本文へ移動

決議・意見書

決議・意見書

自衛隊のイラク派遣中止を求める再度の声明
2003-12-15
1.  内閣は、本年12月9日、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下、イラク特措法という)に基づく、?人 道復興支援活動、?安全確保支援活動にわたる基本計画を決定した。いずれの対応措置についても、自衛隊の部隊をイラクに派遣することを骨子としている。戦 後初めて、武装した自衛隊部隊を、戦争状態の外国に派遣するものである。
  
2.  ところで、自衛隊の海外派遣を許容するにあたっては、憲法違反の疑いが極めて大きいことが、国会でも議論され、国民の多くからも指摘されてきた。当長野県 弁護士会も同様である。それは、憲法9条で禁止した武力行使に及びかねないからであった。その疑義と「調和」させるために登場したものの一つが、「現に戦 闘が行われておらず、かつ、そこで実施される(人道復興支援、安全確保支援の)活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないことが認められる地 域」(いわゆる非戦闘地域)で実施するとの、法による限定であった。これは、憲法違反になりえないことを担保するための規程の一つというのであるから、特 に、厳格な解釈とその調査がなされなければならない。
  
3.  しかし、「戦闘行為」について、法文では、「国際的な武力紛争の一貫として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為」と定めていただけである。また、国 会では、「国又は国に準ずる者による組織的、計画的な行為」と答弁された。いずれも、抽象的且つ多義的なものとなっており、厳格であるべき認定の指標とは なり難い。
そして、不幸にも日本人外交官2名がイラク国内で殺害されている現在、基本計画で特定されたイラク南東部について、「非戦闘地域である」との明白性が、調査され、国会・国民に説明され、その納得を得ている、とは言い得ない。
  
4.  「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して 我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」(テロ特措法)が、「自衛隊による武器・弾薬の陸上輸送は許さな い」と明記したのと異なり、イラク特措法は、これを許していることを想起しなければならない。
加えて、治安状況並びに戦闘状況は、流動することが必至であること、さらには、いったん、正当防衛の判断であるにせよ自衛隊による武器の使用の状態が生 じたときは、現場(地)判断が優先されることが必至であることも、また、想起しなければならない。
かくして、憲法違反となりえない担保として最も重要な「非戦闘地域での活動」との要件がないがしろにされたままに自衛隊をイラクに派遣することとなれ ば、イラク国民に対し武力を行使する事態、自衛隊員が攻撃を受けて死傷する事態の発生が強く懸念されるのである。その上、現在のイラクの情勢に鑑みれば、 これを抑止することも事実上不可能に近い。
日本国憲法9条のいう、「国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇、武力の行使の放棄」に反する疑いは、極めて大きい。
 
そこで、再度、自衛隊のイラクへの派遣は中止するよう求める。
 
以 上
 
平成15年12月15日
長野県弁護士会 会長 和田 清二
TOPへ戻る