であり、政府自身も従ってきた解釈を、国民的議論もないまま突如として変更したものである。このようなことが許容されるのであれば、政府は自らの都合でいかようにも憲法解釈をし得ることになるから、国家権力の縛りとしての憲法の意義はなくなってしまうものであり、立憲主義を完全に否定するものである。

政府は、「憲法前文で確認している『国民の平和的生存権』や憲法第13条が『生命自由及び幸福追求に対する国民の権利』は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されない。」とし、「我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況を踏まえれば、今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。」とした上、集団的自衛権を行使することも、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至ったとしている。しかし、憲法は、第2次世界大戦で多くの犠牲を出したことの反省に立ち、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、」「恒久の平和を念願」(憲法前文)して制定されたものであり、このことからすると、他国のために戦争に参加することに道を拓く集団的自衛権を行使することが憲法9条の解釈として許容されないことは当然のことである。平和的生存権は、憲法9条の戦力の不保持と交戦権の否定を前提とし、国際協調の下で国民が平和を享受することを保障するものであるし、憲法13条も、恒久平和の下で、国民が幸福追求や自己実現を図ることを保障するものであるから、これらの規定が存在することを根拠に、集団的自衛権を容認することは、論理矛盾であって、憲法を冒涜するものであり、さらには、国政の権威が由来する国民を愚弄するものである。

当会は、憲法9条を空洞化し、立憲主義を否定する今回の閣議決定に強く抗議し、これを直ちに撤回するよう政府に求めるとともに、集団的自衛権行使容認に向けた法改正に断固反対し、このような不当な閣議決定に基づく法改正がなされないよう国会に求めるものである。

 

法務省東日本入国管理センターにおける2件の被収容者死亡事件に関する会長声明

法務省東日本入国管理センターにおける2件の被収容者死亡事件に関する会長声明
 
法務省東日本入国管理センターにおける2件の被収容者死亡事件に関する会長声明
 
平成26年6月7日
                       長野県弁護士会           
                       会長 田 下 佳 代
1 声明の趣旨
当会は,法務省入国管理局及び入国者収容所東日本管理センターに対し,平成26年3月29日,同月30日に発生した外国人被収容者2名の死亡事件に関する原因究明のための調査の実施と調査内容の公表,調査結果を踏まえた再発防止策の導入を強く求める。

2 声明の理由
(1)東日本入国管理センターにおいて,本年3月29日にイラン国籍の被収容者が,同月30日にはカメルーン国籍の被収容者が死亡するという事件が相次いで起こった。
同センターの発表によれば,イラン国籍の被収容者は,同月28日午後7時50分頃,食事中に喉を詰まらせて意識不明となり病院に救急搬送されたものの,翌29日午後3時26分,搬送先の病院で死亡した。カメルーン国籍の被収容者は,数日前から体調を崩していたが,同月30日午前7時頃,意識と呼吸がない状態で発見され病院に救急搬送されたものの,同日午前8時07分頃,搬送先の病院で死亡が確認された。
(2)被収容者処遇規則第30条第1項は「所長等(入国者収容所及び地方入国管理局長)は,被収容者がり病し,又は負傷したときは,医師の診療を受けさせ,病状により適当な措置を講じなければならない。」と規定しており,医師の診察の機会と適切な医療措置を被収容者に与え,被収容者の健康を保つことは入国者収容所長及び地方入国管理局長の責務である。
しかし,同センターを含む入国者収容所及び地方入国管理局(以下「入国者収容所等」という。)における医療体制が不十分であることは,既に繰り返し指摘され,深刻な懸念が示されてきた。
出入国管理及び難民認定法第61条の7の2により設置が義務づけられている入国者収容所等視察委員会は,同センターの医療体制の改善を求める意見を毎年表明している。
国連拷問禁止委員会は,日本政府に対し,平成19年5月,「多数の暴行の疑い,送還時の拘束具の違法使用,虐待,性的嫌がらせ,適切な医療へのアクセス欠如といった上陸防止施設及び入国管理局の収容センターでの処遇」についての懸念を表明している。
また,平成24年度関東弁護士会連合会シンポジウム大会宣言も「被収容者らは外部から遮断され拘禁反応に苦しみながら,満足な医療すら受けられていない。・・・中略・・・このような,人間の生存にかかわる深刻な問題は,直ちに解決されるべきである。」と,同センターを含む入国者収容所の医療体制を早急に是正することを求めていた。
(3)これら国内外からの指摘にもかかわらず,医療体制についての適切な整備・改善がなされない中で,極めて短い間に2名もの被収容者の尊い命が失われるという事態が発生したことに対し,同センター及びこれを所管する法務省入国管理局はこれまでのところ詳細な調査を実施したとは認められず,その結果を公表していない。
法務省は,速やかに適正な調査を実施し,亡くなった方々のご遺族に対し,事実の詳細な説明を行うなどの誠実な対応を行わなければならない。
また,二度とこのような事件が起こらないようにするため,これらの事件について,入国者収容所等視察委員会あるいはこれとは別の独立した第三者による徹底的な原因究明のための調査を行い,調査結果を速やかに公表するとともに,調査結果を踏まえた再発防止措置を緊急に講じる必要がある。
以 上
 

「安保法制懇」報告書を受けて発表された「基本的方向性」に対する会長声明

「安保法制懇」報告書を受けて発表された「基本的方向性」に対する会長声明
 

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書を受けて発表された「基本的方向性」に対する会長声明

                                           平成26年6月5日

                                                                         長野県弁護士会

                     会 長  田  下  佳  代
 

 平成26年5月15日,首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「安保法制懇」という)が報告書を提出した。
 これを受けて同日,首相は今後の検討に関する「基本的方向性」を発表した。その中で,首相は,「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときは,限定的に集団的自衛権を行使することは許される」という考え方については,今後さらに研究を進めていきたいとし,その上で「憲法解釈の変更が必要と判断されれば」閣議決定を行うとした。
 集団的自衛権は,「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を,自国が攻撃されていない場合にも,実力をもって阻止する権利」であり,日本が攻撃されていないにもかかわらず,実力をもって他国(同盟国等)への武力攻撃を阻止しようとするものである。これはほかでもなく,日本が他国のために戦争に参加することを意味する。集団的自衛権の行使を容認することは,たとえ限定的なものであったとしても,日本国憲法の基本原則である恒久平和主義に基づく,「戦争をしない平和国家である日本」という国のあり方を根本から変えることになる。
このような憲法の基本原則に関わる重大な解釈の変更を,時の政権の判断のみで行うことが許されるとすれば,国家権力の恣意的判断により憲法の内容をいかようにも解釈できることになり,憲法により国家権力を制限することで人権保障を図るという立憲主義が根底から覆されることになるのであって,これを認めることは絶対にできない。
 また,「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるときは,限定的に集団的自衛権を行使することは許される」という考え方は,事実上無限定に,武力行使を認めることになるおそれが強いものである。なぜなら,「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」という概念自体,極めて曖昧である上、それを判断するのが時の政府であることからすると,いかようにも解釈される危険性をはらむためである。ひとたび集団的自衛権の行使が憲法上許されると解釈されれば,それは,事実上無限定に集団的自衛権を認めるに等しい結果を招くおそれがある。
 さらに,首相は,集団的自衛権の行使を認めることにより,「抑止力が高まり,我が国が戦争に巻き込まれることがなくなる。」としている。しかし,我が国は,第二次世界大戦終戦後,約70年間に亘り,一度として戦争の主体になっていない。一方,集団的自衛権の行使を認めた場合には,被攻撃国たる「自国と密接な関係にある外国」には戦争の主体となっている国が含まれるのであるから,その国に対する武力攻撃を実力で阻止する行動に出た場合,日本が戦争に巻き込まれるおそれは従前より格段に高まることは明らかである。そして,集団的自衛権の行使を認めた場合,実際に武力行使をするために戦地に赴くのは,まさに,「私たちの子どもや孫たち」であるかもしれないことを自覚しなければならない。首相は,「日本を取り巻く安全保障環境の大きな変化」を踏まえ,「いかなる事態においても国民の命と暮らしを守るために何をなすべきか」を考えなければならないとするが,そのような安全保障環境の大きな変化があるのであれば,なおのこと,「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」(日本国憲法前文)ために,何が正しい選択であるのか,過去の歴史に学び,国民の叡智を結集して真剣に考えなければならない。
 既に,当会は,昨年11月30日に開催された臨時総会において,「集団的自衛権行使の容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する総会決議」を行っているところである。
 当会は,この立場から,改めて,政府の憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を容認することに強く反対するものである。
 

 

商品先物取引における不招請勧誘禁止規制の緩和に反対する会長声明

商品先物取引における不招請勧誘禁止規制の緩和に反対する会長声明
 

商品先物取引における不招請勧誘禁止規制の緩和に反対する会長声明

 

2014年(平成26年)4月25日

                                                                       長野県弁護士会    

会 長  田 下 佳 代

1 経済産業省及び農林水産省は,本年4月5日,商品先物取引法施行規則の改正案(以下,本改正案という。)を公表し,意見募集を開始した。
本改正案は,同規則第102条の2を改正して,新たに,熟慮期間等を設定した契約の勧誘(?顧客が70歳未満であることを確認すること,?基本契約から7日間を経過し,かつ,取引金額が証拠金の額を上回るおそれのあること等についての顧客の理解度を確認した場合に限る。)を,不招請勧誘(顧客の要請によらない訪問,電話勧誘)の禁止(商品先物取引法第214条第9号)の適用除外とする内容を含むものである。
2 そもそも,商品先物取引は商品先物取引業者が,取引適合性がなく取引を希望していない消費者に対して,電話や訪問により勧誘を行い,取引に引き込んで,深刻な被害を多数生じさせてきた歴史がある。商品先物取引における不招請勧誘禁止規制は,そのような被害の撲滅を図るために,2009年7月商品取引所法改正で導入されたものである(2011年1月施行)。
同法改正の際の国会審議においては,不招請勧誘禁止の対象範囲につき,「当面,一般個人を相手方とする全ての店頭取引及び初期の投資以上の損失が発生する可能性のある取引所取引を政令指定の対象とすること。さらに,施行後1年以内を目処に,規制の効果及び被害の実態等に照らして政令指定の対象を見直すものとし,必要に応じて,時機を失することなく一般個人を相手方とする取引全てに対象範囲を拡大すること。」との附帯決議が採択された。
3 しかるに,本改正案は,上記規制導入の経緯や附帯決議を軽視し,70歳未満の顧客に対しては,法が原則的に禁止する不招請勧誘を事実上解禁するに等しいものであって,到底容認することができないものである。
本改正案のような熟慮期間の設定は,そもそも熟慮期間中に顧客が取引の危険性に気づく機会は何ら与えられていないことから,結局,無差別的な訪問電話勧誘による基本契約締結後7日間は注文をとることが出来ないというだけの意味しか持たない。実際に,かつての「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」に類似規定が設けられていたが,顧客保護のために全く機能しなかったものである。
また,顧客の理解度確認についても,現行制度の下で既に行われてきたことである。それにもかかわらず被害が絶えなかったのであるから,被害防止のために有効な手段とはいえない。
4 産業構造審議会商品先物取引分科会は,2012年8月21日付で,「将来において,不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として,実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ,不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」との報告をまとめた。
しかるに,現在も,個人顧客に対し,金の現物取引やスマートCX取引(損失限定取引)を勧誘して顧客との接点を持つや,すぐさま通常の先物取引を勧誘し,多額の損失を与えるなど,不招請勧誘禁止規制の潜脱事例が相当数報告されており,上記分科会のいう見直しを検討する前提を欠く状況にある。
5 本改正案は,透明かつ公正な市場を育成し,委託者保護を図るべき監督官庁の立場と相容れないものである上,「委託者等の保護に欠け,又は取引の公正を害するおそれのない行為」(商品先物取引法第214条第9号括弧書き)とする法律の委任の範囲を超え,施行規則によって法律の規定を骨抜きにするものといわざるを得ない。
内閣府消費者委員会も,本年4月8日付意見において,本改正案が,「消費者保護の観点から見て,重大な危険をはらむものであることに鑑み,かかる動向を看過することができず,深く憂慮し,その再考を求める」としている。
6 当会は,2013年11月25日,「改正金融商品取引法施行令に商品先物取引に関する市場デリバティブを加え,商品先物取引についての不招請勧誘禁止を維持することを求める会長声明」を公表し,総合取引所において取り扱う商品先物取引について不招請勧誘禁止規制が維持されるよう求めてきたところである。
よって,当会は,上記会長声明と同様,消費者保護の観点から,商品先物取引における不招請勧誘禁止規制を厳格に維持すべく,同規制を大幅に緩和する本改正案には,強く反対する。

以 上

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集団的自衛権行使容認の動きが強まる中で迎えた憲法記念日に当たっての会長談話

集団的自衛権行使容認の動きが強まる中で迎えた憲法記念日に当たっての会長談話
 

集団的自衛権行使容認の動きが強まる中で迎えた憲法記念日に当たっての会長談話

                                 平成26年5月3日

                    長野県弁護士会

                     会 長  田  下  佳  代

本日,日本国憲法が施行されてから67年目の憲法記念日を迎えた。

しかし,日本国憲法を巡る状況は,極めて危機的なものと言わざるを得ない。すなわち,日本国憲法9条に関して,閣議決定での解釈変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする動きが,急速に強まっているからである。

日本国憲法9条は,戦争の放棄と軍備及び交戦権の否認を明確に定めるところ,その日本国憲法9条の下で集団的自衛権の行使は認められないという政府見解は,歴代内閣が国会答弁等で繰り返し述べてきたところであり,長年にわたり国家のあり方を形成し,確立された憲法解釈である。

ところが,現在の動きは,この確立された憲法解釈を,時の一内閣の閣議決定によって,全く変えてしまおうというものである。

この動きは,日本国憲法の基本原則の一つである恒久平和主義をないがしろにするものであるとともに,憲法により国家権力を制限し人権保障を図ることを目的とする立憲主義にも真っ向から反するものであって,到底許されるものではない。

当会は,この立場から,昨年11月30日に開催された臨時総会において,「集団的自衛権行使の容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する総会決議」を行っているところである。

さらに,最近の報道によれば,上記解釈変更の正当性の根拠として,「砂川事件」における最高裁判決(最高裁判所昭和34年12月16日大法廷判決)が取り上げられているという。しかし,これは全く理由のない,牽強付会ともいうべき議論である。すなわち,前記砂川事件判決は,日米安保条約及びこれに基づく政府の行為が合憲か否かの憲法判断を回避した判決であるに過ぎない上,そもそも同事件においては,日本が集団的自衛権を行使できるか否かについては全く争点になっていなかったものである。そして,政府自身,この判決の後も,前述した集団的自衛権の行使は認められないとする政府見解を繰り返し述べてきたものである。

当会及び日本弁護士連合会は,これまで再三,日本国憲法が平和と基本的人権保障にとって積極的役割を果たしてきたことを表明してきた。今年の憲法記念日に当たって,当会は,改めてこのことを強く主張するものである。

 そして,当会は,憲法が最高法規として国家権力を制限する立憲主義の意義も改めて訴えるものであり,政府がかかる立憲主義の意義を理解した行動をとることを強く求めるものである。

 

 

 

淫行処罰条例の制定に反対する意見書の提出について

淫行処罰条例の制定に反対する意見書の提出について
 
長野県は,平成25年5月31日に「子どもを性被害等から守る専門委員会」(以下,「専門委員会」という。)を設置し,淫行処罰規定を盛り込んだ条例(以下,「淫行処罰条例」という。)の制定を含め,子どもを性被害から守る施策を検討しています。
当会は,平成25年7月16日淫行処罰条例の制定に反対する会長声明を発しましたが,専門委員会内に設置された法規制検討ワーキンググループ(以下,「法規制WG」という)が,淫行処罰条例の制定の必要性を前提に,上記会長声明に対し項目ごとに子細な反論を加えた「WG見解」を示すなど(第3回専門委員会資料2−2「検討項目に関する指摘について」),専門委員会において,淫行処罰条例の制定ありきの議論がなされているように見受けられました。
このような現状を踏まえ,当会は,平成25年12月14日,「子どもを性被害等から守る専門委員会」に対して「淫行処罰条例の制定に反対する意見書」を提出しました。

意見の趣旨は以下のとおりです。

1 県は,子どもを性被害から守るための施策として,淫行処罰条例を制定するべきでない。
2 専門委員会は,?子どもを性被害から守るための予防施策として,子どもの主体性を前提とした子どもに対する教育及び大人に対する啓発教育の推進,並びに?事後的救済のための施策として,被害を受けた子どもに対するケアを,重点的に検討すべきである。

意見の理由の総論は以下のとおりです。

(1)まず,本意見書にいう淫行処罰規定とは,東御市健全育成条例に定めるような広く青少年とのみだらな性行為又はわいせつな行為を禁止する規定(以下,「非限定的な淫行処罰規定」という。)のみならず,大阪府,山口県,千葉県等の青少年健全育成条例に定めるような威迫,欺罔,困惑等の手段に限定した規定(以下,「限定的な淫行処罰規定」という。)を含むものをいう。
(2)我が国においては,都道府県では1950年に岡山県で初めて有害図書規制条例が制定された後,現在に至るまで長野県を除く全ての都道府県が淫行処罰条例を制定している状況にある。そして,市町村で同様の条例を制定している自治体もあり,長野県では,東御市が有害図書と淫行の規制を内容とする「青少年健全育成条例」を制定し,長野市,佐久市,塩尻市などが有害図書を規制する条例を制定している。
長野県がこれまで淫行処罰条例を制定しなかった主な理由は,教育を単に行政に任せるのではなく,地域全体で支えていこうという県民意識が根付いていることが挙げられる。条例による規制ではなく,県民運動の展開,業界の自主規制,行政の啓発の3つを柱とした県民総ぐるみの運動により取り組んできたといえる。
また,長野県の公式見解によれば,青少年に有害な環境を条例により規制するという方法よりも,「青少年は地域社会から育む」という観点に立って,県民一人ひとりが自分自身の問題として受け止め,家庭,学校,地域,関係団体及び行政が一体となった運動を展開していくことが,青少年の健全育成にとってより効果が上がる適切な方法であるとされている(2005年「信州・フレッシュ目安箱」参照)。
(3)当会は,上記のとおり長野県が淫行処罰条例を必要としなかった県民意識や県民の取り組みは今でも根付いており,今後も変わらないと考える。また,後に述べるとおり,現状において淫行処罰条例を設ける十分な立法事実(県内に淫行処罰規定を設ける社会的な必要性)がないばかりか,淫行処罰規定には,刑罰法規の明確性の原則(不明確な処罰規定は国民の行動を不必要に委縮させるため,違法であるとの原則)や刑罰法規の謙抑性の原則(可能な限り国民の行動を制限する刑罰法規に頼るべきではないとの原則)に反する等の問題がある。
したがって,安易に淫行処罰条例によって子どもを性被害から守ろうとするのではなく,これまで進めてきた県民の取り組みを後押しする施策を充実化させるべきである。
(4)また,淫行処罰条例の制定は,本質的に子どもの性的自己決定権の尊重と相容れず,子どもに対する教育や大人に対する啓発教育の推進等と両立しないことも指摘せざるを得ない。
むしろ,日常的な子どもや大人に対する教育を充実させ,万一,子どもが性被害に遭った際には,既存の刑罰法規によって犯罪者の摘発をするとともに,被害児童のケアに対する施策を充実させるべきである。
(5)現在,専門委員会で行われている議論は,一部が非公開であり,議論の前提が淫行処罰条例の制定ありきであるかのように見受けられ,必ずしも広く県民の意見を聴き,県民全体の十分な議論を経ているとは言えない。
後述するとおり,子どもの施策に対する県民意識は高く,これまでの家庭,学校,地域等の県民の取り組みを踏まえて県民全体での十分な議論を巻き起こしていくべきである。

意見の理由の各論の要約は以下のとおりです。

1 新たに淫行処罰条例を設けるべきでないこと
(1)立法事実が十分でない
ア 刑罰法規に係る立法事実の検討は,特に厳格かつ慎重になされるべきである。
イ 現行法規で広く多角的な規制がなされている。
すなわち、児童に対し事実上の影響を及ぼして児童に性交等をさせることは児童福祉法違反(60条1項,34条1項6号)であり,児童等に対償を供与し,又は約束をして性交等をすることは児童買春・児童ポルノ禁止法違反である(4条,2条2項)。
その他,刑法,出会い系サイト規制法,風営適正化法,売春防止法,ストーカー規制法,軽犯罪法,長野県迷惑防止条例等によって,子どもに対する性犯罪は広く多角的に規制されている。
ウ 県内における性被害の発生状況からも,立法事実は不十分である。
・県内の児童買春案件は増加していない。
・県内の子ども性被害の検挙人員の増加は,淫行処罰規定の規制対象とは無関係の行為の増加によるものである。
・全国における検挙数965人は,現行規定で適用できるものも含まれている。
・隣接県における検挙数も,同様である。
・教職員による性犯罪事案は,児童福祉法などにより規範が与えられ,懲戒処分,マスコミ報道等の社会的制裁を受ける。刑罰法規とは別の方策が必要である。
・インターネット利用の犯罪については,情報教育が重要である。インターネットの特質と正しい使い方を理解しないままに使っていることが危険なのである。直接接触する場面の性行為そのものを規制するしかないというのは飛躍した発想である。
・東御市青少年健全育成条例違反の事案は,児童福祉法違反の適用の可能性がある。
エ 県民の多くが淫行処罰条例の制定を望んでいない    

(2)淫行処罰規定自体に重大な問題がある
ア 構成要件の明確性に反する
・単に「淫行又はわいせつな行為」を禁ずる非限定的な淫行処罰規定は,一般人からみて限定解釈は読みとれない。捜査機関は恋愛や人格的交流の有無を判断できず,真摯な恋愛に踏みこむおそれがある。濫用防止条項,運用規定があっても不明確な刑罰法規が存在すること自体が憲法違反である。
・対象行為を「専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて青少年に対し性行為等を行うこと」等に限定する淫行処罰規定(大阪府青少年健全育成条例等)についても,要件該当性の判断を明確かつ客観的に行いえない。男女関係のプロセスにおける言動には,客観的に誘惑・威迫・欺罔・困惑と明確に区別できない言動が伴う。性被害の結果を構成要件化することは極めて困難である。
イ 子どもの性的自己決定権の尊重の理念と相容れない
 ・一般人からみて限定解釈が読み取れない以上,淫行処罰規定は青少年の性的行為全般の禁止であり,子どもが性的事項を主体的に判断,決定することを否定するものである。子どもの一般的な恋愛を萎縮させるとともに,真摯な恋愛であった場合,子どもはなぜ恋愛相手が処罰されるのかを全く理解できず,精神的に傷付くことも予想される。
ウ 子どもに対する性教育及び大人に対する啓発教育の推進と両立しない
・子どもが性的事項を主体的に判断,決定することを否定するものであり,根本的に子どもや大人に対する性教育の推進と相容れない。

(3)刑罰法規の謙抑性に反する
・刑罰は最後の手段であり,淫行処罰規定を設けるためにはそれがどうしても必要との立法事実が不可欠である。刑罰による新たな規範形成の必要性がなくてはならず,被害発見のため,県民運動の促進のためでは理由にならない。淫行処罰規定は不明確,広範な規制であり,刑罰法規の断片性に反する。教職員の問題,インターネットの問題については,淫行処罰規定以外の代替手段があるから,刑罰の補充性にも反する。

(4)刑罰法規を過大評価すべきでない
・重い刑罰を課しても規範に反して罪を犯す者がいる。一般予防機能に過度な期待はできない。淫行処罰規定の一般予防効果も明らかではない。
・刑罰の特別予防機能としても,全て検挙,起訴,処罰されるものではないとの限界がある。県内の教職員による犯罪の事案は特別予防機能の限界の問題である。児童性愛者等に対する効果も疑問がある。

(5)現行規定の適用がない事案は,刑罰で規制すべきでない
・刑罰法規の謙抑性や罪刑法定主義,構成要件の明確性という基本原理からして重大な疑義がある。
・子どもの健全な性的な成長発達のためには,大人から威迫,欺罔,困惑があっても,あるいは,性的欲望を満足させるために近づいてくる大人がいたとしても,子どもが性的自己決定を主体的にできるような教育や支援を第一に優先すべきである。
・大人を仮に処罰したとしても,性被害を受けた子どものケアにはならない。
・教職員の場合は,懲戒処分により,教育現場から排除される。教職員と児童生徒という関係を超えて,性的関係という極めて私事に関する事項に対して倫理的道徳的な評価を構成要件にもちこむことは相当でない。
・淫行を広く処罰するような淫行処罰条例は刑罰の謙抑性や明確性から看過しがたい問題があり,他方,淫行を客観的かつ具体的に限定するような淫行処罰規定では実効性が伴わない。          

2 子どもを性被害から守るために必要な施策
(1)子どもに対する教育
・子ども自身に性について正しい知識と判断力を身につけさせることが重要である。性教育の充実やCAP教育といった子どもの主体性を認め,自己肯定感を向上させるための取り組みが求められる。

(2)大人に対する教育
・子どもを性被害から守ろう,子どもの性を大事にしようという啓発教育が必要である。子どもの性の実情や子どもを取り巻く状況についての正しい情報を提供し,子どもの性被害やその影響について周知し,子どもへの具体的な対応やサポートの方法を研修することが重要である。SNSやインターネットに関する情報教育も必要である。
・県民運動も効果的である。淫行処罰条例の代替として県民運動が展開されたという側面がある。

(3)被害を受けた子どもに対するケア
・子どもが信頼できるような相談窓口の設置,子どもに寄り添ってケアができる専門医の医師や臨床心理士の配置,二次被害を防ぐための司法面接の手法の導入が必要である。

3 立法過程における議論のあり方
・法規制WGの在り方など,はじめから法規制ありきともいえる立法手続は極めて問題である。専門委員会は広く県民の意見を聴き,県民全体で開かれた十分な議論をすべきである。
以 上

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「労働者派遣法等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明

「労働者派遣法等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明
 
「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」に反対する会長声明

1 はじめに
2014(平成26)年3月11日、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下、「改正法案」という。)が閣議決定された。
改正法案は本年の通常国会において上程され、成立に向けて審議が予定されている。
当会は、改正法案には次の3点において常用代替防止の観点から重大な問題があり、派遣労働者のみならず労働者全体の労働条件を低下させ、その地位を不安定にすることにつながるため、改正法案の成立に反対する。

2 ?期間制限の撤廃と派遣労働者の地位の不安定化
従前は、専門業務等からなるいわゆる法定26業務は期間制限がかからず、その他の業務には原則1年、例外3年というように期間制限がなされていた。改正法案は、これをすべての業務に共通する派遣労働者個人単位について3年の期間制限とし、派遣先の事業所単位には原則3年、例外的に更なる延長も可能とする。
従前の期間制限は、少なくとも専門業務以外の一般業務については、派遣業務を臨時的・一時的なものに制限する役割を不十分ながら果たしてきた。しかし、今般の改正法は、派遣労働者個人に対して3年の期間制限を課す一方、派遣先の事業所は労働組合等の意見聴取の手続をとることで派遣労働を継続して利用できるようになるが、労働組合等が反対しても意見聴取さえすれば継続して派遣労働を受け入れることができるものになっている。また、多くの事業所で労使自治すら形骸化している現状に照らすと、派遣先の事業所は、派遣労働者を入れ替えることで、派遣労働の受け入れ上限期間を際限なく更新できることになりかねず、派遣先にとっては常用代替を実質的に可能にするものであると同時に、派遣労働者個人にとっては3年で否応なく契約を切られるという、労働者としての地位を一方的に不安定にする制度である。

3 ?専門26業務の区分規制の撤廃
また、上記の点は、従前は専門26業務と一般業務とが区分され、不十分ながらも一般的・恒常的業務における常用代替防止が図られてきたが、改正法案はこの区別をも撤廃するものである。
これにより、あらゆる業務において、前項で述べたように、正規労働者から低賃金の派遣労働者への置き換えが可能となり、労働者全体の地位の不安定化を招くことになる。

4 ?雇用安定措置が極めて不十分であり派遣労働の固定化を招きかねないこと
さらに、改正法案は、派遣期間の上限に達した派遣労働者の雇用安定措置として、派遣先への直接雇用の申入れ、新たな派遣就業先の提供、又は派遣元での無期雇用等のいずれかの措置を派遣元が講じなければならないとする。
しかし、他の派遣先がない場合や、派遣元において無期雇用ができない場合など、派遣元がこれらの措置を講じない場合の私法的効力はなく、その実効性を担保できるものにはなっていない。

5 長野県の状況
派遣労働者数は、そのピークであった平成20年以降、全国的には一貫して減少傾向にあるが、長野県においては平成23年度以降、前年度比で増加に転じている。その数は長野労働局による統計によれば、平成24年6月時点で県内で2万8745人に上る。
他方、県内の派遣労働者の賃金は、特定労働者派遣事業(派遣会社の常時雇用労働者のみを労働者派遣の対象とする労働者派遣事業)で20.2%、一般労働者派遣事業(特定労働者派遣事業以外の労働者派遣事業)で13.6%も全国平均より低いものとなっている。
正規労働者に比べて派遣労働者の賃金が低額であることに照らすと、このように県内で派遣労働の利用が進んでいるとみられる状況の中で、さらに派遣労働が正規労働に置き換わっていく流れが進めば、県内の労働者全体の賃金をさらに押し下げ、労働条件を切り下げることにもつながる危険がある。

6 小括
今後、改正法案に沿った法改正がなされれば、直接雇用から労働者派遣を中心とした非正規雇用への雇用形態の移行はますます進むであろうことは容易に予測される。
しかし、上述のように、派遣労働者の数が増えつつあり、かつ派遣労働者の賃金が全国平均と比して低く抑えられている長野県内の現状に照らしたとき、正規雇用が労働者派遣に置き換わっていくことは、派遣や非正規の労働者のみならず、すべての労働者にとって労働条件の引き下げとなり、県民生活を脅かすものとして到底看過することができない。
以上の理由により、当会は、改正法案に反対し廃案を求める。
以 上
2014年(平成26年)4月5日
長 野 県 弁 護 士 会 
会 長 田  下  佳  代

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袴田事件の再審開始決定に関する会長声明

袴田事件の再審開始決定に関する会長声明
 
袴田事件の再審開始決定に関する会長声明
2014(平成26)年4月5日
                         長野県弁護士会 会長 田下佳代

1 再審開始決定を高く評価する。
1966(昭和41)年6月30日に静岡県清水市(当時)で発生した強盗殺人等事件,いわゆる「袴田事件」において,再審請求人の袴田巌さんは,その後48年にわたり被疑者・被告人・死刑囚として身柄を拘束された後,2014(平成26年)年3月27日の静岡地裁再審開始等決定を受け,ようやく自由の身となった。袴田事件は,以前より冤罪の疑いが強い事件として,日本弁護士連合会における再審請求支援事件とされていたのであり,当会も,同決定の意義を高く評価する。そして,速やかに再審が開始され,袴田さんの名誉回復が図られることを望む次第である。

2 警察・検察による検証と再発防止策の検討が必要である。
   同決定においては,確定判決の有罪認定において重要な証拠とされた犯行時の着衣につき,捜査機関によるねつ造が疑われると指摘され,また,自白偏重の捜査機関の姿勢についても被疑者の人権を顧みないものとして厳しく批判されており,警察・検察の捜査の在り方の問題性が裁判所によって指摘されたものである。特に,確定判決の一審静岡地裁判決においてさえ,捜査機関の録取した供述調書45通のうち44通の供述調書が違法な取調べによるものであるとして証拠排除されていたのであり,警察・検察による被疑者の人権を無視した違法捜査は目に余るものがあったといわなければならない。
袴田さんは,上記のような信用性に重大な疑問のある証拠によって,半世紀近くにわたり,被疑者・被告人・死刑囚の立場に置かれたものであって,同決定により,冤罪の疑いがさらに強まった。今後,無罪判決が確定した場合,警察・検察は,一人の人間の人生を文字通り奪い去ったことの重みと責任を真摯に受け止め,同様の事件が起こることのないよう検証の上,再発防止策を検討し,国民に公表すべきは当然であり,当会はこれを警察・検察に対し求める。

3 例外なき全面的取調べの可視化の法制化が必要である。 
袴田事件におけるような違法・不当な取調べは決して過去の遺物ではない。捜査機関の自白偏重・違法取調べの抑止,虚偽自白による冤罪を防ぐためには,取調べの全過程の録画・録音の実施が緊急かつ必要不可欠であり,その実施は容易なはずである。取調べの全過程の録画・録音は,その重要性と必要性が本件によって一層明らかになった。
   現在,法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会において,取調べの可視化に関する検討がなされているところであるが,可視化を義務化する範囲を,裁判員裁判対象事件に限るなど極めて狭い範囲にのみ限定し,未だに密室での取調べを維持しようとする姿勢が顕著であり,袴田事件やその他の冤罪事件の教訓を真摯に受け止めた議論がなされているとは到底いえない。
   当会は,捜査機関に対し,直ちに取調べの全過程の録画・録音を求めるとともに,法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会においても,袴田事件の教訓を真摯に受け止め,例外なき全件の取調べの録画・録音を捜査機関に義務づける方向での議論がなされることを強く求める。
以 上
 

信州大学法科大学院の新入生募集停止に関する会長声明

信州大学法科大学院の新入生募集停止に関する会長声明
 
信州大学法科大学院の新入生募集停止に関する会長声明

1.平成26年2月12日、国立大学法人信州大学(以下、信州大学という)は,同大学大学院法曹法務研究科(以下、同法科大学院という)について、平成27年度以降の入学者の募集を停止する旨決定したと発表した。

2.同法科大学院は、平成17年4月開校したが、地域司法の充実を願う多くの長野県民の期待と各関係機関・地方自治体の強い要望を受け、開学にまで至ったものである。
当会も、開校に当たり信州大学と協定を締結し(平成16年6月30日付「信州大学大学院法曹法務研究科に関する協定書」)、多数の当会会員を実務家教員として派遣し教鞭を取らせ、又、法科大学院バックアップ委員会に所属する多数の若手会員を送って学生の自主学習支援を行う等、これまで同法科大学院の法曹養成教育を支援する取り組みに心血を注いできたものである。
このような支援取り組みの成果として、同法科大学院は、平成25年度までに計22名の司法試験合格者を輩出し、うち現在11名の弁護士が長野県内で活躍して、当会の会務活動を支えている。
同法科大学院の特色として、社会人出身者や他学部出身者等法学の未修者が多く在籍しており、多様な分野から法曹を輩出することにも成功している。
また、同法科大学院の卒業生の中には、法曹となった者以外にも、県内各地の地方自治体や企業に就職し、その法的知識を生かして活躍する者も多数おり、長野県における司法サービスの充実・発展に貢献してきたものである。
これらの成果に鑑みれば、司法制度改革における地域司法の充実・発展という理念を実現すべく、同法科大学院が一定の成果を上げてきたのはまぎれもない事実である。

3.今回の信州大学の決定は、同法科大学院が一定の成果を上げている中でなされたものであり、法科大学院の地域適正配置を強く求め、同法科大学院を強く支援してきた当会にとっては誠に残念なものである。
この背景には、同法科大学院における志願者数の減少、司法試験合格率の伸び悩みといった現状があり、平成25年11月には、文部科学省が「法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の見直しの更なる強化について」といった法科大学院の地域適正配置と相反する厳しい指針を示すなどし、信州大学においても、交付金の削減の対象となる事情があるものと思料される。
しかしながら、同法科大学院と状況を同じくする他の地方の国立法科大学院においては、募集停止にまでは至らずに独力での改善を模索している学校もあって、そのような中で同法科大学院が本件決定を先行したことは、長野県における法曹養成教育を放棄したにも等しく、尚早な決断であったと言わざるを得ない。
同法科大学院が、今まで長野県において果たしてきた役割や今後も地域司法発展の責務を負っていること等に鑑みると、当会としては、募集停止という究極の結論を採るに当たっては、より慎重な判断をすべきであったと考える。

4.本件決定により、同法科大学院の在校者及びアソシエイトに対して、相当程度の動揺を生じさせることが予想される。
当会は信州大学に対し、同法科大学院においては、在校者及びアソシエイトが最後の司法試験を受験するまで、教員による授業が終了した後においても、最後の一人まで責任を持って支援(教育上、経済上の支援を含む)を行っていくよう強く求めるものである。
もとより当会としても,今後も法科大学院バックアップ委員会を中心に,長野県の地域司法充実のため、最後の最後までサポートする所存である。

5.なお、当会が同法科大学院を支援してきたのは、法科大学院が地域司法の拠点となって長野県の司法水準を向上させることが、基本的人権が尊重され自由と公正が実現された地域社会の構築につながると考えたからであった。この地域司法充実の理念は決して忘れてはならないものである。同法科大学院は、地域の法曹養成にとどまらず地域の臨床法務研究の拠点でもある。仮に将来において同法科大学院が廃止される場合には、信州大学において地域の臨床法務研究の拠点となるよう一層の努力をすべきものと考える。
以上
 
                             平成26年2月13日
                    長野県弁護士会                 
                      会 長  諏 訪 雅 顕
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「特定秘密の保護に関する法律」の成立に強く抗議する会長声明

「特定秘密の保護に関する法律」の成立に強く抗議する会長声明
 
「特定秘密の保護に関する法律」の成立に強く抗議し,
同法の廃止と憲法改悪阻止のための幅広い行動を呼びかける会長声明
                                   
1 「特定秘密の保護に関する法律案」が,平成25年12月6日,参議院本会議において可決され,成立した。                

2 当会は,同法案に関して,平成25年10月22日付「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する会長声明,同年11月29日付「特定秘密の保護に関する法律案」の衆議院可決に強く抗議する会長声明において,強く反対してきたところである。

3 当会は,これまで,?国民の知る権利が侵害されること,?国民の知る権利 を支える報道・取材の自由を侵害すること,?特定秘密の範囲が広範かつ不明確であり,政府の恣意的な運用が可能となっていること,?特定秘密を判断する実効性のある第三者機関が設けられていないこと、?処罰規定が広範,過剰,不明確であり,刑罰法規の明確性を求める罪刑法定主義にも反すること,?適性評価制度が対象者のプライバシーを過度に侵害したり,思想信条に踏み込んだ調査がなされる危険性のあること,?国会の立法権をも侵害すること等,同法案の問題性を指摘してきたところであるが,結局,そういった問題点が何ら解決されないまま法律として成立したことは,誠に遺憾であり,強く抗議する。
さらに,国会での審議過程についても,野党各党の意見や慎重審議を求める 国民の多数の声を無視し,採決を強行したものであって,このような国会での 論議を軽視して,議席数を背景に強引に本法律を成立させた安倍政権の暴挙に 対し,当会は強く抗議する。

4 本法律は,国民の知る権利を侵害し,国民主権を機能不全に陥れかねない法律であることから,今後当会は、速やかな廃止に向けて,活動していく所存である。
また,本法律は,安倍政権が目指す「積極的平和主義」の名の下に,米国と の間で軍事的協同を図るための布石と考えられ,集団的自衛権の行使容認に向 けた解釈改憲や国防軍の創設等へと波及することが予想されるため,基本的人 権の尊重と恒久平和主義を旨とする日本国憲法の改悪を阻止すべく,市民への 呼びかけ,意見表明等を継続的に行っていく所存である。

5 当会は,日本国憲法が,数多の尊い犠牲と凄惨な戦争への 反省に基づき制定されたものであり,国民の基本的人権を徹底して保障し,再 び戦禍により国民の生命と自由を軽視する時代が到来しないよう,政府をはじ めとする国家権力に重い責任と義務を課したものであって,これにより,今日 まで国民の平和と自由が守られてきたことの意義を改めて強調したい。
そして,長野県民に対し、このような日本国憲法の理念を骨抜きにしようとする法律の制定や憲法改悪には断固として反対し,強く声を挙げるべきことを呼びかけるものである。                        
                  2013年(平成25年)12月16日
                                        長野県弁護士会           
                                        会 長  諏  訪  雅  顕

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集団的自衛権行使の容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する総会決議

集団的自衛権行使の容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する総会決議
 
 集団的自衛権行使の容認及び国家安全保障基本法案の国会提出に反対する総会決議

第1 決議の趣旨
1 集団的自衛権に関するこれまでの政府見解を変更し、その行使を容認することに反対する。
2 集団的自衛権の行使を容認し、秘密保護の法制の整備を規定する「国家安全保障基本法案」の国会提出に反対する。

第2 決議の理由
1 集団的自衛権の行使を容認しようとする最近の動き
自由民主党は、平成24年4月27日、「日本国憲法改正草案」を発表するなど、集団的自衛権を行使できる『国防軍』創設を含む明文改憲をめざす動きを進めてきていた(その前提して、憲法第96条の憲法改正発議要件を緩和しようとする言明もなされている)。
他方、いわゆる明文改憲をせずに、いわゆる解釈改憲により、集団的自衛権行使を容認しようとする動きが、ここに来て強まっている。
例えば、安倍首相は、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「安保法制懇」)を再開させ、ここで、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を内容とする報告書を、年内にもまとめる方針を打ち出している。
また、後述するような政府見解を維持してきた内閣法制局のトップである長官を、これまでの慣例に沿わない人事にて人選を行い、集団的自衛権行使を容認する政府見解変更のための布石を打っている。
さらに、安倍首相は、安保法制懇において、「積極的平和主義こそ日本が背負うべき看板である」といった趣旨の発言までしている。

2 国家安全保障基本法案制定に向けた動き
他方、自由民主党総務会は、昨年7月に、「国家安全保障基本法案」を決定している。同法案は、明文改憲をせずに、法律により、集団的自衛権の行使を容認するものである(同法案第10条第1項第1号、第2条第2項第4号)。加えて、同法案は、国に対して、平和と安全を確保する上で必要な秘密を保護するための法律上・制度上必要な措置を講ずることを求めている(同法案第3条第3項)。
上記動きの中で、内閣は、まず、防衛、外交政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)を創設し、そこで米国などと機密情報を交換、共有するための法整備の必要があるとして、10月25日、国の機密情報を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案を閣議決定し、国会に提出した。同法案は11月26日、衆議院で可決され、参議院に送付された。

3 集団的自衛権に関する政府見解
憲法第9条は、その第1項において戦争の放棄を定め、第2項において、戦力の不保持と交戦権の否認を定めている。
そして、政府は、自衛隊の存在は合憲であるとしながらも、憲法第9条の解釈において、その活動には限界があるとしてきた。これまでの政府見解の内容は以下のとおりである。
「独立国である以上、主権国家としての固有の自衛権を否定するものではない。その行使を裏付ける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上認められる。その具体的限度は相対的な面があるが、いわゆる攻撃的兵器の保有は許されない。
そして、自衛権発動の要件は、次の3つである。
?    我が国に対する急迫不正の侵害があること
?    これを排除するためにほかの適当な手段がないこと
?    必要最小限度の実力の行使にとどまるべきこと
また、自衛権行使としての実力行使の地理的範囲は一概に言えないが、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土等に派遣する海外派兵は、憲法上許されない。
そして、集団的自衛権は、主権国家である以上、国際法上、当然に有しているが、これを行使することは、憲法上許されない。」
この政府見解は、昭和40年代の国会答弁、政府答弁書において明らかにされ、以後約40年にわたり、一貫して維持されてきた。これは、前述した憲法第9条が定める規定内容を前提とすれば、憲法解釈としては限界であるとも言われてきた。
このように、これまでの政府見解において、集団的自衛権の行使は許されないとする見解が維持され、定着してきたところである。

4 集団的自衛権に関する当会及び日本弁護士連合会の見解
これに対し、前記1、2の動きは、政府の一方的な解釈の変更により、もしくは憲法より下位にある法律によって、これまで許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認するものである。
これまで当会及び日本弁護士連合会は、立憲主義の理念や国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義といった憲法の基本原理を極めて重要なものとして再確認し、集団的自衛権の行使を認めてその範囲を拡大しようとする改憲論議につき、立憲主義の理念や憲法の基本原理を後退させるものとの強い危惧を表明してきた。日本国憲法(第9条や前文)で定める恒久平和主義の理念や平和的生存権が、自衛隊の活動等に大きな制約を及ぼし、海外における武力行使や集団的自衛権行使を禁止するなど、憲法規範として有効に機能してきたことは言うまでもないことである。
我が国の安全保障政策は、立憲主義を尊重し、憲法の基本原理に基づいて策定されなければならない。そして、憲法第9条で定める恒久平和主義は、憲法の基本原理の中核をなすものであって、時々の政府や国会の判断で解釈を変更することは到底認められるものではないし、憲法より下位にある法律によって憲法の解釈を根本的に変更することは、憲法を最高法規と定め(第97条)、憲法に違反する法律や政府の行為を無効とし(憲法第98条)、国務大臣や国会議員に憲法尊重擁護義務を課す(憲法第99条)ことで政府や立法府といった国家権力を憲法の制約の下に置こうとした立憲主義の観点からしても、決して許されることではない。
このような立場から、日本弁護士連合会は、平成25年3月14日、本決議と同趣旨の意見書を発表している。

5 秘密保護法制の危険性
さらに、秘密保護法制に関しては、民主主義の根幹をなす表現の自由や国民の知る権利を侵害する危険性が大きく、憲法違反の疑いが強い。当会および日本弁護士連合会は、現在国会に上程されている特定秘密保護法案に対しても、特定秘密の範囲が曖昧で、処罰規定が不明確、過剰である等、国民の知る権利を侵害し国民主権を蔑ろにするものであって憲法違反の疑いが極めて強いことから、強く反対しているものである。集団的自衛権行使の容認に加え、このような秘密保護法制定を求める国家安全保障基本法案自体、憲法違反の疑いが極めて強いと言うべきである。

6 以上により、当会は、上記1及び2の動きが、立憲主義の理念や恒久平和主義といった憲法規範を危機的状況に陥れる象徴的なものであると考え、基本的人権を擁護することを使命としている(弁護士法第1条)弁護士の社会的責務として、当臨時総会において、「決議の趣旨」記載の決議を行うものである。

                 2013(平成25)年11月30日
                 長野県弁護士会臨時総会決議

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「特定秘密の保護に関する法律案」の衆議院可決に強く抗議する会長声明

「特定秘密の保護に関する法律案」の衆議院可決に強く抗議する会長声明
 
  「特定秘密の保護に関する法律案」の衆議院可決に強く抗議する会長声明
                                  2013年(平成25年)11月29日
                       長野県弁護士会
                                                会 長  諏 訪 雅 顕
                                       
1 「特定秘密の保護に関する法案」が、平成25年11月26日、衆議院本会議において、自民党・公明党・みんなの党などの賛成多数で可決され、参議院に送付された。

2 同法案に関しては、当会としては、平成25年10月22日にすでに反対の会長声明を執行しているが、その後同法案に対し、修正はなされてはいるものの、根本的な問題点は全く改善されておらず、民主主義の根幹をなす「知る権利」や「報道の自由・取材の自由」を侵害する内容となっている。
    すなわち、特定秘密の対象を記した別表の記述を「国際社会の平和と安全に関する重要な情報」に変更したものの、未だ不分明であるし、同秘密指定の妥当性を検証する第三者機関の設置についても、実現の目処は全く立っておらず、仮に第三者機関が設置されたとしてもその構成員の人選が政権に都合の良いものであったり、その体制が脆弱なものであれば、実効的に機能しない可能性が高い。
    また、特定秘密として取り扱える期間は最長60年に延長され、これにも極めて抽象的かつ広範な例外規定が設けられている。これにより、長期間ないしは永久に、政府に都合の悪い情報を特定秘密指定扱いにして合法的に隠蔽することが可能となっており、安倍首相が繰り返し述べる「知る権利への配慮」はおよそ内容を欠いた空疎なものであるといわざるを得ない。
    刑事司法の鉄則を覆し兼ねない抽象的かつ広範な刑罰の規定に関しても、何ら改善はされていない。
    このような我が国の民主主義及びこれを支える国民の知る権利・報道の自由、取材の自由等に重大な悪影響を及ぼす法案が、国民、野党各党、メディア各社、憲法・刑事法等研究者、日本弁護士連合会をはじめとする多数の法律家団体、労働組合、文化人・言論人等から強い反対や懸念が表明されている点を無視し、十分な審議もなされぬまま、強行採決により衆議院本会議で可決されたことは、我が国の民主主義を破壊する危険性のある暴挙と言わざるを得ず、誠に遺憾である。

3 当会は、このような審議の進め方に強く抗議すると共に、改めて本法案の成立に対し強く反対するものである。
                                                                以上

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改正生活保護法に反対し速やかな廃案を求める会長声明

改正生活保護法に反対し速やかな廃案を求める会長声明
 
改正生活保護法に反対し速やかな廃案を求める会長声明

1 「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下,単に「改正案」という。)が現在,参議院を通過し、衆議院で審議中である。

2 ところで,前国会でも「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下,「前改正案」という。)が上程されて審議に付されたが,審議中に会期末を迎えて廃案となった。

3 この前改正案に対しては,日本弁護士連合会及びすべての都道府県単位会が廃案を求める声明文を発表した。当会も,平成25年6月10日付「生活保護法改正案に反対し廃案を求める会長声明」において,次のような理由を挙げて前改正案の廃案を求めていたところである。

(1)生活保護の申請にあたり申請書の提出を法律のレベルで義務付けること(前改正案24条1項)
現行制度では,法文上,保護の申請は要式行為とされず,口頭で申請の意思が示されれば申請行為として足りるとする運用が裁判例で蓄積され(大阪高裁平成13年10月19日判決・訟月49巻4号1280頁・上告棄却・確定,さいたま地裁平成25年2月20日判決・確定等),それを前提とした実務運用がなされてきた。これは,福祉事務所が申請書すら渡さず相談扱いにとどめ,申請をさせないという,いわゆる「水際作戦」と批判される事態を許さない論理であった。
ところが,同条1項により申請が要式行為とされれば,申請書用紙すら渡されない事案を救済することができなくなる。

(2)生活保護の申請にあたり,要保護性を証明する資料の添付を義務付けること(前改正案24条2項)
この点につき,現行制度では,申請後の調査として開始または棄却の決定までの間に必要な書類を揃えれば足りた。
しかし,改正案では申請時に必要書類を揃えることを義務付けている。
帰住場所を持たず刑事施設を釈放された者やホームレス,DV被害者,着の身着のままで避難を余儀なくされた被災者等にとっては,同条2項が想定するような家賃の契約書,預金通帳,給与明細やときには身分証明書すら,申請時に準備しておくことが困難な場合が多々ある。これらの書類を申請時に要求することは,これらの者の生活保護申請を事実上閉ざすものであると同時に,書類が揃わないという理由で申請をさせない「水際作戦」の運用を追認するものである。

(3)生活保護の開始決定にあたり,あらかじめ,申請者の扶養義務者への書面による通知を義務付けたこと(前改正案24条8項)
現行制度においても,生活に困窮する者が,扶養義務者(配偶者,直系血族,兄弟姉妹等)への通知により生じる親族間の軋轢を恐れ、スティグマ(恥の烙印)の影に怯えて生活保護申請を断念する事態は少なくない。とりわけDVやストーカー,暴力や犯罪被害から逃れてきた者にとって,しばしば加害者である扶養義務者への照会は生命身体の危険に直結する。そのような通知を原則としたときは,これらの被害者にとって生活保護申請を為すことは自らの居場所を加害者に知らせることになるのであって,申請を断念せざるを得なくなることが多分に予想される。

4 今般提出された改正案は,当初上程された前改正案に比べ,24条1項及び2項にただし書として「特別の事情があるときは、この限りでない。」との例外規定を加え,口頭での申請や添付書類の提出猶予の余地を設けるとともに,24条8項にもただし書として「あらかじめ通知することができない場合として厚生労働省令で定める場合」を加えた。しかし,申請に関する運用の原則と例外を覆すことに変わりはなく,上記の問題点を根本的に克服するものではない。
したがって,改正案が従前の運用を正面から覆し,保護が必要な者をして申請を委縮あるいは断念させ,あるいは,「水際作戦」にお墨付きを与えかねないものであることに変わりはない。さらに言えば,DVや虐待の被害者,犯罪被害者,刑事施設を釈放された者,ホームレス状態にある者等,もっとも保護を必要とする者をして生活保護から遠ざけられることがなお懸念されるのである。このような事態は,生活保護制度を根底から揺るがすものであり,同制度が中核的役割を担う生存権(憲法25条1項)すら瓦解させかねない重大なものである。
なお,改正法の審議過程においては,長野県において長野市をはじめとする12市で扶養義務者に対し「扶養義務者の扶養を優先的に受けることが前提」などと記した文書を送付していたことが報道され,国会でも取り上げられており,組織的対応として,保護の要件ではない扶養をあたかも保護の要件であるかのごとく説明していたことが明らかになっている。改正法はこのような自治体の違法な水際作戦を助長しかねない。
前述のように,日弁連及び当会はもとより全国のすべての弁護士会、さらには多くの市民団体や民間団体が前改正案に対して反対の意を表明し、世論としてこの改正案には消極的なものがあったことが廃案につながったものであるが、再び十分な議論もないままに、国会の審議に付されたことは、憲法25条の生存権保障の趣旨を甚だしく軽んじるものであり、到底見過ごすことは出来ない。

5 以上のとおり,当会は,改めて,改正案については廃案にすることを求めるものである。
以 上
2013年(平成25年)11月15日
長野県弁護士会     
会 長  諏 訪 雅 顕

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京都弁護士会所属会員に対する傷害事件に対する会長声明

京都弁護士会所属会員に対する傷害事件に対する会長声明
 
京都弁護士会所属会員に対する傷害事件に対する会長声明

2013年(平成25年)8月8日、京都弁護士会所属会員である彦惣弘弁護士が、京都市上京区の路上で、男に襲撃され加療約2か月の重症を負うという事件が発生した。男は、殺人未遂罪の被疑事実で現行犯逮捕されたが、同月30日、傷害罪の公訴事実で京都地方裁判所に起訴され、10月7日に第1回公判期日が開かれたところである。
公判の中で既に明らかになっているところによれば、男は、約5年前に同弁護士に離婚調停事件などを委任していた元依頼者であり、同弁護士の弁護士業務に関連した逆恨みから本件犯行に及んでいる。このような犯行は、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」(弁護士法第1条)を使命とする弁護士に対して、暴力により攻撃を加えるものであり、弁護士制度自体そのものの存立を揺るがすものであって、断じて許すことはできない。
2010年(平成22年)6月2日には横浜で前野義弘弁護士が、同年11月4日には秋田で津谷裕貴弁護士が、弁護士業務に関連して殺害されるという痛ましい事件が連続して発生している。本件も、一歩間違えればこのような悲劇になりかねなかったものである。また、昨年度実施された当会の調査においても、当会会員に対する多数の業務妨害行為が判明している。
当会は、このような理不尽で卑劣な暴力による弁護士業務への妨害行為に対して、断固として抗議し、妨害行為に対する取り組みを更に強化していく決意を表明するとともに、今後とも弁護士に対する攻撃や妨害に対してひるむことなく、一致団結して弁護士の使命と役割を果たしていくことを誓うものである。
2013年(平成25年)11月9日
長野県弁護士会会長  諏 訪 雅 顕

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「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する会長声明

「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する会長声明
 
「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する会長声明
2013年(平成25年)10月22日
 
長野県弁護士会                  
会 長   諏 訪 雅 顕

第1 声明の趣旨
特定秘密の保護に関する法律案(以下,「本法案」という)に強く反対する。

第2 声明の理由
1 立法事実の不存在
本法案は,政府によって,その概要が,2013(平成25年)年9月3日に取りまとめられた「特定秘密の保護に関する法律案の概要」として公表されているものであるが,以下のとおり立法事実を欠いており,その必要性に疑問がある。
本法案の検討のきっかけとなったとされている尖閣沖漁船衝突事件の映像流出事案については,秘密保全法制に関する有識者会議作成の「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(2011年(平成23年)8月8日公表。以下,「有識者会議報告書」という。)においても,秘密保全法制の立法事実とされている。
しかし,同事案では,海上保安庁において,流出した映像情報を秘密と指定していなかったどころか,映像情報が不特定多数の海上保安庁職員において入手可能な状態に置かれていたことに原因があるものであり,仮に,行政機関等が保有する実質秘に該当する情報の漏洩を防止する必要があるとすれば,情報の作成取得時に秘密指定し,限られた特定の者しかアクセスすることができないようにアクセス制御すれば良いだけのことであり,現行の国家公務員法等の制度で対応可能であって,同事案の発生から本法案の必要性を導くことは相当でない。
その他,有識者会議報告書で,秘密保全法制の立法事実として挙げられた各事案についても,いずれも立法事実たり得ないことは,日本弁護士連合会の2013年(平成25年)9月12日付「『特定秘密の保護に関する法律案の概要』に対する意見書」が指摘するとおりである。

2 国民の知る権利の侵害
  国民主権原理を基本とする我が国の憲法秩序の下では,政府が保有する情報は,主権者である国民の「共有の知的資源」(公文書管理法第1条)として,国民に公開されることが原則とされなければならない。行政機関の保有する情報の公開に関する法律や公文書等の管理に関する法律は,いずれもこのような国民主権原理を背景とするものと理解されなければならない。
本法案の立法趣旨は,国及び国民の安全を確保するためのものであるとされており,このような立法趣旨の実現のため,極めて限定的な範囲において一時的に秘匿が許容される余地があるに過ぎないものである。
すなわち,秘密保全法制においても,憲法上の基本原理である国民主権原理との整合性が当然に求められ,仮に,一時的に秘密扱いしなければならない情報が存在するとしても,一定期間が経過すれば,最終的には国民に情報が公表されるべきものであり,政府が秘密とした判断の合法性・妥当性について,国民が事後的にチェックできる途が確保されていなければならない。
ところが,本法案では,国民の知る権利の保障に対する配慮が見られず,本法案により,特定秘密として指定された情報が,公文書管理法の適用すら受けない取扱いとなる危険性も指摘されており,公文書管理法第8条による移管又は廃棄の手続が適用されないまま,行政機関の長の判断によって廃棄され,事後的に国民による批判的検討を受ける機会すら保障されないおそれがある。
このような事態は,国民の知る権利を著しく侵害し,上記の情報公開法や公文書管理法の背景にある国民主権原理を蔑ろにするものである。

3 「特定秘密」の範囲が広範で不明確であること
本法案は,規制対象となる秘密(特定秘密)の範囲を,?防衛に関する事項,?外交に関する事項,?外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項,?テロ活動防止に関する事項の4分野として,別表において項目を列挙しているが,なお広範で不明確である。
また,何が特定秘密に該当するかの指定権者は行政機関の長とされており,客観的・公正な立場の第三者がチェックするようなシステムも存在しないことから,行政機関の恣意的な判断・運用によって,真に秘密として保護されるべきでない情報が特定秘密に指定され,合法的に隠蔽される危険があり,その危険性は際限のない更新制度によって増幅する。
上記のように,もともとの対象分野が広範であることと,特定秘密指定の恣意性,違法性を公平な第三者がチェックする仕組みの欠如が連動することにより,行政機関にとって都合の悪い情報が,特定秘密の名の下に主権者である国民の目から永久的に隠蔽されてしまう危険性があることは,極めて重大な問題である。

4 処罰規定の不明確性,過剰性
上記3のとおり,特定秘密の概念自体が広範で不明確であることから,国民にはいかなる情報が特定秘密として規制対象であるかの認識が困難となることが予想される。
また,特定秘密の取得行為を規制する「不正な方法」についても,抽象的で不明確な内容となっている上に,教唆,共謀,煽動,過失による漏洩など規制対象の行為類型も多岐に及んでいる。
このような規制の在り方は,報道機関の正当な取材活動を萎縮させ,その結果,国民の知る権利が害されるおそれは大きく,また刑罰法規の明確性を求める罪刑法定主義の観点からも,憲法上,重大な疑義がある。   

5 「適性評価制度」の問題性
本法案は,特定秘密の外部流出を防ぐために,特定秘密情報を取扱うにふさわしい職員を判別するための制度として「適性評価制度」を導入するものとしている。すなわち,本法案は,特定秘密の取扱いを行う職員に関し,当該職員のみならずその家族,同居人の氏名・生年月日・国籍・住所,あるいは飲酒についての節度,経済的信用状態,精神疾患等という個人のプライバシーに関する広範な情報の収集を認めており,関係者のプライバシーを過度に侵害する危険性が高い。
また,調査事項のうち,「我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の活動」については,その抽象性故に行政機関の恣意的判断によって,国民個人の政治活動,さらには思想・信条にまで踏み込んだ調査が行われる危険性が否定できない。なお,本法案では,対象者の同意を得た上で,調査を実施するものとされているが,当該職員が,その真に自由な意思によって,同意・不同意を選択することを期待できる余地は,極めて乏しいことは明らかである。「同意」の存在は上記に指摘するようなプライバシー侵害を正当化するものではない。

6 立法権の侵害
本法案では,国会議員への特定秘密の提供につき,「各議院若しくは各議院の委員会若しくは参議院の調査会が行う審査若しくは調査で公開されないもの・・・であって,当該特定秘密を使用し,若しくは知る者の範囲を制限すること,当該業務若しくは手続き以外に当該特定秘密が使用されないようにすることその他当該特定秘密を使用し,若しくは知る者がこれを保護するために必要なものとして政令で定める措置を講じ,かつ我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められたとき」に限り,提供できるものとされている。
このように,国会に対する特定秘密の提供範囲を著しく限定した上で,政令において国会での特定秘密の取扱い方に制限を加えることは,国会における議員質問による自由な討議や国政調査権の行使による行政権へのチェック機能を損ねるものであって,憲法上期待されている国会の立法権を侵害するものである。

7 知る権利,報道の自由の侵害が国民主権の機能不全を引き起こすおそれが存在すること
以上指摘した問題点が改善されないまま本法案が法令として成立した場合,日本国憲法の基本原理である国民主権が機能不全に陥る危険性が憂慮される。
上記のような重大な問題を含む本法案が成立した場合,報道機関の取材の自由,報道の自由ないし国民の知る権利が侵害される事態が発生することは容易に予想され,国民がその違法性を訴訟で争うことも,秘密の内容を問題とせざるを得ない以上,違法性を争う側の国民に特定秘密指定のなされた情報の具体的内容が明らかにされない可能性が高く,指定の違法性や相当性を具体的に主張立証することに困難が予想される。
その結果,本法案が,「国及び国民の安全の確保」の名の下に,ときの権力によって,自らに都合の悪い,国民に知らせたくない情報を合法的に隠蔽し,批判的な言論を封じるための有力な手段として用いられる危険性が予想され,このような事態は,「国民による権力の監視」という側面を含む国民主権の機能不全を引き起こすおそれがある。
以上のとおり,当会は,特定秘密の保護に関する法律案に強く反対する。
以 上

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TPPに関する会長声明

TPPに関する会長声明
 
平成25年10月12日
                                   
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加の秘密保持契約が国民主権・国会の最高機関性等に反することを懸念する会長声明
 
                    長野県弁護士会          
                      会 長   諏 訪 雅 顕

政府は,環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉について,本年7月に開催されたマレーシア交渉から参加を開始したところである。
TPP交渉への参加について,政府は,平成25年7月25日付け甘利明TPP対策本部長名義の「日本のTPP交渉への正式参加について」という文書の中で,「アジア太平洋地域における新たなルールを作り上げていくことは,日本の国益となるだけでなく,世界に繁栄をもたらし,この地域の安定にも貢献するものであり,日本が一旦交渉に参加した以上,重要なプレーヤーとして,新たなルール作りをリードしていく」「強い交渉力を持って,守るべきものは守り,攻めるべきものは攻めていくことによって,我が国の国益を最大限に実現するよう全力を挙げて交渉にあたる」などと表明している。
しかし,「我が国の国益を最大限に実現する」にあたって,その「国益」の判断が政府ないし官僚機構の独りよがりの判断であってはならない。また,TPPへの参加が真に「国益」に適っているか否かの判断は,TPPに参加した場合の効果等について広く国民に情報提供した上で,国民的議論を踏まえたものでなくてはならない。それにも関わらず,報道に拠れば,TPP交渉への参加国には秘密保持契約の締結が求められ,政府はマレーシア交渉からTPP交渉に参加するにあたり,この秘密保持契約を締結したとされている。その契約によれば,交渉中はもとより,協定発効から4年間は,交渉経過等の開示が禁じられるとされているとのことであり,交渉中に国民に十分な情報発信を行ってTPPに関する国民的議論を行うことが不可能である。更に,外交に対する民主的コントロールを必要とする,条約締結に関する国会の承認権(憲法73条3号但書)の行使にも支障が生じることは明らかである。
TPPは21分野にわたって行われるものであり,食の安全や環境・労働,国民生活に不可欠な各種サービスなど,国民の生活に大きな影響を及ぼす広汎な分野が交渉の対象となっているが,それらの分野に於いては例外規定に該当しない限り完全な自由化が求められるとされる(ネガティブリスト方式の採用)。また,投資分野に於いては,ISDS条項(外国の投資家や企業が,進出国において相手国政府の法律や行政上の不備等で損害を被った場合,協定に基づいて相手国政府に対する損害賠償を相手国の司法手続ではなく国際仲介機関によって解決することを選択できるという条項)を入れることが見込まれる。そうなると,国民の生命・身体・健康・財産を保護するために行う国家の規制や,日本固有の司法権のあり方や弁護士制度を含む司法制度等についても大きく改廃を迫られる危険がある。そのように,国民生活に多大な影響が出るTPPへの参加の是非や参加した場合の内容が,十分な情報による国民的議論なしに決められ,国会の承認にすら十分な情報が提供されないことは,およそ国民主権(憲法前文,1条)や国民の知る権利(同21条1項参照),国会の最高機関性(同41条)に反し,到底容認されるものではない。
以上の意味で,国民生活に多大な影響が出るTPP交渉への参加が,国民や国会に対して十分な情報を提供なく進められることは憲法の理念に反するものであり,当会は,このような現状を強く憂う。真に政府が,国益のために「強い交渉力を持って,守るべきものは守り,攻めるべきものは攻めていく」決意を持っているのであれば,現状の秘密保持契約のもつ問題性を根拠として,国民や国会への十分な情報の提供が可能となるような新たな約定を交わすべく交渉すること,それが不可能であれば,直ちにTPP交渉から脱退することを求める次第である。
                                  以 上

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公契約条例の制定を求める意見書

公契約条例の制定を求める意見書
 
公契約条例の制定を求める意見書
2013年(平成25年)10月11日
長野県弁護士会     
会 長  諏 訪 雅 顕

第1 意見の趣旨
当会は、長野県及び県内の全市町村に対し、法定の最低賃金を超える賃金額その他労働者に有利な労働条件を遵守することを義務づける内容を有する公契約条例を早期に制定することを求める。

第2 意見の理由
1 国や地方公共団体は、契約という形で公共工事の発注や業務の委託を行なっている。このように、国や地方公共団体が行政目的を遂行するために民間企業等と締結する契約を公契約という。
近時、行政組織のスリム化や経費削減などの行政の効率化・最適化等を目指し、従来は国や地方公共団体が自ら行なっていた公共サービスを民間委託する例が増えてきている。長野県も平成24年3月に策定した「長野県行政・財政改革方針〜最高品質の行政サービスの提供によるふるさと長野県の発展と県民の幸福の実現に向けて〜」において、アウトソーシングの推進に積極的に取り組むことを明らかにし、民間への委託可能な業務の民間委託を順次実施していくこととしており、公契約が結ばれる範囲は拡大していくことが予想される。

2 国や地方公共団体が民間企業等と締結する公契約上の業務は、多数の労働者が直接的、間接的に従事することによって遂行されるが、その労働条件の劣悪さ、特に賃金水準の低さがいわゆる官製ワーキングプアとして大きな社会問題となっている。例えば、平成21年6月、大阪市交通局地下鉄清掃業務を委託された会社の従業員が、生活保護水準以下の賃金しか得られていないために生活保護が認められたケースが報道されている。

3 このような官製ワーキングプアを解消するべく、公契約にかかわる労働者の賃金等を保障するために入札制度を改善することが考えられる。
しかし、競争入札で仕事を落札するには他企業より少しでも低い応札額で入札参加することが必要不可欠である。また、公共事業等の予算縮小に伴い、ここ数年、入札案件が減少する傾向にあり、過度の過当競争やダンピングによる入札もないとはいいがたい。そして、予定価格は前年度の落札額を基準とすることが多いため、落札額が前年度実績を下回ることがあり、それが毎年繰り返されることにより、価格低下を招くことも指摘されている。
他方で、わが国の公共工事は重層的下請構造で施工されることが多く、その中で間に入った企業によって中間マージンが取得され、本来労働者の賃金となるべき部分が削減されて、最終的な下請、孫請等の現場労働者に低賃金が押しつけられている現状も看過できない。また、低入札価格調査制度や最低制限価格制度によっても、従事する労働者の低賃金が改善されるところまでの実効性は期待できないばかりか、地方自治法施行令に導入された総合評価落札方式における価格点以外の点数として労働者の賃金の保障の有無等の項目を入れたとしても、現実の労働者の賃金の上昇が確保されるか否かは明確ではない。
このように、現行入札制度あるいはその制度改善によって解決を図るには限界があると言わざるを得ない。
さらに、この問題の根本的解決の1つに、諸外国と比べて極めて低水準にあるわが国の最低賃金を大幅に引き上げることも考えられる。
しかし、多くの中小零細事業者はこれを前提に労働者を雇用しており、最低賃金の大幅な引き上げのためには、かかる事業者の経営に配慮した施策が必要である。

4 そこで、こうした状況を打開するため、公契約条例の制定を求める動きが全国に広まっている。公契約条例とは、公契約にかかる業務に直接又は間接に従事する労働者について、法令等の最低基準よりも有利な労働条件となる条項を公契約中に定めることを義務づけるものであり、具体的には最低賃金額を当該地方公共団体が定め、この賃金額遵守を公契約締結の条件として事業者に義務づけること等を主な内容とするものである。
公契約条例による最低賃金額の規制は、最低賃金法による賃金の一律規制と異なり契約当事者間の合意によるものであるから、中小零細事業者への上記のような配慮は不要である。むしろ、これまで元請業者からぎりぎりの単価で仕事を請け負い、最低賃金法の最低賃金相当の賃金を労働者に支給してきた下請、孫請等の中小零細事業者にとっては、公契約条例の制定によって、労働者に支給する賃金額を上昇させることが可能になる。
なお、公契約条例の制定により労働者の賃金水準が現行から大幅に上昇した場合、地方公共団体の民間委託費も相当程度増大する可能性は否定できない。しかし、一方で民間委託費の過度な圧縮・低廉化が公共サービスの質の低下をもたらしており、その方がむしろ問題であると指摘されてきたのであるから、公契約条例制定により公共工事の内容や公共サービスの質の向上も期待できるのである。

5 千葉県野田市で平成21年に公契約条例が制定されて以降、既に全国で複数の地方公共団体が公契約条例制定に至っている。公契約条例の制定は、中小零細事業者の経営安定と労働者の賃金水準の向上をもたらし、公共工事や公共サービスの質を担保する効果があり、地方公共団体が住民福祉増進を図る責務(地方自治法1条の2第1項)を果たす上で極めて有効な施策である。
こうした中、当長野県内でも条例制定に向けた新たな取組みが始まりつつある。長野県内で公契約条例を制定した地方公共団体は今のところ存しないが、長野県は平成22年に県庁内に公契約研究会を設置して研究を進めているところである。
そして、研究会設置に甘んじることなく、研究成果の発表や条例制定のための具体的提言などを広く県民に対して行うことにより、公契約に携わる多数の労働者のみならず県民全体に労働条件の改善を波及させるべく実効性ある公契約条例の制定が望まれる。

6 よって、当会は、全ての労働者の人間らしく生き働く権利を擁護するため、意見の趣旨記載の通り、公契約条例の早期制定を求める次第である。

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長野県暴力追放県民センターに対し必要な財政的支援を講ずることを求める会長声明

長野県暴力追放県民センターに対し必要な財政的支援を講ずることを求める会長声明
 
長野県暴力追放県民センターに対し必要な財政的支援を講ずることを求める会長声明     

1 平成24年8月1日に公布され、平成25年1月30日から施行された暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律(以下「改正暴対法」という。」)により、都道府県暴力追放運動推進センターによる事務所使用差止請求制度が新設された(第32条の4第1項)。
これは、国家公安委員会の認定を受けた都道府県暴力追放運動推進センター(以下「暴追センター」という)が、指定暴力団等の事務所付近の住民から委託を受けて、裁判上又は裁判外において、暴追センターの名前で暴力団事務所等の使用差止を請求できるという画期的な制度である。
この制度により、暴力団事務所等の使用差止を求めようとする住民の負担や不安感が大きく軽減することが期待されるところであり、長野県においても、公益財団法人長野県暴力追放県民センターが速やかに国家公安委員会の認定を受け、暴力団事務所等の使用差止業務を行うことができる体制を整えることが急務である。

2 ところで、改正暴対法は、暴追センターが国家公安委員会の認定を受けるための要件として、差止請求関係業務を適正に遂行するための体制及び業務規定の整備や人的体制の整備に加え、差止請求関係業務を適正に遂行するに足りる経理的基礎を有することを掲げている(第32条の5第3項)。
この点、公益財団法人長野県暴力追放県民センターでは、現在、適格団体の認定を受けるべく国家公安委員会への申請に向けて準備を進めているということであるが、その財政状況は、当面の暴力団事務所等の使用差し止め訴訟を遂行するに足りる財政的基盤を有すると認められるものの、これを継続的に実施していくためには、更なる財政的基盤の充実が必要である。

3 平成23年9月1日から施行された長野県暴力団排除条例において、県は「暴力団排除に関する施策を総合的に推進するものとする。」と定めている(第4条第1項)。
長野県には、平成25年1月現在、指定暴力団組織が32組織、その暴力団構成員及び暴力団準構成員が約900名おり、県内各地に暴力団の事務所が確認されている。
県民の安全で安心な生活を確保することは長野県の責務であり、県は、断固たる姿勢で暴力団排除に取り組む社会的責務がある。
そして、暴力団同士の抗争事件等はいつ何時発生するとも限らないのであるから、県民からの暴力団事務所等使用差止の求めに速やかに対応できる態勢にしておかなければならない。

4 よって、当会は、長野県に対し、改正暴対法に基づき公益財団法人長野県暴力追放県民センターが暴力団事務所等使用差止関係業務を行う団体として、国家公安委員会の認定を受けることができた後も継続して同事業が遂行できるよう、更に一層、同センターの財政基盤の充実を図るための支援を行うことを強く要請する。

                                                                  以上
                                                                                             平成25年7月22日
                    長野県弁護士会                
                    会長  諏 訪 雅 顕

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淫行処罰条例の制定に反対する会長声明

淫行処罰条例の制定に反対する会長声明
 
淫行処罰条例の制定に反対する会長声明
 

1 長野県は、「子どもを性被害等から守る専門委員会」を設置し、本年5月31日、淫行処罰条例の制定の是非について検討を始めた。報道によると、同日の初会合では、同条例の制定に積極的な意見が相次いだとされている。
ここに、淫行処罰条例とは、青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為を広く処罰する規定(以下、淫行処罰規定という。)を盛り込んだ条例と定義する。長野県内では、東御市青少年健全育成条例がこれにあたる。すなわち、東御市青少年健全育成条例は、第24条1項で「何人も青少年に対してみだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない」と定め、同条項に違反した場合の罰則として、第30条1項2号で「30万円以下の罰金」を定めており、これらの規定が、淫行処罰規定である。
このような淫行処罰規定は、その文言の曖昧さ、不明確性において、憲法31条の要請である刑罰法規の明確性の観点から重大な問題を孕むものである。そのため、当会は、東御市青少年健全育成条例の全面施行前、平成19年9月4日付会長声明で、同条例の見直しと慎重な運用を強く要請した。

2 ところが、昨年3月から4月にかけて、東御市の学校教諭2名が東御市青少年健全育成条例(淫行処罰規定)違反の疑いで相次いで逮捕されるという事件が発生し、このことを契機に、県内全域で子どもを性犯罪から守る必要性が強く訴えられるようになり、現在、淫行処罰条例の制定を求める動きが活発化している。

3 しかし、淫行処罰規定による規制は、上記声明で明らかにしたとおり、その問題性が極めて大きいものである。淫行処罰規定は、「みだらな」性行為、「わいせつ」な行為という曖昧な文言により、罰則をもって、青少年との性的関係を規制するものであって、捜査機関による解釈次第で、本来規制されるべきでない青少年の真摯な恋愛や性行為が広く処罰の対象とされるおそれが多分に存する。青少年の側からみれば、真摯な恋愛の萎縮につながるだけでなく、交際相手が一方的に摘発、処罰されることで、却って青少年が精神的に傷つき、被害救済からは程遠い結果となることも容易に想像できる。青少年を狙う一部の悪質な大人を処罰するという目的は正当であるとしても、その目的達成のために、淫行処罰規定による規制という手段が相当であるとは到底いえるものではない。

4 また、そもそも、現状において、淫行処罰条例を制定すべき立法事実(淫行処罰規定の必要性を基礎付ける社会的事実)が存在するとは認めがたい。
すなわち、現行法令には、刑法に規定される強制わいせつ罪(同法176条)、準強制わいせつ罪(同178条、同176条)、強姦罪(同177条)及び準強姦罪(同178条、同177条)、児童福祉法に規定される児童淫行罪(同法34条1項6号、同60条1項)、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(いわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法)に規定される児童買春罪(同法4条)及び児童ポルノ製造罪(同7条2項3項)、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(いわゆる出会い系サイト規制法)に規定される児童に係る誘引の禁止(同法6条、同33条)、長野県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(いわゆる迷惑防止条例)に規定される卑わいな行為の禁止(同条例4条、同14条1項2項)等、罰則規定が種々存在し、青少年に対する性犯罪に対し多角的な規制がなされているところである。
また、長野県以外の全ての都道府県では淫行処罰を内容とする条例が制定されているが、平成24年版犯罪白書によれば、青少年保護育成条例による検察庁新規受理人員が、平成11年から平成12年にかけてはいわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法の制定により減少しているものの、平成13年以降は年々増加若しくは横ばい傾向にあり、淫行処罰条例が青少年に対する性犯罪を有効に抑止しているという実証結果は得られていない。

5 東御市で発生した前記2事件は、閲覧可能な刑事確定記録、公表された長野県教育委員会の懲戒処分一覧及び新聞報道から読み取れる事実によれば、中学校教師若しくは高校教師とその教え子という関係を背景に事実上の影響力を及ぼして児童に淫行をさせたと評価しうる事案であって、東御市青少年健全育成条例の淫行処罰規定でなく、児童福祉法上の児童淫行罪による立件も可能であったと解されるところである。
したがって、これらの事案をもって、淫行処罰条例を制定すべき立法事実と捉えることは適切でない。

6 また、昨今のインターネットの普及により、青少年がインターネットを通じて大人から誘惑され、青少年が大人と直接会って性被害を受けるという事案が発生しており、そのような大人の行為を摘発する必要性も指摘されている。
確かに、インターネットには、顔の見えない関係にありながら、メール等の頻繁なやりとりや文章表現により巧妙に相手の心の隙間に入り込むことが出来るという側面があり、このような特質が青少年に対する性犯罪に利用されている可能性は否定できない。しかし、出会いの過程でインターネットを介していたとしても、青少年と大人が直接接触する場面では、やはり現行の罰則規定が適用されうるのであって、例えば、青少年の同意なくわいせつ行為に及べば強制わいせつ罪で摘発、処罰されうるのである。
したがって、インターネット社会の発展が、直ちに淫行処罰規定の必要性、合理性を基礎付けるということも出来ない。

7 以上のとおり、淫行処罰規定は、それ自体憲法規範に違反するおそれのある重大な問題を孕んでいるだけでなく、現状において、同規定を条例で制定すべき十分な立法事実も認められないのであるから、淫行処罰条例を制定する正当性はないと言わざるをえない。

8 長野県は、全国の都道府県で唯一淫行処罰を内容とする条例を制定せず、これまで、家庭、学校、関係団体及び行政が一体となって、地域全体で子どもを支え育てていくという取り組みを行ってきた。性犯罪から子どもを守るために真に必要なのは、さらなる刑罰による規制ではなく、子どもが自己決定権に基づき性的意思決定を主体的に行い、また自己の判断で犯罪や社会の危険性から身を守ることができるよう、その成長発達を支援することである。そのためには、これまでの取り組みをさらに推し進め、子どもに対し、自己の性を大事に考えるための「性教育」や、インターネットの利用方法、危険性等に関する「情報教育」、「リテラシー教育」を施すことが重要である。
当会は、昨年7月9日付の長野県知事宛の要望書において、刑罰による規制によって子どもの性被害等の問題を一挙に解決することはおよそ不可能であり、また、安易に規制を拡大・強化することは、子どもの成長発達の機会を奪うことになりかねないことや、仮に淫行処罰規定の適用により、成人を検挙したとしても、一方の子どもにとっては、なぜその交際が条例によって規制され、交際相手が処罰されなければならないのかを理解しなければ問題の根本的な解決にはならないことなどを訴えた。刑罰を重罰化しても犯罪がなくならないことに表れていることからも分かるとおり、処罰のみによって社会内に生起している問題は解決しない。時間はかかるように見えても、問題の根本に遡って丁寧に社会を変えていくことこそ肝要であり、子どものみならず大人に対しても「性教育」や「情報教育」等を実施して、自己や他人を理解し、いたわれる社会を目指す必要がある。
安易に罰則制定や厳罰化を求めれば、これまで地域全体で行われてきた子どもの育ちを支えていく取り組みを一挙に後退させてしまうことになりかねない。

9 もとより、子どもを性被害から守るという目的は正当であり、これに何ら異を唱えるものではない。問題は、どのような方法で子どもを守るかということである。淫行処罰規定は、既に述べてきたとおり、それ自体問題性が大きく、また条例化の立法事実が希薄であって、子どもを性被害から守る手段として相当でないことは明らかである。長野県は、安易に刑罰に頼ることなく、長野県らしい子ども支援の方策を模索していくべきである。

以上のとおりであるから、当会は、ここに淫行処罰条例の制定に反対する意思を表明し、長野県に対し淫行処罰条例を制定しないよう強く求める次第である。

平成25年7月16日
長野県弁護士会            
会長  諏 訪 雅 顕

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生活保護法改正案に反対し廃案を求める会長声明

生活保護法改正案に反対し廃案を求める会長声明
 
生活保護法改正案に反対し廃案を求める会長声明


1 政府は,本年5月17日,生活保護法の一部を改正する法律案(以下,「改正案」という。)を閣議決定し,国会に提出した。改正案は,与野党の修正協議により一部修正の上,本年6月4日に衆議院を通過し,現在参議院で審議中である。
改正案には,保護申請に対する一層の萎縮的効果を及ぼし,福祉事務所の申請妨害であるいわゆる「水際作戦」を許容助長しかねないとの二点において,看過しがたい重大な問題があるため,廃案を求める。

2 まず,当初の改正案24条1項は,保護開始の申請について所定の事項を記載した「申請書を保護の実施機関に提出してしなければならない。」としていた。
現行制度では,法文上,保護の申請は要式行為とされず,口頭で申請の意思が示されれば申請行為として足りるとする運用が裁判例で蓄積され(大阪高裁平成13年10月19日判決・訟月49巻4号1280頁・上告棄却・確定,さいたま地裁平成25年2月20日判決・確定等),それを前提とした実務運用がなされてきた。これは,福祉事務所が申請書すら渡さず相談扱いにとどめ,申請をさせないという,「水際作戦」と批判される事態を許さない論理であった。
ところが,同条1項により申請が要式行為とされれば,申請書用紙すら渡されない事案を救済することができなくなる。

3 次に,同条2項は,上記申請書に「要保護者の保護の要否,種類,程度及び方法を決定するために必要な書類として厚生労働省令に定める書類を添付しなければならない」と義務付ける。
この点につき,現行制度では,申請後の調査として開始または棄却の決定までの間に必要な書類を揃えれば足りた。
しかし,改正案では申請時に必要書類を揃えることを義務付けている。
帰住場所を持たず刑事施設を釈放された者やホームレス,DV被害者,着の身着のままで避難を余儀なくされた被災者等にとっては,同条2項が想定するような家賃の契約書,預金通帳,給与明細やときには身分証明書すら,申請時に準備しておくことが困難な場合が多々ある。これらの書類を申請時に要求することは,これらの者の生活保護申請を事実上閉ざすものであると同時に,書類が揃わないという理由で申請をさせない「水際作戦」の運用を追認するものである。

4 そして,同条8項は,「保護の開始の決定をしようとするときは,」「あらかじめ,当該扶養義務者に対して書面をもって」「通知しなければならない」と義務付ける。
現行制度においても,生活に困窮する者が,扶養義務者(配偶者,直系血族,兄弟姉妹等)への通知により生じる親族間の軋轢を恐れ、スティグマ(恥の烙印)の影に怯えて生活保護申請を断念する事態は少なくない。とりわけDVやストーカー,暴力や犯罪被害から逃れてきた者にとって,しばしば加害者である扶養義務者への照会は生命身体の危険に直結する。そのような通知を原則としたときは,これらの被害者にとって生活保護申請を為すことは自らの居場所を加害者に知らせることになるのであって,申請を断念せざるを得なくなることが多分に予想される。

5 このように,改正案は,従前の運用を正面から覆し,保護が必要な者をして申請を委縮あるいは断念させ,あるいは,「水際作戦」にお墨付きを与えかねない点で,重大な問題があると考える。

6 これらの点につき,厚生労働省は,本年5月17日の大臣記者会見,同20日の生活保護関係全国係長会議等で,同条1項及び2項について取り扱いには今後も変更はないこと,同条8項について扶養義務者への通知は極めて限定する予定である旨を説明する。また,政府与野党は,日本弁護士連合会や各都道府県単位の弁護士会,支援団体などの関係諸団体からの批判を受け,改正案24条1項及び2項にただし書として「特別な事情があるときは,この限りでない。」との例外規定を加え、口頭での申請や添付書類の提出猶予の余地を設けることを合意し,この修正を加えた上で,過日,衆議院を通過し,参議院で審議されている。
しかし,一部修正したとはいえ,改正案が成立すれば,その解釈運用において,生活保護の申請手続が厳格化され,「水際作戦」を許容助長し,生活困窮者をして制度の利用を断念させるおそれは何ら払拭できない。
改正案は,上記のように従前の運用の原則と例外を逆転させ,とくにDVや虐待,犯罪の被害者,刑事施設を釈放された者,ホームレスといった,最も保護を必要とする者に事実上生活保護の道を閉ざすものである。
改正案の目的は不正受給対策の強化とされるが,真に保護が必要な者の生活保護申請を困難にする必要性は全くない。
厚生労働省の説明のように,従前の運用を変える意図がないのであれば,法改正の必要性自体が乏しいと言わなければならない。

7 現行法制度を前提としても,捕捉率(生活保護の受給要件を満たす者のうち実際に生活保護を利用する者の割合)はせいぜい2〜3割と言われてきた。その一方で,生活に困窮して窓口を訪れた者に対しあくまで相談にとどめ申請書を渡さず申請をさせない,書類が揃わない,或いは親族に扶養してもらうように申し向けて申請を受け付けないなどといった,「水際作戦」と言われる申請妨害が全国で見られた。
その結果が,捕捉率の低さであり,今もなお全国で後を絶たない餓死や孤独死等といえる。
また,長野県における保護率(生活保護利用者の数を全体の人口で除した割合)は4.9‰(1000人あたり4.9人)と,全国平均15.3‰(1000人あたり15.3人)(いずれも平成22年度)を大幅に下回っている。しかし,この数字からは,最低限度の生活を下回る生活を余儀なくされているにもかかわらず,生活保護の申請に至らず,そこから漏れている者が相当数いることが考えられる。今般の改正は,これらの者がさらに生活保護から遠ざけられ,最低限度の生活すら確保することが困難になるものであるもので,県民の生活に直結する重大な問題を含むものである。

8 我々は,日々業務の中で,DVや虐待,犯罪の被害者,刑事施設を釈放された者,ホームレスといった者の手続支援に当たっている。たとえ厚生労働省が例外を定めたところで改正案が運用の原則と例外を逆転させるものである以上,このたびの改正案が,もっとも保護を必要とする者にとっていかなる過酷な事態を招来するかは容易に想像できる。また,福祉事務所の現場によって対応に差を生じかねず,福祉現場の混乱を招き,憲法上保障された生存権の保障を瓦解させることを強く危惧するものである。

以上から,当会は生存権保障(憲法25条)の中核的役割を担う生活保護制度を根底から揺るがしかねない改正案を到底容認することはできず,改正案の廃案を求める次第である。

平成25年6月10日
長 野 県 弁 護 士 会 
会 長   諏 訪 雅 顕

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憲法第96条の憲法改正発議要件緩和に反対する会長声明

憲法第96条の憲法改正発議要件緩和に反対する会長声明
 
                       平成25年5月16日
  憲法第96条の憲法改正発議要件緩和に反対する会長声明  
                                                           長野県弁護士会        
                      会 長   諏 訪 雅 顕

第1 声明の趣旨
近時、憲法第96条に定める憲法改正発議要件につき、各議院の総議員の3分の2以上の賛成によるものとする定めを過半数に緩和する旨の提案が複数の政党などからなされているが、これらの提案は、立憲主義の原則や基本的人権尊重の理念を蔑ろにするものであるから、当会は、このような憲法改正の発議要件を緩和しようとする憲法第96条改正提案に強く反対する。

第2 声明の理由
1 憲法第96条を改正しようとする最近の動き
日本国憲法第96条第1項第1文は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」と定める。
これについて、自由民主党は、平成24年4月27日、「日本国憲法改正草案」を発表し、第96条の改正規定を、衆参各議院の総議員の過半数で発議できるように変更しようとしている。日本維新の会も同様の提案をしている。
   そして、安倍晋三首相は、本年1月30日の国会答弁で、「党派ごとに異なる意見があるため、まず多くの党派が主張している憲法第96条の改正に取り組む」旨を明言した。
上記改正の提案が、まず改正規定を緩和して憲法改正を容易にした上で、その後、憲法第9条を改正して集団的自衛権の容認や国防軍の創設を図り、あるいは国民の権利を制限し過大な義務を負担させようとする意図を有するものであることは明らかである。

2 憲法第96条の意義と改正提案の問題
そもそも憲法は、数多の犠牲と人類の多年に渡る努力によって自由が獲得されてきたことを重視し、まずもって基本的人権の保障規定を定めると共に、かかる国民の自由を最大限確保するために、国家権力の組織とその権限を限定的に定めている。すなわち、憲法は、たとえ民主制の過程を経て選ばれた国家権力であっても、権力は常に濫用し腐敗するおそれがあるので、その濫用を防止するために国家権力に縛りをかけたのであり、その意味において国の最高法規たる基本法である(立憲主義の原則)。
そして、憲法改正規定は、かかる憲法の最高法規性の規定とあいまって、憲法保障の重要な役割を担うものである。そこで、日本国憲法は、憲法改正には、法律制定より厳格な要件として、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による発議と国民投票における過半数の賛成を必要と定めたのである。
もし、その時々の政権により、充実した十分な議論が尽くされないまま憲法の改正がなされるとすると、国の基本法が容易に変更され、個人の尊厳やこの理念から派生する基本的人権の保障が形骸化されるおそれがある。国の基本法である憲法が、その時々の政権の便宜のために安易に改正されることは、国民の基本的人権の保障や国の統治体制の根本に置かれるべき立憲主義の理念をなし崩しにする危険があるので、絶対に避けなければならない。
しかも、現行選挙制度のもとでは、たとえある政党が過半数の議席を獲得したとしても、小選挙区制の弊害により大量の死票が発生するため、その得票率は選挙民の5割に到底及ばない場合があり得る。さらに、投票価値の不平等は未だ改善されていないのであるから、このような状況下で、各議院の総議員の過半数の賛成で憲法改正が発議できるとすれば、それは国民の多数の支持を得ていない改正案の発議であると言っても過言ではない。
発議要件を緩和しようとする改正提案は、議会の過半数を握った政権与党において、立憲主義の目的を失わせるような憲法改正の発議を容認することにつながるものであり、近代国家の本質をなす立憲主義は大きく後退してしまうこととなる。
このように、発議要件の緩和は、国民の基本的人権の保障及び立憲主義の立場からして、極めて重大な問題を孕んでおり、到底許されるものではない。

3 憲法改正の限界
憲法学会においては、憲法改正規定があるからといって、無制限に改正できるものではなく、憲法改正には限界があるとの見解が多数であり、憲法第96条の改正もその限界の一つとして指摘されている。
そもそも、憲法は、国会による発議と国民投票による改正を認めているが、憲法の本質を変更しかねない改正がなされることを阻止するために、憲法尊重擁護義務を負う国会議員により構成された国会の発議には3分の2以上の特別多数決の賛成が必要であるとの歯止めを掛けたのであって、憲法第96条の改正規定を改正することは、憲法の存立基盤を揺るがすものである。

4 諸外国の規定との比較
諸外国の規定を見ると、法律と同じ要件で改正できる憲法(軟性憲法)は極めて少数であり、ほとんどの国が法律の制定より厳しい憲法改正要件を定めている(硬性憲法)。
その内容は国によって異なるが、日本と同様の規定を、韓国・ルーマニア・アルバニア等も有している。日本よりさらに厳しい要件の国もあり(ベラルーシ、フィリピン等)、日本の憲法第96条の改正要件が、特別に厳しいものであるとは言えない。
したがって、比較法的見地からしても、憲法第96条の改正を正当化する理由は見当たらない。

5 以上より、当会としては、現代の社会情勢において、憲法規範が危機的状況にあると考え、基本的人権を擁護することを使命としている(弁護士法第1条)弁護士の社会的責務として、第1に記載した声明を発表するものである。
                               以 上 


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法曹養成制度検討会議の中間的取りまとめに対する意見書

法曹養成制度検討会議の中間的取りまとめに対する意見書
 
当会は、平成25年5月13日、法曹養成制度検討会議の中間的取りまとめに対する意見書を発表しました。
以下をご覧下さい(PDFファイル)。

意見書その1
意見書その2
 

法科大学院の地域適正配置と地方法科大学院に対する支援を求める会長声明

法科大学院の地域適正配置と地方法科大学院に対する支援を求める会長声明
 
法科大学院の地域適正配置と地方法科大学院に対する支援を求める会長声明

  2004(平成16)年,プロセスとしての法曹養成制度の中核的機関となる法科大学院制度が創設され,9年近くが経過した。その間,法科大学院は,1万人以上の法曹資格取得者のみならず,民間企業や行政機関など,社会の様々な分野に修了生を送り出してきた。一方,法科大学院制度は,司法試験合格率の低迷,入学志願者の激減など,様々な課題に直面しており,特に地方の小規模法科大学院は同様の問題で厳しい状況に置かれている。
 
  信州大学大学院法曹法務研究科(以下「信州大学法科大学院」という。)は,司法制度改革の理念のもと,13万人にも上る長野県民からの設置要望署名を受け,長野県議会による国に対する設置要請,当会会長と信州大学学長による共同声明,当会及び隣接士業等による司法制度懇談会の設立,信州大学法科大学院所在地である松本市との調整など,市民・司法界・政財界等多方面からの協力のもと,長野県において唯一の法科大学院として設立されたものである。
  信州大学法科大学院は,設立後,そのカリキュラムであるリーガルクリニックや各種講演会等の実施,研究者と地方法曹実務家との協同による教育や研究により,地域司法の充実・発展に寄与してきた。また,信州大学法科大学院修了生の司法試験合格者数は毎年一定数を数え,そのうち司法修習を修了した者の60パーセント以上が地元弁護士会である当会に登録し地域司法を担う人材として地域司法の充実に貢献している。
 
  ところが文部科学省は,深刻な課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを促進するための公的支援の見直しと称し,入学者選抜における競争倍率と司法試験の合格率を指標とする国立大学運営費交付金及び私立大学等経常費補助金の削減に踏み切った(2012[平成24]年,入学定員の充足状況が新たな指標として追加された。)。
  このような中,さらに,政府の法曹養成制度検討会議は,法科大学院の統廃合や定員削減に向けた具体的な基準案を検討することを決定した。基準の策定に当たっては,地域的なバランスについても考慮することとされているものの,同会議の前身である法曹の養成に関するフォーラムや,総務省による「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価」等,政府の従前の検討過程において,法科大学院の地域適正配置が重視されてきたとは言い難い。このため,統廃合の基準の策定に当たり,地域適正配置の理念に十分な配慮がなされるとは限らない。
 
  しかしながら,法の支配をあまねく実現するためには,各地の様々な分野から法曹を生み出すことが重要であり,そのためには,もともと司法制度改革審議会意見書が制度設計の基本的考え方として指摘していたとおり,法科大学院を全国に適正配置し,地方在住者がその地域で教育を受けて法曹になる機会を実質的に保障することが,司法制度改革の目的に直結する理念として重要である。そして,信州大学法科大学院を含む地方法科大学院の存在が地元志望者の経済的負担を大きく軽減させるだけでなく,司法過疎の解消,地域司法の充実・発展に貢献し,さらには,地方自治・地方分権を支える人材を育成するという観点からも重要な役割を担っていること等を併せて考えれば,法科大学院の統廃合等は,地域適正配置の理念を踏まえつつ実施される必要がある。
  さらに,司法制度改革審議会は,司法の人的基盤を整備する上での重要な一翼を担うという法科大学院の意義や役割に配慮して適正な公的支援が行われる必要があるとしており,地域適正配置を制度的に担保するため,地方法科大学院への一層の公的支援が行われるべきである。
  そこで,当会は,今後も信州大学法科大学院を支援していくことを表明するとともに,関係各位・関係各機関に対し,下記の内容について強く求める次第である。
                                    記
1 法曹養成制度関係閣僚会議及び法曹養成制度検討会議は,法曹養成制度の在り方について検討するに当たり,わが国の隅々まで法の精神・法の支配を及ぼすべく,法科大学院の全国適正配置を重視すること。
2 政府は,わが国の隅々まで法の精神・法の支配を及ぼすべく,法科大学院の全国適正配置を担保し,地方法科大学院がその使命を実現できるよう,国立大学法人運営交付金又は私立大学等経常費補助金を削減せず,地方法科大学院への公的支援を強化すること。
3 日本弁護士連合会は,単なる競争原理に基づく地方法科大学院の廃止統合に反対し,政府その外関係諸機関に対し,法科大学院の全国適正配置のための施策の実施を求め,地方法科大学院への公的支援を求めるとともに,自らも適切な支援を行うこと。

                                    2013(平成25)年2月9日    
                                            長野県弁護士会        
                                                会 長  林   一 樹 

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法科大学院の地域適正配置についての6弁護士会会長共同声明

法科大学院の地域適正配置についての6弁護士会会長共同声明
 
法科大学院の地域適正配置についての6弁護士会会長共同声明

法科大学院制度の創設から9年近くが経過し,新しい法曹養成制度は,様々な課題に直面している。
とりわけ,司法試験合格率の低迷と法科大学院入学志願者の減少が顕著であることから,文部科学省は,深刻な課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを促進するための公的支援の見直しとして,入学者選抜における競争倍率と司法試験の合格率を指標とする国立大学運営費交付金及び私立大学等経常費補助金の削減に踏み切った(2012〔平成24〕年,入学定員の充足状況を新たな指標として追加)。
このような中,更に,政府の法曹養成制度検討会議は,法科大学院の統廃合や定員削減に向けた具体的な基準案を検討することを決定した。基準の策定に当たっては,地域的なバランスについても考慮することとされているものの,同会議の前身である法曹の養成に関するフォーラムや,総務省による「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価」等,政府の従前の検討経過において,法科大学院の地域適正配置が重視されてきたとは言い難い。このため,統廃合の基準の策定に当たり,地域適正配置の理念に十分な配慮がなされるとは限らない。
しかしながら,法の支配をあまねく実現するためには,各地の様々な分野から法曹を生み出すことが重要であり,そのためには,もともと司法改革審議会意見書が制度設計の基本的考え方として指摘していたとおり、法科大学院を全国に適正配置し,地方在住者がその地域で教育を受けて法曹になる機会を実質的に保障することが,司法制度改革の目的に直結する理念として重要である。そして,地方法科大学院の存在が地元志望者の経済的負担を大きく軽減させるだけでなく,司法過疎の解消,地域司法の充実・発展に貢献し,さらには,地方自治・地方分権を支える人材を育成するという観点からも重要な役割を担っていること等を併せて考えれば,法科大学院の統廃合等は,地域適正配置の理念を踏まえつつ実施される必要がある。
よって,国に対し,統廃合の基準の策定等法曹養成制度の在り方を検討するに当たり地域適正配置の理念を最大限に尊重すること,地方法科大学院について国立大学法人運営費交付金又は私立大学等経常費補助金を減額しないこと,及び地方法科大学院に対して適正な公的支援を行うことを強く求める。

2013(平成25)年1月12日
静岡県弁護士会
会 長  渥  美  利  之
長野県弁護士会
会 長  林     一  樹
広島弁護士会
会 長  小  田  清  和
熊本県弁護士会
会 長  坂  本  秀  徳
沖縄弁護士会
会 長  加  藤     裕
香川県弁護士会
会 長  白  井  一  郎

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給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明

給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明
 
給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明 

昨年11月28日,第66期の司法修習が開始され,約2,000名の司法修習生が全国各地の地方裁判所所在地に配属され,当地にも19名の司法修習生が配属された。
司法修習生は,司法を担う法曹としての高い専門性を習得するため1年間司法修習に専念する義務を負い(裁判所法第67条第2項),兼業・兼職が禁止され,収入を得る道はない。また,司法修習生は,全国各地に配属され司法修習を行うため,現在の居住地とは異なる場所に配属され,引越費用や住居費などの出費を余儀なくされることもある。
このような司法修習生の実態を踏まえ,新第64期及び現行第65期までの司法修習生に対しては,司法修習中の生活費等の必要な費用が国費から支給されていた(以下「給費制」という。)。しかし,一昨年11月から司法修習を開始した新第65期の司法修習生から,給費制は廃止され,司法修習費用を貸与する制度に移行した(以下「貸与制」という。)。
日本弁護士連合会は,昨年6月,新第65期司法修習生に対し,司法修習中の生活実態を明らかにすることを目的としてアンケートを実施した。
このアンケートの集計結果によれば,28.2%の司法修習生が司法修習を辞退することを考えたことがあると回答し,その理由として,86.1%が貸与制,74.8%が弁護士の就職難・経済的困窮を挙げた。すなわち,司法試験に合格していながら,経済的理由から法曹への道をあきらめることを検討した者が3割近くもいる実態が明らかになった。
さらに,司法修習生の月平均の支出額は,住居費の負担がない場合が13万8,000円であるのに対し,住居費の負担がある場合は21万5,800円であった。司法修習の開始に伴い修習配属地への引越が必要だった司法修習生は,約6割を占め,この場合には,引越費用等で平均25万7,500円が別途必要になる。
以上のとおり,新第65期司法修習生に対する生活実態アンケートにより,貸与制の不平等さや不合理さが改めて明確になった。司法修習生の多くは大学及び法科大学院の奨学金等の返済義務を負担しており,更に貸与制による借金が加算されることになる。こうした経済的負担の重さや昨今のいわゆる「就職難」が法曹志願者を減少させ,有為で多様な人材が法曹の道を断念する一因となっている。
昨年7月27日に成立した裁判所法の一部を改正する法律によれば,「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から,法曹の養成における司法修習生の収集の位置付けを踏まえつつ,検討が行われるべき」ことが確認された。これを受けて,同年8月21日の閣議決定により法曹養成制度検討会議が設置され,現在検討が進められている。
当弁護士会は,上記日弁連アンケートの実態を踏まえ,有為で多様な人材が経済的事情から法曹の道を断念することがないよう,早急に給費制復活を含む司法修習生に対する適切な経済的支援を求めるとともに,新第65期及び第66期の司法修習生に対しても遡及的に適切な措置が採られることを求めるものである。

 2013年(平成25年)1月12日
                        長野県弁護士会
                    会 長  林   一 樹

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生活保護基準引下げに反対する会長声明

生活保護基準引下げに反対する会長声明
 
生活保護基準引き下げに反対する会長声明

1 日本国憲法25条は,すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」である生存権を保障する。生活保護制度は,生活保護法によって生存権の保障を具体化した最後のセーフティネットであり,生活保護基準は,生存権の保障するところのナショナルミニマム(国民的最低限)の根幹をなすものである。

2 ところで,現在,国政などの場面において,生活保護基準の引き下げに向けた動きが活発化している。
平成24年8月10日に成立した社会保障制度改革推進法では附則2条において生活保護の「給付水準の適正化」を早急に行うことが明記され,これを受けて同月17日に閣議決定された「平成25年度予算の概算要求組替え基準について」では,社会保障分野も聖域視せず,生活保護の見直しをはじめとする合理化・効率化に最大限取り組み,極力圧縮に努めることが明記された。これらを受け,財務省は,同年10月22日,財政制度等審議会に生活保護基準の切り下げに向けた具体的提言を行い,現在同審議会において,平成25年度の予算編成に向けて生活保護の見直しの議論が始まっている。

3 しかし,これらの動きは,以下の点で問題がある。
(1)生活保護基準引き下げが検討される背景に,近時の生活保護利用者数及び社会保障支出の増加があると言われる。しかし,その主な原因は,高齢化社会の急速な進行や雇用の流動化の中,高齢者の無年金・低年金や雇用保険の不備といった社会保障制度の不備を,生活保護が一手に引き受けていることによるであって,これらの抜本的解決を図ることなく生活保護基準の引き下げを議論するのは,安易かつ拙速であると言わざるを得ない。
(2)現行基準の下でも,生活保護利用者は,必要最低限度の生活扶助費で日常生活を送っており,余裕があるといったものでは決してない。生活保護基準の切り下げにより,生活保護利用者の生活はさらに苦しいものになるが,果たしてそれが憲法の保障する「健康で文化的な」最低限度の生活たり得るかという観点での検討は十分なされていない。
この点につき,厚生労働省は,平成24年7月5日に発表した「『生活支援戦略』中間まとめ」において,一般低所得者層の消費水準と生活保護基準との比較検討を行い,平成24年12月末を目処に結論を取りまとめるとした。しかし,生活保護制度の捕捉率(生活保護の利用資格のある者のうち現に利用できている者の割合)は,平成22年4月9日付けで厚生労働省が発表した「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」においても15.7%から32.1%程度と推測され,漏給層(制度の利用資格のある者のうち現に利用できていない層)が大量に存在する現状においては,低所得者世帯の消費支出が生活保護基準以下となるのは必然である。この漏給問題の解決なくして,単純に一般低所得者層の消費実態に合わせて生活保護基準を引き下げることは,生存権の保障を際限なく引き下げることにつながるものである。
(3)また,最低賃金や国民年金が,就労や保険料納付を前提としない生活保護費よりも低いのは不当であるという議論もある。しかし,それは最低賃金や年金の支給額の引き上げによって解決される問題であり,最低生活保障の基準たる生活保護基準の引き下げで解決すべき問題ではない。
むしろ,最低賃金は生活保護基準を目標に定められるものとされているため,生活保護基準の引き下げは,最低賃金の頭打ちにつながり,労働者の貧困化を招く。
長野県でも平成24年10月1日にようやく最低賃金が時間額700円に達したばかりであり,より一層の増額が求められているところである。
(4)さらに,生活保護基準は,地方税の課税最低限度額,介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法の利用料の減額,就学援助の給付など,税制・福祉・教育などの各制度の適用基準に連動するものであり,生活保護基準の引き下げは,これらの制度の利用者である,主に低所得者層を直撃する負担増を強いることになる。
(5)このように,生活保護基準の引き下げに関する議論はその前提から見直されるべきものであり,ひとたび生活保護基準の引き下げがなされれば,低所得者層を中心に,国民の生活全般に重大な影響を及ぼすことが必至なのである。

4 結論
以上から,当会は,国民全般とりわけ生活保護利用者及び低所得者層の「健康で文化的な最低限度の生活」を脅かす生活保護基準の引き下げに強く反対する。

2012年(平成24年)11月10日
長野県弁護士会    
会 長  林  一 樹

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改正貸金業法等の見直しに反対する会長声明

改正貸金業法等の見直しに反対する会長声明
 
改正貸金業法等の見直しに反対する会長声明

深刻な多重債務問題解決という目標に向けた日本弁護士連合会及び各弁護士会等の長年にわたる取り組みの結果,2010年(平成22年)6月18日に出資法の改正による上限金利の引き下げ及び収入の3分の1を超える過剰貸付の禁止(総量規制)等を含む改正貸金業法(以下,「改正法」という。)が完全施行され,その後2年が経過した。
その間,金融庁の発表によれば,同法施行前である2007年(平成19年)には,5社以上の借入れを有する多重債務者は約171万人だったものが,2012年(平成24年)3月現在には,約44万人に減少している。また,最高裁判所が公表している司法統計によれば,2007年(平成19年)には年間約16万件あった自己破産の申立件数も,2011年(平成23年)には年間約10万件に,警察庁による統計によれば,多重債務を原因とする自殺者も,2007年(平成19年)には年間1973人だったものが,2011年(平成23年)には年間998人に,それぞれ減少している。このように,改正法は,多重債務問題の解決に大きな成果を上げているものと評価される。
当会においても,多重債務問題については,定期的なクレサラ無料法律相談を実施し,県内自治体等の相談機関との連携を強化するなど,多重債務者の救済及びその生活再建やヤミ金融被害の救済等に向けて総力を挙げた活動を行ってきた。その結果,当会における多重債務相談の件数は顕著に減少しており,多重債務問題は着実に解決の方向に向かっていると評価できる。
ところが,近時,与野党の一部国会議員の間では,正規の業者から借りられない人がヤミ金融から借入れをせざるを得ず潜在的なヤミ金融被害が広がっている,零細な中小事業者の短期融資の需要がある等として,上限金利規制や総量規制の見直しを目指す動きが見られる。
しかし,ヤミ金融被害の増加についての客観的な裏付けはなく,むしろ,相談件数も警察の検挙数も減っており,被害規模も小型化しているのが実態である。また,日本の社会が二極化し,貧困層が拡大していることに鑑みれば,正規の業者から借りられない人に対しては,高利の貸付けに頼らなくても生活できるセーフティネットの再構築や相談体制の更なる充実こそが重要であり,上限金利の引き上げや総量規制の見直しなどの手段によることは,改正法の趣旨に明らかに反し,認められない。
さらに,中小事業者に対しては,中小企業金融円滑化法の期限が切れる2013年(平成25年)3月以降に備えて,本年6月にいわゆる「中小企業経営力強化支援法」が成立しており,今後,立ち直る事業者,廃業に至る事業者,経営支援が必要な事業者ごとに総合的な経営支援をすることが求められているのであり,短期で高利の貸付によって問題を解決することはできないというべきである。
以上より,当会は,改正貸金業法の一定の成果を確認するとともに,再び多重債務問題やヤミ金融被害を深刻化させることになりかねない金利規制及び総量規制の緩和を含む改正法の見直しに強く反対することをここに表明する。

  2012年(平成24年)8月6日
長野県弁護士会          
会  長    林  一 樹

 

子どもの権利条例制定の要望書

子どもの権利条例制定の要望書
 
平成24年7月9日、当会は長野県知事に宛て、子どもの権利条例制定の要望書を提出致しました。
内容は、「長野県が「子どもの権利条例(仮称)」を制定するにあたっては、子どもを「保護の客体」としてではなく、「権利の主体」であることを基盤として条例を制定するよう要望する。」というものです。

要望の理由等詳しい内容については、こちらをご覧下さい。
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地域司法の充実を求める総会決議

地域司法の充実を求める総会決議
 
平成24年6月24日、当会は、「地域司法の充実を求める総会決議」を採択致しました。
決議の趣旨は、下記の通りです。

地域における司法制度が「真の意味で住民にとってより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのある司法」となるよう、当会及び当会会員自らが、住民に対する一層の法的サービスの充実を図る努力をするとともに、長野県における地域司法の将来計画の立案とその実現を目指して運動を広げていく決意を表明し、その実現に向けて、裁判所・検察庁等の関係機関に対し、以下の諸施策の実現を要求する。

1 長野県内の裁判官を少なくとも11名(うち簡易裁判所判事6名)、検事を少なくとも7名増員すること。とりわけ、長野地方検察庁佐久支部、同諏訪支部、同伊那支部に検事を常駐させること。

2 長野地方裁判所各支部において労働審判手続の取り扱いを可能とすること。とりわけ長野地方裁判所松本支部においては、早急に労働審判手続の取扱いを開始すること。

3 長野地方裁判所各支部において、行政事件の取扱いを可能とすること。

4 長野地方裁判所松本支部、上田支部及び飯田支部において、簡易裁判所の刑事事件を除く判決に対する控訴事件の取扱いを可能とすること。

5 長野家庭裁判所佐久支部に家庭裁判所調査官を常駐させた上、少年事件の取扱いを可能とすること。

6 長野家庭裁判所飯山出張所、大町出張所及び木曽福島出張所の取扱件数の統計を取り、同統計を公表するとともに、家庭裁判所出張所での期日を大幅に増加させることにより、家庭裁判所出張所の機能を充実させること。

7 裁判所運営に住民の声が反映されるよう、各支部に地方裁判所委員会、家庭裁判所委員会を設置すること。


決議の理由は、こちらをご覧下さい。
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「マイナンバー法」の制定に反対する会長声明

「マイナンバー法」の制定に反対する会長声明
 
平成24年6月14日
「マイナンバー法」の制定に反対する会長声明
長野県弁護士会                 
会 長  林   一 樹

1 政府は,いわゆる「社会保障・税共通番号制」に係る法律(正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」,略称「マイナンバー法」)案を閣議決定し,本国会に提出している。
この法案は,全ての国民と外国人住民に対し,社会保障と税の分野で共通に利用する識別番号(マイナンバー)を付けて,これらの分野の個人データを,情報提供ネットワークシステムを通じて確実に名寄せ・統合(データマッチング)することを可能にする制度(社会保障・税共通番号制度)を創設しようとするものである。 

2 このデータマッチングにより,国民の生活ぶりそのものが国家によって容易に把握されることになる。これは,マイナンバー法案の成立を図る政府自体,マイナンバー法案の利点として「国や地方公共団体などが国民一人ひとりの情報をより的確に把握し,受け手に合わせたきめ細かいサービスを利用できるようにする」ことを挙げていること(「マイナンバー 社会保障・税番号制度」のパンフレット3頁参照)からも明らかである。
しかし,一方,憲法13条は,国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定している。憲法13条により,少なくとも,個人の私生活上の自由の一つとして,何人も,行政機関等により個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものであることは最高裁判所も認めているところである(最高裁判所大法廷昭和44年12月24日判決,同第一小法廷平成20年3月6日判決等)。
政府は,マイナンバー法案の利点として,データマッチングを通じて国民の生活ぶりそのものが行政機関等により把握され,また,他の行政機関等に開示され,その開示された情報を元に行政機関等が「受け手に合わせたきめ細かいサービスを」提供することを謳っており,憲法13条に違反する可能性が高い。また,憲法13条の保障は,自己の情報をコントロールしうる権利(情報プライバシー権)にも及ぶものであるから,マイナンバー制度は,個人情報の利活用の推進を優先し,自己情報コントロール権の核心的内容である「情報主体の「事前の同意」による情報コントロール権」の保障をないがしろにしている点でも憲法13条に違反する可能性が高い。

3 上記自由の侵害が「公共の福祉」により正当化される余地はあり得るが,それは政策目的の正当性とその目的の実現のための手段の相当性とを衡量して判断されるべきものである。
しかるに,マイナンバー法案について,政府は「具体的な政策を前提とするものではなく,どんな政策を遂行するにせよ,その基盤・インフラとして必要」などと説明するだけであり,具体的な政策目的が不明であるから,上記衡量が不可能である。
また,生涯不変を原則とする,目に見える形で公開される共通番号が,納税者番号として個人から事業者,そして事業者から税務当局への流れ(民→民→官)の中で広く利用されるのみならず,更に広い業務において同様の利用がなされることに伴い,いわゆる「なりすまし」などのプライバシー侵害が多発する可能性が予想される上,情報漏洩の危険性が極めて高いにもかかわらず,政府は,そのリスクを軽視しており,示された対策も極めて抽象的である。
なお,住基ネットにより行政機関が住民の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為を合憲とした最高裁判所第一小法廷平成20年3月6日判決で示された要素をクリアーすればマイナンバー法案も合憲であるかの如き説明がされているが,同判決は,「住基ネットによって管理,利用等される本人確認情報は,氏名,生年月日,性別及び住所から成る4情報に,住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は,人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり,変更情報も,転入,転出等の異動事由,異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので,これらはいずれも,個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない」ということを前提とした判断をしているのであるから,国民の生活ぶりそのものが国家によって容易に把握されるマイナンバー法案とは,その情報の内容が異なるのであるから,同判決によって示された要素をクリアーすれば,マイナンバー法案が合憲であるかの如き説明は誤導の誹りを免れない。

4 政府の意識調査によれば,共通番号制の内容は国民にほとんど理解されておらず,各省庁間においても共通番号制について十分な共通認識に至っているか疑問のあるところである。
そもそも,国民の生活ぶりそのものが国家によって容易に把握されるという重大な制度を設計する以上,どのような国家観に基づき,どのような政策を実現するためにかかる制度を導入したいのかということについて真摯な説明を政府が行い,国民的議論をすべきであるのに,政府が「具体的な政策を前提とするものではなく,どんな政策を遂行するにせよ,その基盤・インフラとして必要」という説明しかしないのは怠慢であるし,国民的議論を敢えて回避しようとしているとしか言えないものである。
政府は国民的議論を経たことを示すために,各地で「マイナンバーシンポジウム」を実施しているが,本年4月に長野市で実施された同企画には,定員の半数程度の参加者しか集まらず,依然として議論は低調であり,その原因は,政府の前述のような不誠実な態度に起因しているというべきである。
このように国民的議論が低調な中で,目的も曖昧なままに,国民の生活ぶりそのものが国家によって容易に把握されるという情報コントロール権を大幅に侵害するような制度を立法化することについて,当会は強く反対するものである。
                                  以 上
 

秘密保全法の制定に反対する会長声明

秘密保全法の制定に反対する会長声明
 
平成24年5月12日
秘密保全法の制定に反対する会長声明
                      長野県弁護士会                 
会 長  林   一 樹

第1 声明の趣旨
政府は,「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が平成23年8月に発表した,秘密保全法制を早急に整備すべきである旨の「秘密保全のための法制の在り方について」と題する報告書を受けて,「秘密保全法」(仮称)の立法化作業を進めているが,同法の内容は多くの憲法上の原理及び憲法上定められた国民の諸権利を侵害する危険性を有しており,当会は,同法の制定に反対する。

第2 声明の理由
1 立法事実の不存在
今般秘密保全法を制定しようとする動きが生じたきっかけは,平成22年11月に発生した海上保安官によるビデオ映像漏洩事件である。報告書では,秘密保全法制の必要性を基礎付けるため,「主要な情報漏洩事件等の概要」が資料として添付されているが,情報漏洩に関してはいずれも国家公務員法100条(罰則同109条)や自衛隊法59条(罰則同118条)等の現行法で十分に対処できるものであり,新たな法制を設ける必要性が存しない。
2 「特別秘密」概念,規制行為の広汎性
法案化が検討されている秘密保全法においては,保全措置の対象となる「特別秘密」として,?国の安全,?外交,?公共の安全及び秩序の維持が掲げられている。しかし,「特別秘密」の概念は曖昧かつ広汎であり,特に?は,国民の生活全般に関係する広汎な情報が含まれる可能性がある。また,禁止行為には,漏洩行為の独立教唆,扇動行為,共謀行為が含まれ,更に「特定取得行為」と呼ばれる秘密探知行為についても独立教唆,扇動行為,共謀行為を処罰しようとしている。同法では,これらに該当する場合に刑罰を科すことが想定されているが、これは,処罰範囲が不明確かつ広汎であって,罪刑法定主義等の刑事法上の基本原理と矛盾抵触する恐れが極めて高い上,報道機関による取材活動に対する萎縮的効果が大きく,報道の自由・取材の自由を侵害する恐れも極めて高い。
3 規制対象の広汎性
規制対象となる情報取扱者は,取扱業務者と業務知得者とされており,公務員等に限らず,委託を受けた民間事業者,研究者,企業の技術者など広汎にわたる。また,情報取扱者に対する「適格評価制度」の創設は,行政機関や地方公共団体が,情報取扱者にその関係者まで含めて「特別秘密」を扱う適格があるかどうかを思想・信条やセンシティブ情報まで含めて調査し,評価するという制度であり,国民のプライバシー権,思想・信条の自由を侵害する恐れがある。
4 情報公開の必要性、知る権利の侵害
日本国憲法が採用する国民主権原理を実効あらしめるためには,政府情報の公開が大原則であり,例外を認めるには極めて慎重に判断しなければならない。福島原発事故への対応に代表される情報公開における政府の不十分な対応からすれば,更なる情報公開が必要とされるというべきであり,かかる現状において,秘密保全法制を設けることは,国民主権原理,国民の知る権利,報道の自由や取材の自由を侵害されるおそれが極めて高い。
5 以上の理由により,第1記載の声明を発表する次第である。
以 上

 
 
 

国の原子力政策の転換等を求める総会決議

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  2011-11-26 国の原子力政策の転換等を求める総会決議
 

少年鑑別所の増設を求める決議

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  2011-11-26 少年鑑別所の増設を求める決議
 

法曹養成に関する意見書

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  2011-08-06 法曹養成に関する意見書
 

全面的な国選付添人制度の実現を求める決議

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  2011-06-25 全面的な国選付添人制度の実現を求める決議
 

「布川事件」再審無罪判決に関する会長声明

「布川事件」再審無罪判決に関する会長声明
 
「布川事件」再審無罪判決に関する会長声明
 5月24日,水戸地方裁判所土浦支部は,1967(昭和42)年8月に茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件,いわゆる「布川事件」について,櫻井昌司氏,杉山卓男氏に対し再審無罪判決を言い渡した。
 当会は,43年余という長きにわたって無実を訴え続けた両氏とその家族,支援者,弁護団の皆様のたゆみない努力に深い敬意を表する。
 本件は,犯行に関する客観的証拠のないまま,あいまいな目撃供述と捜査官による誘導・強要により得られた自白に基づいて起訴された事件であった。確定審においては,目撃供述に信用性が認められ,両氏の自白にも任意性,信用性が認められるとして無期懲役刑が確定していた。 
 今回の判決では,目撃証言は,供述経過や内容、視認条件などにおいて信用性に欠けるとされた。また,両氏の自白には、重要な事項にわたり変遷が認められ,客観的事実に照らして不自然な点も多く,両氏の自白の間にも多くの相違点があるとして、捜査官の誘導により虚偽の自白をした可能性を否定できないとされた。かつて確定審において有罪の根拠とされたこれらの証拠が適切に評価された結果,本日の無罪判決に至った。この裁判所の判断は極めて正当なものである。
 当会は,検察官が本日の判決を真摯に受け止め,控訴することなく確定させ,両氏を被告人の地位から解放することを強く要請する。
 本件は,別件逮捕・勾留を利用した,密室における長期間・長時間の取調べ,捜査官による誘導・強要,代用監獄の弊害などにより虚偽の自白が生み出された典型的な事件であり,自白偏重の捜査構造の問題点を如実にあらわすものである。特に,確定審において,自白の一部を録音したテープが自白の信用性の根拠とされていた一方で,後に開示された自白テープに編集痕がみられたという捜査,証拠に対する信頼を根底から覆す事態が起こっていた。裁判員裁判の開始により刑事司法に対する市民の関心が大きくなり,捜査のあり方が改めて問われている今,取調べ全面可視化の制度化は必要不可欠となっている。当会では,地元出身の国会議員への陳情などの活動を通じて,取調べ全面可視化の制度化を訴えてきた。今後も引き続き活動を継続していく所存である。
 また,本件では,再審請求審になってはじめて,未提出証拠の中から多数の両氏に有利な証拠が開示された。冤罪を防止し,公正な裁判を実現するためには,全面的な証拠開示が極めて重要である。
 両氏のように冤罪で苦しむ者が二度とあらわれないよう,捜査機関が,今回の判決を受けて,冤罪の原因を真摯に反省・分析し,取調べの全面可視化,代用監獄の廃止,全面証拠開示の制度化など冤罪を生まない刑事司法の実現に取り組むことを強く求めるとともに,当会においても,刑事司法の改革に全力で取り組むことを表明する。
                 2011年(平成23年)6月1日
                 長野県弁護士会
                     会 長  德 竹 初 男
 

長野地家裁飯田支部、飯田簡裁の実質的な裁判官の減員措置についての要請

長野地家裁飯田支部、飯田簡裁の実質的な裁判官の減員措置についての要請
 
                                                        平成23年3月16日
                                                                            
長野地方・家庭裁判所
所長 貝阿彌   誠  殿
                          長野県弁護士会       
                           会長 小 林  正
要 請 書
                                      
長野地方・家庭裁判所飯田支部、飯田簡易裁判所の実質的な裁判官の減員措置につき、次のとおり要請致します。
平成23年度より長野地方・家庭裁判所飯田支部、飯田簡易裁判所の裁判官の配点が、従来の判事2名(または判事1名、判事補1名)から判事1名、簡易裁判所判事1名に変更されるとお聞きしました。しかしながら、判事(判事補)を1名に減員することは、判事(判事補)と簡易裁判所判事との権限・役割の違いを考えるならば、実質的な裁判官定員の減員に他なりません。これにより、飯田下伊那地区の裁判所利用者に不便と不都合を強いることは明らかであり、到底容認できるものではありません。特に、飯田支部は民事・刑事の合議事件を取り扱っており、飯田という地理的条件に照らすならば、今後とも、合議事件を取り扱う支部である必要性のあることは、誰の目から見ても明らかです。
しかるに、判事(判事補)が1名となることにより、合議事件を行うためには、伊那支部及び更に遠方の支部からの裁判官の填補を必要とすることになり、そうなれば、合議事件の開廷日・開廷時間が大幅に制約されることは必然であり、弁護士のみならず市民に不便を強いることは疑う余地はありません。
ところで、現下の司法改革のもとでの法曹人口問題については、特に弁護士の増員のあり方という視点から様々な議論もあるところですが、どのような地方にも法曹有資格者を万遍なく配置し市民の法的需要に応えるという司法改革の基本的精神は、単に弁護士のみを念頭に置いたものではなく、裁判官・検察官についても当然妥当するものです。
今回の長野地方・家庭裁判所飯田支部、飯田簡易裁判所の実質的な裁判官の減員措置は、飯田下伊那地区の裁判所利用者に不利益となるだけでなく、このような司法改革のもっとも根本的な精神をも軽視あるいは無視するものであると考えます。
裁判所におかれては、今回の実質的な裁判官の減員措置を早急に見直し、長野地方・家庭裁判所飯田支部、飯田簡易裁判所配置の裁判官の数と資格を少なくとも本年度並に戻す措置をお取りいただきたく要請致します。


 

(会長声明)司法修習生貸与制施行延期に関する裁判所法一部改正にあたって

(会長声明)司法修習生貸与制施行延期に関する裁判所法一部改正にあたって
 
 2010年(平成22年)11月26日、司法修習生に対する貸与制の施行を1年間延期する法律が国会で可決され、成立した。これにより、同月27日から司法修習が開始された新第64期司法修習生に対して、従前の制度と同様の修習費用の給費が実施されることとなった。
 
 上記改正法の内容は、給費制の完全な復活とはならなかったものの、人権を擁護する人材を育成するために法曹の養成が重要であること、法曹を養成するために、司法修習生の給費制の維持が不可欠であることについて、多くの市民からの賛同が得られつつあることを示すものである。
 
 昨年1年間、当会は、日本弁護士連合会とともに、司法修習生に対する給費制維持の法改正実現を求めて積極的に活動を行ってきた。
 まず、当会から、長野県議会に「司法修習生に対する給費制の存続等を求める意見書」を提出するよう求める請願書が提出されたところ、全会一致で採択され、全国初の意見書として国へ提出された。
 次に、昨年8月31日に、当会は長野市において、「司法修習生に対する給費制維持を求める市民集会」を開催した。市民集会では、日本弁護士連合会会長が講演を行い、多数の市民の参加を得た。
 さらに、当会会員が長野県各所で街頭演説・署名活動を行い、最終的には全県で1万4000筆以上の署名を集めることができた。
 市民集会等を通じてご支援・ご協力いただいた県民各位、給費制活動を積極的に取り上げていただいたマスコミ各位、また、当会の活動の趣旨をご理解いただき、ご多忙の中、活動に協力していただいた与野党の国会議員、政党、地方議会の方々に心より感謝したい。
 
 今回の法改正においては、給費制が継続される1年の間に、法曹養成制度に対する財政支援の在り方について、政府及び最高裁判所の責務として見直しを行うこととされ、また、法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずることが求められている。
 
 当会は、関係各機関に対し、上記事項の検討を早急に求め、真摯な提言を行っていくとともに、引き続き、さらに多くの市民から理解が得られるように活動を強化し、司法修習生の給費制を完全に維持する裁判所法の再改正を求めていきたい。
 
                 2011年(平成23年) 2月24日
                      長野県弁護士会
                          会長  小 林 正
 
 

適正な法曹人口に関する決議

適正な法曹人口に関する決議
  2010-11-20 適正な法曹人口に関する決議
 

秋田弁護士会所属弁護士刺殺事件に関する会長声明

秋田弁護士会所属弁護士刺殺事件に関する会長声明
 

 平成22年11月4日午前4時5分ごろ、秋田弁護士会所属の津谷裕貴弁護士が刃物で刺され死亡するという事件が発生した。
 津谷弁護士は、現在、日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会の委員長を務める等、消費者被害の防止・被害回復のため尽力してきた方であり、当会として津谷弁護士の生前の功績に敬意を表するとともに、津谷弁護士のご冥福を心よりお祈りする。
 この事件については、様々な報道がなされており、現在のところ動機、背景及び犯行状況等については必ずしも明らかではないが、いずれにせよ弁護士としての職務上のトラブルから本件犯行に至った可能性が極めて高い。
 このような卑劣な行為は、基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命とする弁護士及びその業務に対する重大な挑戦であり、いかなる理由や事情があろうとも、断じて許されるものではない。
 本年6月2日には、横浜弁護士会所属弁護士がやはり職務上のトラブルから刺殺されるという事件が発生しているが、当会としては、今後も弁護士の使命を全うするため、弁護士に対する暴力行為をはじめとするいかなる卑劣な行為に対しても毅然と対処し、職務を遂行する決意である。

                                  平成22年11月8日   
                                                           
                                  長野県弁護士会      
                                    会 長  小 林   正

 

横浜弁護士会所属弁護士刺殺事件に関する会長声明

横浜弁護士会所属弁護士刺殺事件に関する会長声明
 
      横浜弁護士会所属弁護士刺殺事件に関する会長声明   
                                   
平成22年6月2日に発生した横浜弁護士会所属の前野義広弁護士が刺殺された事件の被疑者が、同年7月1日深夜に逮捕されたとの報道がなされた。
事件の動機や背景などの詳細は現時点では不明であるが、報道によれば、被疑者は、前野義広弁護士が受任していた離婚訴訟の相手方であり、離婚訴訟に関するトラブルから犯行に至った可能性が極めて高い。
このような卑劣な行為は、基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命とする弁護士及びその業務に対する重大な挑戦であり、いかなる理由や事情があろうとも、断じて許されるものではない。
当会は、前野義広弁護士のご冥福をお祈りするとともに、今後も弁護士の使命を全うするため、弁護士に対する暴力行為をはじめとするいかなる卑劣な行為に対しても毅然と対処し、職務を遂行する決意である。
平成22年7月10日
 
                     長野県弁護士会        
                     会 長   小  林     正
 

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
  2010-06-21 全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明
 

憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明

憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明
 

1 「日本国憲法の改正手続に関する法律」(以下「憲法改正手続法」という)は,2007年5月18日に公布され,本年5月18日の施行期日が目前に迫っている。

2 当会は,2007年4月13日に「日本国憲法の改正手続に関する法律案」が一部修正の上,衆議院本会議において強行採決され参議院に送付されたことをうけて,同月27日付けで会長声明を発表した。

声明は,同法律案には,?最低投票率の定めがないこと,?公務員や教育者の運動が不当に規制されるおそれがあること,?改正案の発議から投票日まで最大 180日しかなく国民の間で議論を尽くす期間として短すぎることなど,多くの問題点があることを指摘し,参議院での慎重審議を求めたものであった。

3 同法律案は一部修正されたものの,これらの問題点について改善がなされないまま,同年5月13日に参議院本会議で可決・成立した。

成立した憲法改正手続法には,当会をはじめ多くの国民の問題提起を反映して,下記のように,附則に検討事項が明記され,また,参議院日本国憲法に関する調査特別委員会においては,実に18項目の附帯決議がなされた。

? 附則第3条は,「この法律が施行されるまでの間に,年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙権を有 する者の年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と定めた。

?  附則第11条は,「公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう,公務員の政治的行為の制 限について定める国家公務員法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と定めている。

? 18項目の附帯決議には,「本法施行までに必要な検討を加えること」として「成年年齢」,「最低投票率」,「テレビ・ラジオの有料広告規制」の3点をあげている。

しかしながら,上記の諸検討事項について,ほとんど検討がなされておらず,未だ「必要な措置」は何ら講じられていない。

4 憲法改正手続法に基づいて,2007年8月,衆参両院に憲法審査会が設置されたが,参議院においては憲法審査会の規程も議決されておらず,また,衆参両院において,いまなお憲法審査会委員の選任も全くなされていない。

5 憲法改正手続法の公布から施行まで3年の期間がおかれたのは,国民主権原理によって,国の基本法たる憲法の改正には,国民の意思が正確に反映されるよ う,極めて慎重な配慮が要請されることから,少なくとも附則や附帯決議で検討すべきとされた事項については,慎重に検討した上で,周到に必要な措置を講じ るためであった。

従って,この3年の間に附則及び附帯決議が求めている検討がほとんどなされておらず,必要な法制上の措置が講じられていないことは,憲法改正手続法の公布から施行まで3年の期間をおいた趣旨に反し,同法を施行するのに全く熟していないと言わざるを得ない。

6 また,そもそも上記必要な検討がなされなかったことは,憲法改正は何ら喫緊の課題ではないことを意味するものであり,重要な問題点を孕む憲法改正手続法の附則第1条本文の施行期日は上記検討が尽くされた後でなくてはならない。

このような状況下で単に施行期日到来により,憲法改正の発議ができることは民主主義に悖るものである。

7 よって,附則及び附帯決議の十分な検討期間をおくため,憲法改正手続法の施行は延期されなければならない。

2010年(平成22年)5月3日
日本国憲法の施行から63年目の日に
長野県弁護士会
会長 小 林   正
 

民法(家族法)の早期改正を求める会長声明

民法(家族法)の早期改正を求める会長声明
 
 選択的夫婦別姓制度や非嫡出子の相続差別撤廃を内容とする民法(家族法)改正案は、平成8年に法制審議会が答申して以来、14年が経過しているにもかかわらず、未だ実現していない。しかし、民法(家族法)改正はいまや喫緊の課題であり、国会での早期成立を強く求める。
  現在の夫婦同姓制度のもと、96%以上の夫婦が夫の姓を選択しており、女性の結婚による改姓が当然とされてきた。しかし,氏は,名前と結合して個人のアイデンティティと不可分に結びついており,個人の尊厳を基本原理とする日本国憲法のもとでは,個人の選択的に委ねられるべきものである。世界的に見ても,個人の選択に任せる法制が増加している。また,男女を問わず,ライフスタイルが多様化した現代社会においては,女性が改姓を迫られることによって,職業上の信用が中断したり,運転免許証やパスポートの変更など社会生活上様々な変更を余儀なくされるといった不利益を女性のみが負担するのは,両性の本質的平等を規定する日本国憲法に反すると言うべきである。また、最高裁判所も昭和63年2月16日の判決において「氏名は人が個人として尊重される基礎」であり、「その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成する」と判示しており、婚姻後も自己の氏を継続して使用する権利は、法制度上十分尊重されるべきである。
  選択的夫婦別姓制度に対する反対意見の中には、「夫婦親子の一体感を失わせ、家族の崩壊につながる」とする主張があるが、夫婦別姓は,家族の崩壊を目的とするものではなく,あくまで,多様なライフスタイルを個人が選択できる制度を認めようとするものに過ぎない。また,国際的には,夫婦同姓を強制しているのは,日本を除いてほとんどないといってよく,夫婦別姓が世界的潮流となっており,夫婦別姓を採用する諸外国において,夫婦別姓が理由で,家族の崩壊現象が生じているといった事実関係も報告されていないのであって,反対意見の懸念は,具体的な実証に基づく見解とは言い難い。以上のとおり,選択的夫婦別姓制度は,憲法13条、24条の趣旨に鑑みて、早急に実現されるべき課題である。
また、非嫡出子の相続分差別は、婚姻の尊重という立法目的と婚外子の相続分差別という規制手段に実質的関連があるかは疑問であり,また,相続人である子供の立場からすれば,自らの意思や努力によって変えることのできない事実をもって差別をするものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することが明らかである。また,非嫡出子の相続分差別を合憲とした平成7年7月5日の最高裁判所大法廷判決でも,15名の裁判官の内,5名の裁判官が違憲としているばかりでなく,加えて4名の裁判官が立法による改正を示唆する補足意見を述べていることは明らかであり,違憲とする5人の裁判官を加えると9人の裁判官が何らかの形で,現行制度の不合理さを指摘しているものいえる。いずれにしても,憲法上違憲の疑いがあり,早急に撤廃されなければならない。
さらに、再婚禁止期間についても現行制度がそのまま維持される理由はない。なぜなら,科学技術の発達により親子関係の確定が容易になっている。さらには,再婚を法律上禁止しても,事実上の再婚を阻止することができない以上,父性推定の重複を避けることはできない。父性が重複すれば,現行制度では,子は常に前夫の戸籍に記載されてしまい,前夫の協力により嫡出否認をしてもらい,後夫が認知をするという手続を践まざるを得ない。このようなことが子供の福祉の観点から是認されるとは言えない。従って,科学的見地からも,実際上の不都合,子供の福祉の観点からも,すでに現行制度の合理的根拠は失われており、見直しが必要である。また、婚姻年齢についても、憲法14条の趣旨から、男女間で統一されるべきである。
  さらには,日本における民法(家族法)改正を早期に実現することは,近時の国際情勢にかんがみても必要性が認められると言える。
  以上より、当会は、選択的夫婦別姓制度の導入、非嫡出子の相続差別撤廃、再婚禁止期間の見直し、婚姻年齢の統一等を内容とする民法(家族法)の改正法案が速やかに可決成立されることを求めるものである。
                   平成22年4月30日
                                            長野県弁護士会
                                                  会長  小  林    正
<<長野県弁護士会>> 〒380-0872 長野県長野市妻科432番地 TEL:026-232-2104